【感想】the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

スコット・ギャロウェイ, 渡会圭子 / 東洋経済新報社
(188件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
36
65
53
8
3
  • 四騎士はどのように世界を創り変えたか?

    「勝者総取り」は違う。
    1998年に出て話題になった『ウィナー・テイク・オール』でも指摘している通り、デジタル技術によって生まれた不可避の経済で、四騎士はその勝者というだけだ。

    彼らに共通しているのは、あまりにも規模に不釣り合いな乏しい雇用だろう。
    我々はいつしか中産階級を維持するのを諦め、雇用が破壊されるのをただ呆然と眺めている。
    省力化の進行と利便性の追求が身近な隣人の、そして将来の子供たちの雇用を奪っているという構造は、環境破壊の構図とも似ていて、我々の問題である。

    しかしそんな未来は『ウィナー・テイク・オール』でも予見されていなかったか?
    他に彼らに共通しているのは、金を生むのは革新者であって、法を守る者ではないという態度か。
    大きくなる前は、法律違反することが賢明とばかりに抜け穴を見つけ、盗みを繰り返すが、大きくなると立ちどころに宗旨変えして守りを固める。

    非凡な人間にとっては最高の、そして平凡な人間にとっては最悪の時代であるとともに、百万長者になるのは難しいが、億万長者になるのが今ほど簡単な時代はないと著者は語る。
    彼が大学で教えているのは、その革新者の卵たちなのだろう。

    超優秀でもない平凡な人間にとっては最悪とのことだったが、中間層であること、ニュートラルであることも同様に最悪だ。
    人件費は悪とばかりにAI導入や省力化によって進んだ雇用破壊は、ますます中産階級を空洞化させていく。
    会社の成功はクリック数と金額で測られるとばかり、アルゴリズムはますます対立と怒りを煽る方向に片寄り、社会は分断され、穏健でバランスのとれた中立的な立場を危うくしていく。

    アップルの訴求力は、ぜいたく志向や顕示欲に向かっていて、贅沢品ブランドに転身することで永遠性を手に入れようとしているため、他の3社と比べて生き残る確率が高いと書かれているが、年明けの株式市場を混乱させた業績の大幅下方修正や、高すぎるiPhoneの価格を値下げしているといった報道を見ていると、まだまだ転身できていないし、そもそもできるのかどうかも怪しく思えた。

    情報はタダになりたがっていると同時に、高価にもなりたがっている。
    フェイスブックやグーグルはそれら2つの間のバランスを巧みに管理し、新たな門番となることで多額の収益を上げている。
    「情報の門番」という立ち位置とともに、その立場にふさわしい責任を求められたときの対処の仕方も両者は共通している。
    一方は、あるのが当たり前の空気のような存在を目指し、なるべく目立たないように心がけているし、もう一方は、メディアと見なされることを嫌い、単なるプラットフォームに過ぎないと強弁し、社会的責任を回避しようとする。

    本書の著者が、単なる学者という外野の立場から分析しているのではなく、GAFAに立ち向かい負けた敗者の立場から調べ上げた内実を語っているので、恨み節にもなるし、生々しく面白いと思った。
    ただ副題の「四騎士が創り変えた世界」をあらためて整理してみると、彼ら独自のものがあまり多くないことがわかる。
    そもそも共通点があるようでなくて、現在の「最強企業」というレッテル以上のものが浮かばない。
    続きを読む

    投稿日:2019.01.28

ブクログレビュー

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  • Mkengar

    Mkengar

    デジタル時代の覇者(少なくとも2018年時点)であるGoogle、アマゾン、フェイスブック、アップルの4社は、その頭文字からGAFAと呼ばれることがありますが、GAFAがなぜ成功したのか、さらにGAFAは社会にどんな良いことと悪いことを及ぼしているのか、についてとてもフランクに語っている本です。ビジネス書というよりはエッセイだと思った方が良いでしょう。著者自身が本の中でも述べているように、基本的にこの人の語り口は挑発的です。巨大企業の悪口をそこかしこに散りばめており、4社にとってはあまり嬉しくない語り手でしょう。しかしこの著者が伝統的な企業の味方かというとそんなことは全くなく、むしろ伝統的企業(例:ニューヨークタイムズ)に対する口調の方がよっぽど厳しく、これらの企業がデジタルトランスフォーメーションをすることで、4騎士の牙城を崩してくれ、というようなメッセージも感じました。正直中身はあまりない気もするのですが、GAFAに対してこれだけ真っ向から本音で語る本というのも珍しいですから、一読の価値はあるかと思いました。続きを読む

    投稿日:2023.05.02

  • hasse

    hasse

    四騎士は神、愛情、セックス、消費の具現化であり、何十億もの人々の生活の価値を高めている(P725)

    この一文が四騎士(GAFA)の本質を最も端的に表しているかもしれない。アップルは製品だけでなく感情を売る。アップルが心がけているのは、脳の理性的判断を凌駕する、心と性器への訴求力を持つマーケティングである。作者は専ら男性器を想定して書いているように見えるが、男性にとってはアップルの製品は高級車や腕時計に類する、自分のセクシーさとインテリジェンスをアピールするための手段になる。

    また、GAFAは何十億もの人々の生活の価値を高めている一方、富を独占し、限られた自社の社員(エリート)にのみ再分配する。ネクスト四騎士は誰か?という項で候補として登場するUber Eatsは、8000人の社員(領主)と2060万人のドライバー(農奴)によって事業が成り立っている。富の過剰な偏在は社会システムの変動に直結する。資本主義社会の行き過ぎは中世の封建的社会への揺り戻しを意味するのかもしれない。

    (メモ)
    アマゾン
    ・アマゾンは人間の古来からの狩猟や採集という行為を最大限手短にすむようにした
    ・アマゾンは最初から殺されている獲物=本にはじめに目をつけ、CDやDVDに拡大していった。小売業界はアマゾンが唯一の勝者となり、残りすべての小売業者が敗北者となるゼロサムゲームと化した
    ・アレクサの音声認識のゼロクリックオーダーでさらに狩猟や採集は楽になる
    ・企業と株主の関係性の打破(利益の還元→ビジョンと成長)
    ・eコマースからリアル店舗も持つマルチチャネルへ
    ・161 アマゾンはゼロクリックオーダーを完成させるあらゆる条件をてにいれた
    アップル
    ・希少性を追求して利益を得るモデル シェア率は台数14%に対し利益79%
    ・220 神とセックスに近づくためのぜいたく品
    ・周りの人に自分が能力、経歴が優れていることをアピールするためにはアップルの新製品を持つだけでいい。
    ・248 富裕層は地上に存在する他のどんな集団より均質である。(⇔中流階級)
    ・アップルの現在の事業はテクノロジーではない。人々に製品、サービス、感情を販売すること。「製品価格は高く、生産コストは安く」を最も実現した
    ○フェイスブック
    ・フェイスブックはアマゾンよりファネル(漏斗)の上部に位置する。フェイスブックは何を、グーグルは方法を、アマゾンはいつそれが手にはいるかを提示する
    ・穏健派のマーケティングは判りづらい。穏健派のマーケティングは金がかかるわりに効果が薄く、過激なコンテンツが増えてしまう
    ・フェイクニュースについて。フェイスブックは、新聞とは異なり真偽をジャッジする義務を負うことから逃げてきた。また、フェイクニュースを削除すれば多額の収益を失うことになる。メディアではなくプラットフォームという自覚。社会的責任を回避するこの姿勢によって、権威主義者やヘイト活動家がフェイクニュースを巧みに発信できる
    ○グーグル
    ・シンプルで上品なホームヘージ、検索網羅性、オークション形式の「公正な」広告…現代の神
    ・グーグルのお金を生む製品は1つしかないかもしれないが、世界を変える力を持つ

    ○脳・心・性器
    脳の理性的判断を凌駕する、心と性器への訴求力を持つマーケティング
    アップル製品を持つことでライバルより頭がよくリッチで完璧な人間だと見せつけることができる

    第8しょう
    歴史は繰り返さないが韻を踏む(トウェイン)

    四騎士に共通する8つの要素
    四騎士はみな可愛げがある
    551 流通、販売の垂直統合
    553 マーケティングの歴史
    ・デモグラフィックターゲティング
    ・ソーシャルターゲティング
    ・行動ターゲティング 

    かつては中産階級と上流階級になりうる仕事を生み出す企業が称賛されたが、今の時代のヒーローになっているのは一握りの領主と幾多の奴隷を生み出す企業だ(アマゾン、Uberなど)

    ビッグデータとAIのちからで、統計と標本の時代は終わりを告げようとしている

    586 NEXTGAFAは誰なのか?
     アリババ 業績好調だがビジョンへの投資がなく投資家向けのストーリーテリングがない
     テスラ
     ウーバー 8000人の社員(領主)と2060万人のドライバー(農奴) 垂直統合×

    653 成功者、リーダーに求められる心理的成熟→20代では女性のほうが優れていることが科学的に実証済
    683 企業には罰せられる体も、責められるべき魂もない(エドワード・サーロー大法官)
     抽象的な組織への忠誠より、人に忠実たれ。人は企業と違ってその忠誠心を評価してくれる
    725 四騎士は神、愛情、セックス、消費の具現化であり、何十億もの人々の生活の価値を高めている
    728 四騎士はミネアポリスの人口と同じ41万8千人の社員を雇用している 公開株式は合計2兆3千億円
    続きを読む

    投稿日:2023.02.17

  • 本の虫

    本の虫

    GAFAに関する本は最近では多々出ておりますが、早い段階でテクノロジ企業を分析し、成長を遂げた理由を述べている本書は客観的に見ることができました。
    同時に、今後これらの企業が抱える課題感も見出しており読み応えがありました。続きを読む

    投稿日:2023.02.09

  • なおきち

    なおきち

    正直理解するのはめちゃくちゃ大変だったし、現時点で理解できてないことの方が多い。
    また読んでみたらわかるかも?
    第10章はすごくおもしろかった。今の自分で活用できることなどが書かれていたため、参考にしたい。続きを読む

    投稿日:2023.01.29

  • K.A.Z1001

    K.A.Z1001

    ※以前に読んだ本の登録
    ざっくりメモ

    世界を支配する4大企業がどのようにして市場を制覇してきたのか、ビジネスのヒントになる。
    また、そういった世界の中で今後、自分自身がどんなことを考え、行動して、生きていくべきかを考えさせてくれる本だった。続きを読む

    投稿日:2022.12.18

  • ttomohiro

    ttomohiro

    翻訳が悪いとは言わないまでも直訳に見える部分が多く、平易な文章と思われる箇所が難解に見えて理解が難しかった。
    GAFAの優れているところを挙げているが、それが人類にとって悪いことなのか良いことなのかわからないが理解することは必要なのだと感じた。続きを読む

    投稿日:2022.11.24

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