【感想】人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊

井上智洋 / 文春新書
(96件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
18
37
22
5
2
  • 人類の未来は資本主義に飲み込まれてしまうのだろうか

    AIの進化が引き起こす社会へのインパクト、とりわけ"労働が不要"になることについて経済学的視点から論じている。

    しかし、それはユートピアではない。

    シンギュラリティを迎える2045年には労働のシェアは圧倒的にAIが占めるようになり、人が労働で賃金を得ることが難しくなる。資本家はAIを活用することで利潤を増やし、ますます資産を膨張させ、ピケティが『21世紀の資本論』で明らかにしたように貧富の差はさらに拡大する。

    著者は処方箋としてベーシックインカムの導入を熱心に論じる。ただ富裕層から高額の税金を徴収する点については具体性に欠ける。現実には資産はより税率の低い国・地域(タックスヘイヴン)に移されていくからだ。これは政治の問題か。
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    投稿日:2017.01.06

  • 未来に希望が持てる本

    ●本書の良い点
    ・数字と統計を使って論理的な主張がされている
    ・AIやシンギュラリティについて現状を理解しやすい

    ●本書の悪い点
    ・ベーシックインカムについての主張については「そこまでうまくいくのか」という読者に疑問符を与えるスキがあるように思う。

    ●総評
    全ての社会人に一度読んでほしい、とオススメできる
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    投稿日:2017.12.31

ブクログレビュー

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  • まこっちゃ 改め 愚直亭小抹茶

    まこっちゃ 改め 愚直亭小抹茶

    コロナ禍前の2016年に、気鋭の経済学者によって発表された本。当然ながらChat GPTのような生成AIが社会に出回る兆しも見られない頃の著書。
    だからこそ、「便乗して書かれたのではない」古典的な説得力がある。
    普通、最先端技術と経済に関する書は、少しでも古くなると記述内容の価値も激減してしまうことが多いように思われるが(もちろん記述の質や正確性によっても左右されるが)、
    本書は、経済学者である著者の理念が前面に出ているとは言え、結果的にその予測通りに社会基盤の変化が加速している今、古典的に参照する書として大いに参考になると感じた。

    新型コロナウイルスやAIについては、流言や都市伝説の類いも飛び交っていて、
    それらの言説全体が怪しく見えてしまうような奇妙な状況になっている。
    その話題に直接的には触れていないとしても、この2〜3年の間に刊行された書物に対しては(誠実かつ真摯に著述されているかたに対しては大変失礼で申し訳ない話だけれども)少なからず流言性や都市伝説性を疑いながら読み進めざるを得ない印象が拭えない。

    著者の経済学者としての業績などはまったく知らずに私見を述べてしまっているが、
    少なくとも記述内容は2024年時点での社会状況をそれなりに正確に捉えたものであり、
    かつ上記のような「疑わしさ」に煩わされることなく読み進めることができる点は非常に評価に値すると思う。

    星5にしても良かったけれども、綿密な分析を提示しないまま一部の仮説のみを頼りに大雑把な予測のみを提示した書である点を(わかりやすさを重視して意図的にそのように著述したのかもしれないが)一応、割り引いて星4つとした。
    「大雑把」と言っても、説明自体は身近な例を挙げながら具体的で分かり易かった。
    一般人向けに書かれているのだから当然と言えば当然だとも思う。良書。

    個人的には、
    全脳エミュレーション方式のものを含めてAIと捉えるのが自然だと感じるので、
    その部分に妙に線引きしている点に関しては違和感が残った。
    そもそも何をもってAIあるいは人格あるいは主体と呼ぶのか、ということ自体、
    これから再定義したり哲学的に見直して議論を深める必要があるように感じられるので、
    単純に「全脳エミュレーション方式のものを除外」する姿勢は短絡的過ぎる感は否めなかった。

    最後に。
    現在、なぜベーシックインカム制度の導入が進む気配がないのか。
    ・・・それは世相を観察すれば、自ずと見えてくることのようにも思われる。
    そもそも人は合理的に動く生き物ではないし、目先の環境の維持も安定に固執する傾向が強い、
    ということも少なからず影響しているだろうことは、想像に難くない。
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    投稿日:2024.01.13

  • なお

    なお

    経済学者がAIが発展した未来を予想した本。経済用語が多く少し難しかったが、わかりやすく説明されていた。

    2030年までには人間に限りなく近い形のAIが完成し、2045年までにはそれが実用化されて社会が変わるような大変革が起きるらしい。その時には仕事の1割しか残らず、9割の仕事は消滅する。

    そんな未来は人間にとってユートピアなのか?それともAIに支配されるディストピアなのか?著者によると、ベーシックインカムが実現した場合ユートピアになり得るらしい。突拍子もない意見に聞こえるが、経済理論で詳細に説明されていたので納得できた。
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    投稿日:2022.01.04

  • タカオ@読書記録

    タカオ@読書記録

    人工知能の進化の先にどんな未来が待っているのか。肉体労働や事務系の仕事は今後ますますAIによって代替され、残るのは資本家かマネジメントの仕事のみ。新しい産業が生まれるから大丈夫かと言われると、誰もが労働移動できるわけではないし、これまで技術進化が進まなかったサービス産業にも人はいらなくなる。1割ほどの職を除いて、働く必要のない社会を大胆に予測している。著者が提唱するベーシックインカムの導入には懐疑的だけど、今の仕事に安住するのは危険。人生100年時代、自分の市場価値を上げて、変化に対応できるように勉強し続けないとダメですね。続きを読む

    投稿日:2021.04.22

  • 仲嶺真

    仲嶺真

    良い本でした。

    AIの可能性を過剰に見積もるのでもなく,だからといって,その可能性を全面否定するわけでもなく,AIの可能性(いつまでにどのようなことができるようになるのか)をデータから冷静に分析し,今後の経済(労働)の行き末を予測する。

    「未来」の予測とはこのように行うのかと勉強になりました。

    AIによって到達する未来がユートピアになるのか,ディストピアになるのかはわかりません。本書ではその両方のシナリオが冷静に提示されています。

    逆に言えば,AIの発展はユートピアの到来の可能性も秘めているのであり,そうなるように活動を作っていくことが必要なのだと思います。
    続きを読む

    投稿日:2021.01.24

  • kohamatk

    kohamatk

    1810年代に、紡績機や織機の導入に反対するラッダイト運動が起きたが、綿布を安く供給できるようになったために消費需要は増大し、工場労働者の需要も増大した。

    コンピュータの導入によって、事務労働の人手が減少したため、1980年代から中間所得層の雇用が減少した。コンピュータとインターネットが引き起こした第三次産業革命によって、1990年代からアメリカの生産性上昇率が高くなり始めた。

    ディープマインド社が開発したDQNは、ゲームのルールを教わらずにプレイの仕方をマスターした。囲碁AIのアルファ碁もディープマインド社によって開発された。

    今後のAI技術発展の道のりには、言語の壁と生命の壁がある。

    第四次産業革命で鍵となる技術の候補は、汎用AI、IoT、3Dプリンターがあげられる。汎用ロボットの原初的なものとして、リシンク・ロボティクス社が作ったバクスターがある。バクスターは、2つの腕を持っており、人間がその腕を動かすことで作業の仕方を覚え込ませることができる。

    汎用AIにも生命の壁があるため、クリエイティブ系、マネージメント系、ホスピタリティ系の管理職、研究者、教育者、医者、介護、調理、接客、給仕などの仕事はなくならないと予想される。

    汎用AI・ロボットの普及によって、それを所有する資本家の所得は増大するが、労働者の所得は減少する可能性がある。
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    投稿日:2020.12.30

  • 大塚みなみ

    大塚みなみ

    テーマはマクロ経済とAI。歯ごたえのあるテーマだが、平易な文章で語られるのでするする頭に入ってくる。スピーディーに読み進めていくうちに、インパクトのある記述にちょくちょく遭遇する。気がつけば付箋で一杯になっていた。この先生の講義を受けたいと強く思った。続きを読む

    投稿日:2020.07.24

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