新刊・予約
ランキング
セール
特集・キャンペーン
ジャンル一覧
詳細検索
0
服部まゆみ / 角川文庫 (30件のレビュー)
レビューを書く
総合評価:
つたもみじ
6
真実は…
19世紀末。大英帝国の首都・霧の倫敦。光と退廃の街。日本から医学留学生として、独逸を経てエレファントマンに会うため倫敦にやってきた柏木薫と、友人でスコットランドヤードに所属している美貌の青年・鷹原惟光…の二人が、世間を騒がせている「切り裂きジャック」事件に巻き込まれていく。絢爛豪華な貴族社会と、隣り合わせの貧困と犯罪。暴力や売春。当時の倫敦の雰囲気がとてもよく描かれていたと思います。皇太子から女王までを魅了してしまう鷹原と、真面目すぎて腹芸すらできない柏木の友情は良い。ただ後半の柏木は頑固すぎて…ジェムが気の毒で。続きを読む
投稿日:2016.07.24
報告する
ポトト
5
虚実入り混じる、すばらしき小説世界
当時の若き日本人が見た、かの時代の英国の物語。切り裂きジャック事件はあくまでも物語の筋を動かす動力にすぎず、メインは日本人留学生の目に映る、ヴィクトリア朝ロンドンのあれこれ。 とても良かった。何よりも…終わり方がこの上なく美しい。この虚実混交したスバラシイ物語の読者たちを、虚実混交の世界に残したまま・・・それも、突き放すようなものでなく、その世界に心地よく浸からせてきれいに幕を閉じる。結局、どこまでが真実で、どこからが著者の付け加えた虚構なのか。それを判断するのは、読者の想像とお望みと興味次第。そんな粋なラストシーンです。 コナン・ドイルさんもきっとそのうち出てくるはずだ!・・・と思っていたけど出てきませんでした。笑。続きを読む
投稿日:2015.12.24
"powered by"
小さな図書室
服部まゆみさんらしい長編 読むものを捉えて離さず 一気にラストへ ロンドンの切り裂きジャック事件に日本から留学している貴族の子息たち 圧倒的な美貌と知性の鷹原 生真面目で世慣れない柏木 森鷗外、北里柴…三郎、田中稲城 ヴィクトリア女王をはじめイギリスの王侯貴族たち 実在の人物100人に架空の登場人物は7人とは著者あとがきから 皆川博子の作品が好きなら当然服部まゆみも読まなくては。続きを読む
投稿日:2023.11.18
レモン
今年中にもう1冊読む予定だったのに、長すぎて本書が2022年最後の読書に。電子書籍は読み始めるまで分厚さに気づかないので臆さず読めるのは長所かもしれない。文庫本だったら読んでなかったかも。 序盤は…なかなか事件も起こらず優雅な留学生活ぶりに鼻白らんでいたが、細部まで丁寧な描写と美しく残酷な当時のロンドンの様子、終盤にかけての加速など、ページを捲る度にグイグイ惹き込まれていく。この時代はまだ指紋が1人1人違うことが常識ではなかったのか。長いがその分読み応えもバッチリ。もう1冊積んでる著者の別作品も楽しみ。続きを読む
投稿日:2022.12.31
春谷(はるや)
霧のロンドン、貴族と貧民が混在する、耽美と退廃に彩られた血生臭い街。 主人公は、日本人医学留学生・柏木薫。最初はベルリンで解剖学を学ぶのだけど、友人の「光の君」こと鷹原惟光の紹介で、先天性奇形症候群で…あるエレファントマンに興味を持ち、ロンドンへ。そこで切り裂きジャック事件に出くわし、巻き込まれていく。 切り裂きジャックについては、なんとなくしか知らなかったので、無知の状態だったこともあって、事件の凄惨さに興味を持ちながら読みました。 読後にあらためて調べると、実際の事件とほぼ同じ流れで小説も展開されていました。その上で、あの人が犯人かもという方向に持っていったんだなぁとわかり、なかなか面白かったです。 ただ、この作品の魅力は、事件そのもののトリックよりも、主人公が人生について悩みながら作家という存在に興味を持っていくという青春物語であったり、また大きな魅力としては鷹原のキャラです。彼は、高い知性、稀な美貌、社交術を持ち合わせながら、シニカルな見方をして時に薫と衝突しつつ、なんだかんだいいつつ薫を心配したりと、二人のやりとりに引き込まれます。 それから、エレファントマンの描き方も、最後まで読むと感心させられました。薫に影響を与えた人物として出てくるわりには、けっこう重要なポジションにいるよな…と思いながら読んでいたのですが、そうくるとは。最後の最後、あの塔の模型に隠された秘密。しびれます。 前半は登場人物が多く、恥ずかしながら世界史に疎くカタカナの人名にも弱い私は、何度もぺージを戻しては、これ誰やっけ??となりながら苦労して読み進める始末でしたが、物語が進むにつれ主要人物の関係性は自然とわかってきました。 ヴィーナスのくだりも、そういうものがあるとは知らなかったので勉強になりました。あの当時ってグロテスクな美が当たり前に許容されていたんですね。 19世紀末ロンドンにタイムスリップしたかのような気分に浸れる一冊でした。長かったけど、そのぶん読みごたえがありました! あと、森鴎外や北里柴三郎が出てきた他、薫と鷹原が源氏物語になぞらえてあるという遊び心。柏木薫て…(笑)でもそれが35年後のラストにつながるのだからおもしろいですね。続きを読む
投稿日:2022.02.05
里希
実は再読だけど、ほとんど内容を覚えていなかったのでほとんど初読み気分で読めた。 前半物語の雰囲気に慣れるまでは読むのにひたすら時間がかかったけど、後半事件の解決まで気になって一気に読めた。おかげで寝不…足。 ほんとにシリーズ化して欲しいくらいメイン2人のキャラクターが好き。続きを読む
投稿日:2021.12.20
tamasan7
このレビューはネタバレを含みます
素晴らしい。わたしも鷹原と柏木くんと共に19世紀ロンドンに存在していた。 切り裂きジャックとエレファントマンは同じ時代だったんだ。 ここではジャックの正体より、この時代の退廃したロンドンとそこに生きる人たちを中心に描いている。 同性愛者であることを隠して生きていかなければならなかったスティーヴンとドルウェット、娼婦として生きて行くしかなかったメアリ、抑圧や鬱屈を排出できず爆発させてしまったトリーヴス医師、見せ物として晒され壮絶な人生を歩んできたにも関わらず感謝と敬意しか示さないエレファントマン。 そして語り手である柏木くんも絶賛モラトリアムである。 容姿端麗で頭脳明晰な完璧超人な鷹原ですら、実の母が娼婦であった過去を持つ。 非常に鬱々としながらも青春小説のような爽やかさもある。 そして何より、はじめと最後に老人になった柏木を置き回顧という形をとるのがエモすぎる。時代を超えたヴァージニアからの手紙。何十年越しに届くスティーヴン氏の手紙。そしてエレファントマンとトリーヴス医師の真実。 とても切なく、大きな存在感を残す作品である。
投稿日:2020.04.05
虹雲
『レオナルドのユダ』の後に服部さんの作品を読んでみたいと手にとった本。 切り裂きジャックを題材に、主人公・柏木の一人称で進む物語が、最後には柏木の小説内であることがわかる。 かーなーり冗長な印象。 権威ある様々な人物が脇を固めているが、爵位がどうの殿下がどうの、というのが多くて誰が誰かわからなくなる。 柏木も悩める青年、という感じで、微細なできごとから急に前向きになったり後ろ向きになったり、丁寧な描写と言えば聞こえはいいが情緒不安定ともとれる。 半面、友人の鷹原は行動派で頭の回転がとても速く、魅力的に描かれている。 柏木の対比として存在しているのかな? 分厚く1ページあたりの文字数が多い本なので、途中気が遠くなりかけたが、最後の方はたたみかけるように急におもしろくなるのでなかなか評価が難しいかなw 最後に老人の柏木が出てくるのが、間が長くて忘れていたがそういや冒頭はここから始まったんだなと。 柏木はイギリスに、切り裂きジャックに、エレファント・マンにただただ翻弄された青年という印象だったが、小説に鷹原の生死について触れ、それが嘘だとわかった時は『一番くえないヤツかも』と思ってしまった^^ おお、とてもおもしろいかと言われたら難しいのだけど、レビューが長くなったのが意外w
投稿日:2019.12.21
ポイントが追加されました。ポイント明細ページからご確認いただけます。
クーポンコードの形式が正しくありません。半角英数12桁で入力してください。
エラー(エラーコード: )
本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック
スマートフォンの場合
パソコンの場合
このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?
ご協力ありがとうございました 参考にさせていただきます。
レビューを削除してもよろしいですか? 削除すると元に戻すことはできません。