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オリヴァー・サックス, 吉田利子 / ハヤカワ文庫NF (45件のレビュー)
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総合評価:
Reader Store オフィシャル
5
奇妙な脳と不思議な人生
イギリスの神経学者、オリバー・サックス。本書は彼の元を訪れた患者たちの奇妙な症状と、その生き方を丁寧に綴ったエッセイです。 『色盲の画家』という章では、事故によって脳を損傷し、全てのものが灰色に見え…る症状を患った画家が登場します。彼は今目の前で見ている色だけでなく、記憶の中でも色彩を感じることができません。しかし、苦悩を抱えつつもそこでめげることなく、白黒で構成された新しい絵画を生み出していきます。 その他にも、視力と記憶力を失い60年代の世界を生き続けている男性や、長年盲目だったゆえに「見える世界」に耐えられない患者といった、フィクションにも思えるエピソードが散りばめられています。人間の脳が生み出す不思議。まだまだ解明には至らないその奥行きを堪能できる1冊です。続きを読む
投稿日:2016.06.30
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はやみ
このレビューはネタバレを含みます
私は脳科学系の読み物が好きで、ことに知覚で形作られる世界は個人的なもので、普遍的なものではないという見方に非常に興味を持っている。本書はまさしくその興味を揺さぶられる内容だった。 本書に描かれている人のうち数人が、自身が障害を持っているということを自覚した上で、障害を消したいとは考えない、とコメントしていたところが印象的だった。それほど彼らが抱えているものが彼らのアイデンティティとして切り離せず渾然一体となっていること、そしてそれほどに彼らが彼らの知覚している世界を守りたいと感じるのだとわかった。 健常者は、ハンディを抱える人に対して、「正常な知覚ができる状態にできれば感動的だろう」と考えることがある(本書の「見えて」いても「見えない」に出てくる妻もその考えだったのだと思う)。私もそう思っていた。もちろん、正常な知覚を得たい、取り戻したいという人もいるだろう。だが、そういった人ばかりではないということを知ることができた。そして、アイデンティティと知覚的世界を守りたいという気持ちは健常者と変わらないと思った。
投稿日:2024.03.24
1699398番目の読書家
病気を患っていても、悲観せずにむしろそこを生かすような人生を送っていてかっこいい。自分を真っ当から肯定する姿勢はすごいと思う。 "生まれながらの盲人が、手で立方体と球体を識別することを学んだとする。…その人が視力を取り戻して、触らずにどちらかを識別することは可能だろうか" 色失った芸術家 記憶を保持できないグレッグ トゥレット症候群の外科医 触覚で生きる人々 当たり前の五感がない世界はどう見えるのだろうか。続きを読む
投稿日:2024.01.14
みそしる
とりわけ印象に残ったのは『最後のヒッピー』。 人生最高の1日を翌朝には忘れてしまうことについてしばらく考えてしまった。
投稿日:2023.07.28
夊(なつあし)
ヒトのふりをするのは疲れたと最近思う。過去には火星の人類学者テンプル氏のライブラリ構築のようなことをしたことがある。(あそこまで大規模なわけでも、圧倒的な記憶力を持つわけでもないが)。ヒト擬態をエコモ…ードに移行させたら、当然のように反感を買った。心が全く理解できないわけではないから火星とまではいかないが、北極くらいの立ち位置にいるような気がする。「感情に支配されている」人間界は疲れる。どうにか疲れない方法が見つからなければ、わたしという個人はわたしになれずヒトモドキとして一生を終えるだろう。見つかれば、本書のような「個人」として人生を送れるかもしれない。続きを読む
投稿日:2022.11.11
千
少々長いなと思うようなところもあったが、まあ結論言いますと、みんな違ってみんないい、十人十色、につきますな。画家が色盲になってからの過程から、どんな悲劇、驚くようなことがあっても、物事をどう捉えるかに…よって世界は大きく変わるんだなと、深く再認識。単純なことだけどそれがなかなかできないんだよね。でも少し、変えてみただけで、マイナスで暗い世界が少しずつ明るくなっていく、素晴らしい。自分の短所と言われる部分がきっと武器になるんだろうなと、願いたい。 以下抜粋 さまざまな偏りのある能力と性格をもったあなたであり、わたしである。その意味では人間は誰もが奇妙な存在だ。健康とか健常という言葉は、実はむなしいのではないか。それよりも、ひとりひとりが自分の偏りを自覚し、それを大切な自分だといとこしむこと、そして他人の偏りも含めてその人だと受け入れることの方がよほど重要なのではないか。続きを読む
投稿日:2022.04.12
DJ TECHNORCH
オリバー・サックスのこれまでの著書の中で最も素晴らしかった。世の中には「杉山なお(著) / 精神病棟ゆるふわ観察日記」のような心療内科患者・生理学的障害を持つ患者を動物園のように「観察」する書籍もあれ…ば、この著者のように限界まで「一人一人としての人間」を理解しようと試みる本気が伝わってくる著書もあるのですね。やはり一番印象的だったのは映画にも成った表題「火星の人類学者 テンプル・グランディン」さんのお話でしょう。日本人なら誰もが「村田沙耶香 / コンビニ人間」「同 / 地球星人」を連想したのではないでしょうか。後者は正に「私達は地球星人ではなかったのだ」という視点で書かれています。本書は一冊通してあまりにも考えさせられる事が多く、感想が一言でまとめられません。続きを読む
投稿日:2021.12.04
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