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オリヴァー・サックス, 春日井晶子 / ハヤカワ文庫NF (11件のレビュー)
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総合評価:
竃猫
ただし、映画の方が感動的ではある
同名映画の原作。映画の方は、もう、「騙されたと思って取り敢えず観とけ!」、と強要しても良いくらいのレベルに傑作。だが、本作はレナード以外の患者も含めた、ノンフィクション作品。映画はレナードを取り上げ、…ノンフィクション化しているので、より感動的になっているので、その点は注意されたい。率直に言えば、難しく、硬い。ただし、映画と同じく、人生に対し疲れちゃった気分になったとき、ヤケな気分になったときに、パラパラめくると襟を正された感じになる。完読しなくても、本棚に置いておく”御守り”としてお勧め。 続きを読む
投稿日:2016.06.22
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夲子
このレビューはネタバレを含みます
脳神経外科による脳炎後遺症患者の長期観察記録。ただし、無味乾燥な症状や数字のみの記録を避け、患者個々の性格や言動、発症までの暮らし、社会との関わり方までも記載し、文学的で哲学的。それは現代医療の患者を即物的に扱う姿勢への批判からきており、一見支離滅裂な行動をする患者側から見た世界、その行動原理、内在する深い人間性への洞察も記されている。物事の断片で正邪を決めつけ、糾弾してゆく世相にも、警鐘を鳴らす指摘だと思う。 どうしても『アルジャーノンに花束を』を想起する。夢の薬エルドーパによる「目覚め」と呼ばれる劇的な症状の改善、それは生まれ変わるかのような重い症状からの解放をもたらすが、強い副作用、制御不能の本能的暴走をする恐れがある。ほとんど一生を、思い通りに動かすことの出来ない肉体に押し込められ、周りの状況を詳細に認識することが難しい状態で過ごすことを考えれば、危険を冒しても打つべきなのか。それは個々人の幸福観へも繋がる問題だ。レナードはエルドーパ投与前、つまり極度な不自由さの中にあっても、自分で磨き上げた深い人間性を持っていたが、目覚めによってほとんど無くしてしまった。多くの患者の中で特にレナードに注視するのは、不自由を無くすことが患者にとって本当に良いことなのかという問題を一番突きつける存在だからだろう。極論だが、レナードを作ったものの一部は不自由さであり、それは切り離す事が出来ない彼自身でもあったのではないか。 哲学的な思考は私には追い切れない部分が多かったが、映画化に際してのロバート・デ・ニーロの役作りの描写やひいては演劇論も大変興味深く、映画作品を見てみたい。 ただのノンフィクションではなく、医師という立場から患者との関わりを通して世界の本質に迫ろうとする、意欲的な作品だった。
投稿日:2024.04.10
まさ
(徹夜ぶっ通しで読了した直後のレビューで頭が働いていないかも)数十年前に出会いたかった本。L-DOPA効果を観る研究対象者である前に症状、性格、そして人生それぞれ同じものはないひとりの人間として、病院…(しかも何十年とその空間から出られない、しかも患者・医療専門職ばかりに囲まれた異質な空間!)の中で真摯に向き合う著者の記録は嗜眠性脳炎、パーキンソン症候群の独特な、そしてありとあらゆる症状と暮らす患者、著者との長い旅を傍らで覗いている感覚がした。当時放映されたドキュメンタリーの映像をどうしても観たかったが探すことができなかった(残念!)。ひと眠りしてから映画を観ようと思う。著者が付録として記載されていたロバード・デニーロの演技に向かう姿勢についてもとても興味深かった。続きを読む
投稿日:2023.06.04
DJ TECHNORCH
年の最後に今年読んだ中で最も重要な本に出会えた。前半の症例一覧も本当に考えさせられましたが、後半の医学とは、治療とは何であるべきかというある種の決意が人生を変えさせられた。噂に違わずこれが間違いなくオ…リヴァー・サックスの代表作だと唸りました。続きを読む
投稿日:2021.12.30
imsyokohamalib
人生にはどうにもならないこともある。 それでも希望はあると教えてくれる。 日々過ごすうちに時として忘れてしまう。 大切なものを考えさせられる、切なくも優しい作品です。
投稿日:2020.07.21
ニコ
この小説の著者は、イギリスの神経学者です。同名の映画は一九九一年四月に日本で上映され、多くの人を感動させた。小説の初出は、一九七三年に上梓されています。 一九二〇年代生まれの患者が多い「嗜眠性脳炎…」は、通称「眠り病」というが、その病の既往性のある患者たちが、回復後、比較的長い年月を経て、パーキンソン病を発症するということに気づいたサックスは、因果関係は不明だがL-DOPA(レボドパ)を嗜眠性脳炎の後遺症に苦しむ患者たちに応用できないかという発想から、物語が始まるのです。 初めにネット上映で映画を鑑賞した後、小説で補完できると思い続けて原作を読んだ。随分生々しく書かれていたことを思い出す。小説に書かれていた「目覚め」は、映画とでは目覚めの朝の表現が随分と違和感があります。嗜眠性脳炎の後遺症は、眼球回転発作、筋固縮、パーキンソン症状、振戦(ふるえおののくこと)などである。 本書には、サックス氏が診察した二〇症例が紹介されている。その症例の二〇番目が小説のタイトルになっているレナード・Lで、薬の効果と副作用が一番顕著に現れた症例の一つでもある。 彼の生い立ちは、常に献身的に付き添っていた母親の手助けがあってのことだった。 彼は幼いころから知的で早熟で、六歳の時父親が死ぬと、その傾向がいっそう強まった。 「僕は一生何かを読んだり書いたりして暮らしたいよ。本に埋もれて生きたい。人間なんてちっとも信用できないからね」。思春期の初めの頃レナードは、その言葉通り本に埋もれて過ごした。一五歳の時に右手が硬直し始め、力が弱まって色も青白くなり、縮んできた。障害はゆっくり広がっていったが、ハーバード大学へ進み、優秀な成績で卒業した。深刻になった障害のため、三〇歳でマウント・カーメル病院に入院し、そして読書以外の活動はまったくと言っていいほど何もしなかった。しかし、サックス氏によれば彼の知的な表現力は、多くのことを教えられたというのである。そしてマウント・カーメル病院で初めてL-DOPAを投与した患者である。 レナードに投与された薬の効果は劇的に好転したため、病院の患者全員に服用させたいと経営者に願い出るも、薬が高価であるため拒絶されたが、病院で働くスタッフの熱意で乗り越えられ、多くの患者たちの症状が好転したのである。それを「一九六九年の軌跡」と呼んでいる。 しかし、サッスク氏と患者には、様々な苦難が持っていたのだ。「眠り病」は、脳波は刺激がないと反応しないが、話しかけると反応するのだ。意識がないわけではない。体は随所に固縮しているが患者の内部は正常なのだ。そして前述した後遺症が何十年も続いていた。まるで地中の奥に幽閉されていたかのようだ。 ‘69年の夏、Drは患者の一人ルーシーに問うた、今年は何年か?一九二六年よ!と答えたのである。何とも悲哀を感じる小説でした。続きを読む
投稿日:2020.04.18
ykikuchi
"映画にもなった「レナードの朝」を今読み終わる。 オリヴァー・サックスさんの語り口も読みやすく、一人一人の物語に引き込まれる。 1900年代前半から大流行した脳炎の後遺症で、パーキンソン症候群、言葉や…感情、体の自由が奪われてしまった人たちが、ある新薬(L-DOPA)の投与により、以前の生活に不自由がなかったころのように回復する。しかしながら、患者により効果は異なり、チックや加速を繰り返すようになったり、意地悪な性格になってしまったり、という副作用が生じてしまう。そんな人々と向き合い治療を行っていた脳神経科医が著者である。 映画の撮影についてもコメントも付録にある。ロバート・デ・ニーロさんの演技へのアプローチが奥深いことがよくわかる。"続きを読む
投稿日:2018.11.24
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