【感想】三月は深き紅の淵を

恩田陸 / 講談社文庫
(640件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
156
213
179
33
9
  • 恩田陸の魅力を堪能できる稀覯本ミステリ?

    稀覯本ミステリと言ったら海外ではアーヴィング・ウォーレスの「[新聖書]発行作戦」やウンベルト・エーコの「薔薇の名前」、ジョン・ダニングの「幻の特装本」などの名作が多数存在する1ジャンルになっており、国内でも笠井潔の「梟の巨いなる黄昏」や古川日出男の「アラビアの夜の種族」、最近ではビブリオ古書店シリーズなど沢山出版されています。で、この手の話は実際に世の中に存在している稀覯本を巡る話とその稀覯本自体が作者の創り出した架空の物という大きく二つに分かれますが、本作はまったくの後者。

    話は4話構成の短編から成っており、主人公もバラバラなのですがすべての話に「三月は深き紅の淵を」という題名の本が登場します。ある時はその本がマニア垂涎の稀覯本であったり、ある時はこれから書かれる本であったりと話によってその形態を変えて登場する。

    第一話はサラリーマンが自分の会社の会長宅で好事家の爺さま達を相手にある本を捜す話。第二話はある本の作者を夜行列車に乗って二人の女性編集者が訪れるまでの話。第三話は自殺した異母姉妹の謎とその理由を追った家庭教師の話。そして最終話は前の3話を含めた入れ子構造になっており、作者の分身である作家がこれから書く小説の書き出しで悩む話。いつものように何が現実で何が嘘なのかが曖昧模糊となっていくので恩田陸らしいと言えばらしい終わり方。

    また本作で作中小説として登場する2つの話はその後「黒と茶の幻想」と「麦の海に沈む果実」という題名で実際に出版されており、まさに小説を地で行く話。

    とにかく本書は作者の本への偏愛がわかる小説であり、初期恩田陸のすべての要素が詰まった作品。
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    投稿日:2015.07.04

  • 恩田陸ワールド案内図・・・かな?

    読み手と書き手、双方にとって正解もゴールもない物語といった感じ。
    恩田さんの作家活動と読者の「恩田陸鑑賞活動」、その全体像の見取り図(それでいて細部が異常に詳細な)であり、それだけでひとつの作品として成り立っている地図のようなものでしょうか。
    既知の場所にはそれを確認する安心感と同時に新たな視点が、未知の場所には指針と期待が、そして知っていると思っていた場所に知らない分かれ道があったことを示されて迷子の気分になったり…。そんな不思議な一冊でした。本というよりも、構成に拘るアーティストの音楽アルバムのよう。
    今後、恩田作品を新たに読んだり読み直したりする中で、必ず何らかの鍵を提示してくれる作品であることは間違いなさそう。
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    投稿日:2015.10.19

ブクログレビュー

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  • ふし

    ふし

    読書沼にハマったら、ぜひとも読んで!と、推したい1冊。
    草原に広がる1本1本の草が本だとして、その無量?無限?から、出逢えた1冊。当時の自分へ「見つけてよかったね!読めてよかったね!」って思わず褒めてしまう(笑)続きを読む

    投稿日:2024.04.11

  • Yuki

    Yuki

    一冊の本を巡る四つの物語。

    不思議さを内包した、独自の世界観に魅了されました。

    それぞれの物語の雰囲気が違うところも、作者の引き出しの多さを感じます。

    ミステリ的趣向が楽しめる中、異彩を放つ最後の「回転木馬」が印象的でした。
    賛否が分かれそうな物語ですが、作者自身が投影されたかのような内容が断片的に挟まれ、風変わりなエッセイと捉えることも出来そうです。

    後に発表される、『麦の海に沈む果実』や『黒と茶の幻想』との繋がりがあるところも見逃せません。
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    投稿日:2024.04.07

  • コプ眠

    コプ眠

    「麦の海にしずむ果実」に出てきた本、”三月は深き紅の淵を”にまつわるエピソード集。でも、読み上げると一つの筋が表れてなるほど!と思わされます。時系列というか、目線がぐちゃぐちゃになってもう一度読み返したくなります。
    一番最初のお金持ちの会長が本好きの若手社員を家に招いて三月は~の本を探させる話が一番面白かったです。
    このシリーズはすこし艶っぽいシーンなどもあり、小学校には向きません。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.02

  • す no

    す no

    このレビューはネタバレを含みます

    不思議な小説でした。
    三月は深き紅の淵を、を巡る4つの物語がそれぞれ独立しているようでゆるく繋がっていて、物語が繰り広げられる箱の中にまたそれぞれの世界を持つ箱が複数並んでいて、それを俯瞰して空から眺めているような変な感覚になりました。
    物語を読むにつれて三月が読みたくなるのに、それはどうやっても叶わないというもどかしさに胸が痒くなりました。
    個人的に第一章の「黒と茶の幻想」が一番読んでみたいと思いました。
    この本としては第二章と第三章が好きでした。
    特に第二章の、じわじわ真相に近づいていき、終盤になるにつれて一気に加速するところが読んでいて疾走感があり、先が知りたくて息が浅くなる感覚を久しぶりに感じました。
    初めは同じタイトルの、同じ内容の本を巡る、全く違う世界の話なのかと思っていましたが、ところどころにふらりと登場する帽子を被りコートを羽織った男性の存在がそれぞれの世界を繋げているような不穏な雰囲気を漂わせていました。
    第四章については頭の整理がついていません。
    まったく違う話が縄を編むように交互に語られ、一人称や二人称が交錯するのは混乱しました。
    もともと理瀬シリーズに興味がありこの本を手に取ったので、これからどのようにシリーズが続いていくのか楽しみです。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.03.26

  • はるじん

    はるじん

    理瀬シリーズの新刊『夜明けの花園』が出たので、それを読む前に、最初どんなんやったかな〜と思って再読。
    いつもながら全然覚えていなくて、新鮮な感動。
    (いいのか、悪いのか。笑)
    なんでこんなにグイグイ読めるんだろう。
    本好きにはたまらない世界観。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.20

  • KOKORO64

    KOKORO64

    幻の本『三月は…』を巡る4章からなるミステリ。各章は独立しているものの微妙に関連している。第4章は著者の理瀬シリーズの序章であり、作家として姿勢、考え方も垣間見える。
    新聞のインタビュー記事で、恩田さんが四半世紀近く書き続けているゴシックホラーの理瀬シリーズがあることを知り、手に取りました。ホラーは少し苦手ですが、恩田さんの作品なので読み進めます。続きを読む

    投稿日:2024.03.17

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