三月は深き紅の淵を

恩田陸 / 講談社文庫
(552件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
148
169
152
24
9
  • 恩田陸の魅力を堪能できる稀覯本ミステリ?

    稀覯本ミステリと言ったら海外ではアーヴィング・ウォーレスの「[新聖書]発行作戦」やウンベルト・エーコの「薔薇の名前」、ジョン・ダニングの「幻の特装本」などの名作が多数存在する1ジャンルになっており、国内でも笠井潔の「梟の巨いなる黄昏」や古川日出男の「アラビアの夜の種族」、最近ではビブリオ古書店シリーズなど沢山出版されています。で、この手の話は実際に世の中に存在している稀覯本を巡る話とその稀覯本自体が作者の創り出した架空の物という大きく二つに分かれますが、本作はまったくの後者。

    話は4話構成の短編から成っており、主人公もバラバラなのですがすべての話に「三月は深き紅の淵を」という題名の本が登場します。ある時はその本がマニア垂涎の稀覯本であったり、ある時はこれから書かれる本であったりと話によってその形態を変えて登場する。

    第一話はサラリーマンが自分の会社の会長宅で好事家の爺さま達を相手にある本を捜す話。第二話はある本の作者を夜行列車に乗って二人の女性編集者が訪れるまでの話。第三話は自殺した異母姉妹の謎とその理由を追った家庭教師の話。そして最終話は前の3話を含めた入れ子構造になっており、作者の分身である作家がこれから書く小説の書き出しで悩む話。いつものように何が現実で何が嘘なのかが曖昧模糊となっていくので恩田陸らしいと言えばらしい終わり方。

    また本作で作中小説として登場する2つの話はその後「黒と茶の幻想」と「麦の海に沈む果実」という題名で実際に出版されており、まさに小説を地で行く話。

    とにかく本書は作者の本への偏愛がわかる小説であり、初期恩田陸のすべての要素が詰まった作品。
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    投稿日:2015.07.04

  • 恩田陸ワールド案内図・・・かな?

    読み手と書き手、双方にとって正解もゴールもない物語といった感じ。
    恩田さんの作家活動と読者の「恩田陸鑑賞活動」、その全体像の見取り図(それでいて細部が異常に詳細な)であり、それだけでひとつの作品として成り立っている地図のようなものでしょうか。
    既知の場所にはそれを確認する安心感と同時に新たな視点が、未知の場所には指針と期待が、そして知っていると思っていた場所に知らない分かれ道があったことを示されて迷子の気分になったり…。そんな不思議な一冊でした。本というよりも、構成に拘るアーティストの音楽アルバムのよう。
    今後、恩田作品を新たに読んだり読み直したりする中で、必ず何らかの鍵を提示してくれる作品であることは間違いなさそう。
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    投稿日:2015.10.19

ブクログレビュー

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  • すー

    すー

    このレビューはネタバレを含みます

    幻の本と言われている『三月は深き紅の淵を』を巡る4つの短編集。それぞれの話が同じ本にまつわる話なのにも関わらず、全く違ったテイストで描かれています。個人的には「回転木馬」が印象深かったです!エッセイのような小説のようなテイストで読者を不思議な世界に迷いこませます。あの話で描かれているのは恩田さん自身のことなんだろうなーと思うとそれだけで興味深く思えました!別作品『麦の海に沈む果実』の文が話の中に埋め込まれているのも面白かったです‼︎

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    投稿日:2019.10.13

  • ミトン

    ミトン

    このレビューはネタバレを含みます

    どう表現したらわからないけど、
    読書愛に溢れた本でした。
    章ごとに繋がりがあるようでよくわからない。
    読んでてなお謎が出てくる
    でもどんどん読んでしまう不思議な感覚。

    第2章の出雲旅よかった。
    夜行列車でお酒飲みながらの旅。憧れるー!

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    投稿日:2019.09.18

  • ありんこゆういち

    ありんこゆういち

    内容紹介
    すべてが謎めいた1冊の本はどこに?

    鮫島巧一は趣味が読書という理由で、会社の会長の別宅に2泊3日の招待を受けた。彼を待ち受けていた好事家たちから聞かされたのは、その屋敷内にあるはずだが、10年以上探しても見つからない稀覯本(きこうぼん)「三月は深き紅の淵を」の話。たった1人にたった1晩だけ貸すことが許された本をめぐる珠玉のミステリー。続きを読む

    投稿日:2019.07.09

  • show

    show

    なんとも複雑な小説である。4つの章から成る、というのがひとつのポイントになっている。4つの章は、『三月は深き紅の淵を』という謎の多い作中作品をめぐるストーリーということ以外、ほとんど共通点がない。ストーリー的にもつながっていない。それぞれ、独立した作品としても十分読めそうである。

    にもかかわらず、作者はこの作品をひとつの作品として成立させた。なぜなんだろう。

    この小説は、小説そのものと、作中作品が二重構造になっている。つまり、小説そのものは「メタ物語」である。これをひとつめのメタ性としよう。

    この作品に出てくる様々な物語は、実は恩田陸のほかの作品ともつながっているという。そうだとすると、この作品じたいが、恩田陸作品のメタ物語なんじゃないか。水島新司における『大甲子園』のような。これがふたつめのメタ性である。もちろん、『大甲子園』ほどベタではなく、そのメタ性が奥ゆかしくほの見える、というところが読み手の想像を豊かにするのだけど。

    ということで、メタ物語としてもふたつの構造をもっていて、そういう構造そのものが面白さを呼び起こしているんじゃないだろうか。
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    投稿日:2019.05.06

  • zukky0310

    zukky0310

    大学時代にタイトルが気になり購入しました。10年ぶりの再読です。
    内容は「三月は深き紅の淵を」というタイトルの本にまつわる4つの物語で、1章で作中作の概要を説明し2章からは形を変えて同名の書がサラッと出てきます。
    更には4章、作中作を執筆している段階で作者自身も言及していますが、本書と作中作は入れ子の関係になっています。例えば作中作の2章は「夜の話」で妹(だったかな)の死の原因を調べるために妹の恋人と旅に出るという話で、本書の2章も幻の本の作者を探すため夜行列車で旅をする話です。本書の3章はまさに従姉妹の恋人と従姉妹の死の真相を探りに旅する話です。
    このメタ構造が大学時代の私には相当のインパクトがあり、作中作で小出しにされる不思議な話にもまんまと魅了され、記憶に鮮明に刻まれました。作者の思惑に完全に乗せられましたね。
    社会人のいまとなってはすれてしまいそこまでの衝撃はないのですが、それでも作者の巧みな感情表現や丁寧な伏線、次々と明かされる真相につい読み入ってしまうほど面白かったです。
    本書に関連する小説(黒と茶の幻想など)も出されているようなので、今後読みたいと思います。
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    投稿日:2019.04.10

  • 本ぶら

    本ぶら

    このレビューはネタバレを含みます

    注:この本の内容と『黒と茶の幻想』の結末の方向性に触れています


    ウィキペディアを見ると4作目なんですね。恩田陸の。
    『六番目の小夜子』、『球形の季節』と恩田陸、お得意のパターン(設定といい、結末がどっかいっちゃうといいw)が2作続いて、次に本人曰く「完璧にプロットと作って書いた」という『不安な童話』。
    その後ということで、まぁなんというか。いろいろ鬱屈が溜まっていた時期だったんですかね?(笑)
    登場人物を通して語る、どっかで聞いたよーな、どーでもいい世相批判がうるっせーのなんのって!w
    『三月は深き紅の淵を』という妙にくどいタイトルもそうなんですけど、素人が手慰みで書いている小説じゃないんだからさぁ~w

    いや、読んでいて、やっぱりさすがだよなーと思う所も多々あるんです。
    どうという話じゃないんだけど、何だか妙に読んじゃうところとか。
    その辺りはさすが腐っても恩田陸!って感じ。←ホメていますw
    とはいえ、如何せん全般にテンション低すぎねぇ~か~って感じはするかなぁ~(と言うより、意気込みに筆力が追いついてなかったという方が適当か?)。

    この本は4つの話からなっているんですけど、1つ目『待っている人々』は話自体どーということないのもさりながら、上でも書いたように、登場人物を通して語る、どーでもいい世相批判が多すぎですね。
    著者独自の視点のそれであればまだしも、全て当時他の誰かも言っていたようなことで、読んでいて薄ら寒い(笑)
    ていうか、ウィキペディアを見るとこの『待っている人々』が出たのは1996年ということですけど、現在の世情批判と大して変わらないところが面白いです。
    その時代から4半世紀近くが経って、ITだなんだかんだ言っても、人間も世情も大して変わんないんだなぁ~ということなんでしょうか?w

    ただ、これも上に書きましたけど、どーということない話なんだけど不思議と読ませるんですよね。
    たんに恩田マジックということなのか、ていうか、この話の場合、時代が恩田陸に追いついた(or世の中が恩田陸化した?w)と言った方が適当な気もするんだけど……!?
    その辺り、当時リアルタイムで読んだ人に聞いてみたいです。
    小説としては、ま、★2つというところw


    2つ目の『出雲夜想曲』は結構好き。
    女性二人が夜行列車で延々語る、いかにも恩田陸というインドアな感じ、それはそれでいいんだけど、実際に出雲の着いてからの雰囲気がいいんですよね。読んでいて醸し出される光景が妙に暗くって。
    夜行列車の車内は夜だから当然暗いはずなのに、昼間である出雲での出来事の方にほの暗さを感じるところが面白い(上手い!)です。
    ただ、重箱の隅突っつくようですけど、あの廃屋で歩きタバコをする人はいないと思うけどなぁ…。
    小説としては、★3つ。

    3つ目の『虹と雲と鳥と』は、終盤いきなりバーン!という衝撃とそれに続く迫力ある場面があるから、そこで評価は一気に上がるんですけどねぇー。
    ただ、恩田陸オールスターズとでも言いたくなる登場人物たちに、え?またこの人たち?と、ちょっと食傷気味(笑)
    ていうか、不思議なのは二人の母親って、東京でデザイナーとして活躍していた父親と結婚したはずなのに、なんで離婚した後、どっちの奥さんも同じ長野に住んでいるんだろう?
    あと、二人がぶら下がっていたというのもよくわからないんですよね。
    そんなこと実際に出来るものなのか?第三者が後で見てそういうことがあったとわかるものなのか?
    その辺りはよくわからなかったんですけど、そういうのは重箱の隅だと思うので小説として★3つ。


    4つ目の『回転木馬』は……
    いやはや。もう笑っちゃいました(笑)
    恩田陸の持ち味は結末は読者にゆだねる(結末が書けないとも言うw)ところにあると思うんですけど、まさか四部作の4つ目全て読者にゆだねるという荒業に出ちゃうとは!w
    とはいえ、読んでいて妙に面白いのが可笑しくって。
    いや、小説の部分じゃなくて。書きあぐねて、あーでもない、こーでもないとやっている、エッセイの方。
    あれ読んでいると、「四部作!と、バチっと決めちゃったら逆にダサいっていうのもあるか?」なんて思っちゃったりで。
    いやぁ、憎めねぇ、憎めねぇ(笑)
    あそこまでやるなら、いっそ、「トイレにいってスッキリしてきた」とか「コンビニ行って、ビールと肉まん買ってきた」とか、バカ丸出ししちゃえばもっと楽しめたのになぁ~w

    というわけで、これは小説じゃないんで★は無し。
    ただ、それは小説としての評価で。エッセイ、それもデビュー後4作目を書いている(まだまだ新人)作家のエッセイとしてなら、★5つでもいいんじゃないでしょうか。
    ていうか、この4つ目の話だけでなく、この本は全体的に恩田陸の創作ノートみたく読めるところがあって、そこがとっても興味深かったです。
    1つ目だったか、2つ目の話だったか、「気に入った本を読んでいると、その行間から自分が書く小説が浮かび上がってくる」みたいなことを登場人物を言う場面がありましたけど、「そうそう。この著者の書き方って、そうだろうね」って、すっごく納得できましたもん。

    さらに、この本の中に出てくる、(2001年に出版される)『黒と茶の幻想』はこの時点でどのくらいまで構想されてたのか、あるいは書かれていたのか。
    登場人物や大体のストーリーはともかく、登場人物いわく「尻切れトンボという感じは否めないね。そんなこと、どうでもいいやって感じの終わり方なんだよ」って、もうこの時点でそういう結末と決めてたってこと!?
    しかも、その後に「とにかく、途中これでもかこれでもかと変な事件を羅列するのにエネルギーを使い切っちまったって感じだね。あれは」と続くって…。
    恩田陸って、どこかの時点で結末(らしい結末)を書くことを放棄したんだろうなーと気はしていましたけど、そうか!この時点だったんですね。
    それはやっぱり、完璧にプロットを作って書いたという、前作『不安な童話』のトラウマなのかなぁ…w
    ま、人間、自分らしくないことはしないに限るってことなのかもいれません(笑)

    それはそれとして、小説の方の最後。
    憂理が理瀬に「別の三月の世界で会えるかもしれない」と言う場面があるんですけど、自分としてはこっちの三月の世界の話の方が断然面白かったです。
    もっとも、それは先に『麦の海に沈む果実』を先に読んでいて、エッセイの合間に出てくる話の断片をつなげてストーリーに出来るからであって。もし、読んでいなかったら何が何やらわからなかったような気がするんですけど、どうなんでしょう?
    その辺り、こっちを先に読んだ人に聞いてみたいです。

    その「別の世界で会える」とか、エッセイの部分が丸々2つ目の話の取材ノート(どうインスピレーションを受けたか?)になっているところとか。この4つ目の話は、いろんな点で著者の創作法が窺えるところが面白いです。
    ただ。最後の最後、「この書き出しは、どうだろう?」とあるんですけど、「森は生きている」と思うけどなぁー(笑)

    全体的には、著者が持っている自らの小説の魅力に、著者の小説を書く力(技?)がまだまだ追いついていない時期の小説なんだろうなという気がしました。
    ただ、4つ目の話の(小説の方の)最後とか、3つ目の話の途中のいきなりの展開とか、ああいうはっちゃけた展開は恩田陸にしては珍しくて面白かったですね。
    この後に書かれた(らしい)『麦の海に沈む果実』のあのなんとも煮え切らなさを思うと、何とももったいないような。
    とはいえ、その煮え切らなさこそが恩田陸の(ファンが抱く)魅力的な部分でもあるのかもしれません。

    恩田陸は、時代が恩田陸に寄り添ってきたのか、恩田陸が時代に寄り添ったのか、どちらかはわからないですけど、妙に「現在」という時代と合っているようなところがあって興味深いです。

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    投稿日:2019.03.31

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