【感想】神と野獣の日

松本清張 / 角川文庫
(15件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
3
6
4
0
0
  • 運命の時、人は野獣と化すのか?

    「同盟国である亡国より東京に向かって、核弾頭ミサイル5発が誤射
    されたとの情報が政府官邸に届く」との冒頭シーンから物語が始まる。

    威力は広島原爆の500倍・残された時間はあと1時間余り
    政府の対応は、国民に知らせるのか否か・・・
    5発のミサイルは、洋上にて全て撃破されるのかそれとも・・・
    東京都民1千万人の運命は・・・

    極限状態に置かれた時、人はどのような行動をとるのか・・・
    理性は愛は存立するのか、それとも野獣と化すのか・・・
    そして、運命の時が刻一刻と迫ってくる・・・
    はたして、生き延びる事が出来るのか。

    ハラハラ・ドキドキ、展開の面白さに、一気に読みきった。
    清張といえば社会派小説ばかりかと思いきや、SF小説も執筆して
    いたとは意外であった。秀作である。

    1973年初版発行されたのだが、昨今の時世に於いては、
    現実味を帯び、ひょとすればとの危惧が頭をかすめる。
    貴方なら、その時どう行動するのかと問われている様である。

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    投稿日:2015.11.10

  • 清張さんが50年以上前にこんな作品を書いていたとは

    Z国から東京に向かって誤射された5メガトンの核弾頭ミサイル5基。
    東京到達まで1時間。
    もちろん迎撃もするが5基すべてを撃ち落とすことは不可能。
    避けられない事実として総理大臣は記者会見を決行。会見場の記者は自社に連絡もせず自分が真っ先に逃げ出した。ここから始まるパニックを描いた小説である。
    とにかく戦争ではないので逃げるのみ。帰宅ラッシュが始まるが電車運転手だって警察官だって早く逃げたい。これからどうなる・・・刑務所や病院、デパ地下は・・・清張さんが50年以上前にこんな作品を書いていたとは。ただただ驚きながら読んだ。
    携帯電話もネット環境もない時代なので現代との比較は難しい面もあるが今だからこそこの作品がピックアップされて来たのだろうと感じた。
    後半は水爆の知識や着弾したら周囲はどうなるかなど情報量も多い。ミサイルが落ちてきただけなら隕石が落ちてきたのと変わらないわけで水素爆発の脅威が問題なのだが、知識がないことがパニックを誘発する怖さでもある。
    それにしても誤射とか水爆の不発の可能性とかあり得ることなのだろうかと少々疑問は残った。発表当時は余り人気が出なかったことも納得できる。
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    投稿日:2017.10.11

ブクログレビュー

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  • ゲチョオキックス

    ゲチョオキックス

    作品という見かたをすれば、この作品は地味で渋い作風ではなかろうか。なるほどSFであるが、そこがSFになりきってないのか、むしろやはり社会小説であり、その狭間に作品のテイストを留めているのだ。つまりこのテーマで本当のSF作家ならもっとエンターテイメントに書き上げるだろう。その手前で社会のうごめきに軸を移しているところに、むしろ地味なおもしろさがある。続きを読む

    投稿日:2024.02.29

  • minerva-48

    minerva-48

    昭和38年に週刊誌に連載された松本清張には珍しいSF作品。とある同盟国から誤って核を搭載したミサイルが何発か日本に向かって発射された。迎撃でないミサイル2発は、東京都心を直撃するという。この知らせが国民に周知されたのは、ミサイル到達予想時刻の1時間足らず前。首相はじめ主要な政府要人は、すでに飛行機で大阪に飛び立ち、大阪から各部署、国民に指令する。東京都内に残された人びとは、どのような行動を起こすか?
    昭和38年に架空のSF小説として連載が始まるも、果たして、現在も仮想現実のことと言えるのかどうか?
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    投稿日:2022.11.05

  • じゅう

    じゅう

    「松本清張」のSF的小説『神と野獣の日』を読みました。

    「清水義範」のSF連作集『博士の異常な発明』を読んで、SF作品を読みたくなったんですよね。
    「松本清張」作品は、『ゼロの焦点』以来なので約半年振りです。

    -----story-------------
    「重大事態発生です」―ある早春の午後、官邸の総理大臣にかかってきた、防衛省統幕議長からの緊急電話が伝えた。
    Z国から東京に向かって誤射された、5メガトンの核弾頭ミサイル5基。
    1発で、東京から半径12キロ以内が全滅するという。
    空中爆破も迎撃も不可能。
    ミサイルの到着は、あと…43分。
    ラジオ・テレビの臨時ニュースによって、真相が全日本国民に知らされた!
    SF的小説に初めて挑戦した「松本清張」の隠れた名作。
    -----------------------

    日本から2万km離れた太平洋自由条約機構のZ国から誤って発射された核弾頭ミサイル5基が東京に向かっている… 自爆装置は起動せず、日本(自衛隊及び在日米軍)の迎撃能力では3基しか破壊できない、、、

    43分後の12時32分(のちに140分後の15時9分に訂正)には東京が被爆することを覚悟した政府の混乱、事実を告げられた住民のパニック等がリアルに描かれています。


    東京から逃げるためにパニックとなった住民の蛮行は、ぞっ… とするような身勝手で野蛮な行動なのですが、実際に死の恐怖に直面した人間は、冷静ではいられないんだろうと思いますね。


    極限の状態に置かれ、本能に任せ野獣と化した人々、最期まで人間性を失わず神として行動した人々、、、

    その両方が描かれていますが、自分が、その場にいたら、どちらの行動を取っただろうか… 考えさせられる物語でしたねぇ。


    (多分?)東西の緊張が高まっていた1963年に書かれた作品ですが、原発事故や北朝鮮の人工衛星発射等もあり、なんだか現実味のある物語に感じました。

    現実にならないことを祈るばかりですね。


    助かった… と思わせたあとの、このエンディングは巧みです。怖いです。

    映画化しても面白そうな作品に感じましたね。
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    投稿日:2022.05.27

  • facecollabo

    facecollabo

    神と野獣の日(角川文庫)
    著作者:松本清張
    発行者:角川パブリッシング
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    40年以上の間根強い人気を誇るSFパニック作品。続きを読む

    投稿日:2021.11.13

  • 路傍の花

    路傍の花

    1973年に発表された作品なのに、全然昔話になっていません。
    某国のミサイルの誤射から東京着弾までを書いています。インターネットと携帯電話が出て来ないのを除けば、まるで昨日今日の話のようです。

    あと1時間で、今いる場所が壊滅すると言われたら、逃げるのか、残るのか。ライフラインを守る仕事をする人たちが逃げたらどうするのか。
    交通機関は動くのか?動かないのか?電気はいつまで供給されるのか?

    頭の中で自分ならどうする?という問いを明滅させながら一気読みでした。
    続きを読む

    投稿日:2013.09.21

  • なにがし

    なにがし

    どっかで観たような先の読める話だが、
    73年に描かれた小説ということを考えれば
    その古典であると言えるのかもしれない。

    核ミサイルが後一時間程で飛んでくると宣言された東京で起こる
    集団ヒステリーや阿鼻叫喚の様子と
    大阪に避難した総理大臣を始めとした内閣の
    喜劇的なまでの不甲斐なさが素敵なコントラストをなしている。

    ミサイルが着弾する最後の10分程の民衆の狂気と
    タイトルのセンスが素晴らしい。
    続きを読む

    投稿日:2012.03.27

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