【感想】ぼくはこうして大人になる

長野まゆみ / 角川文庫
(18件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
2
6
7
0
0
  • 美しき少年たちの恋愛模様

    男子中学生(中3)同士の恋愛を描いた作品。BL(ボーイズラブ)小説と呼べないことはないでしょうが、一般的なBLとは趣が異なります(解説の宮木あや子氏は「ジャンル=長野まゆみ」と定義)。
    一番の違いは、キスシーンやラブシーンに生々しさがないことでしょうか。色っぽい雰囲気は漂わせながらも、さらっとした筆致で描かれています。そのぶん会話や主人公の内面描写に力が入れられていて、特に主人公・一と七月の心理的駆け引きのような会話が印象に残りました。中学生にしては大人びた一の語りも、この話の世界には不思議とふさわしいように思えます。ちょっと一がフラフラしすぎ(恋の相手が多すぎ)な気はしますが……。
    著者の作品にしては文体のクセが少なく(キャラの名前は凝ってるけど)、長野まゆみ初心者でも手に取りやすいのではないかと思います。
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    投稿日:2015.05.16

ブクログレビュー

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  • マッピー

    マッピー

    主人公は中3の少年。
    家でも学校でもよい子を演じているが、実は女子に興味がなく、男子に恋愛感情を抱く性癖があることを必死に周囲に隠している。

    10歳離れた双子の姉兄にいたぶるようにかわいがられて育った彼は、幼い頃自分を女だと思っていた。
    そう洗脳されたと思っている。
    だから、女の子として育ってしまったから男の子のことを好きになってしまうのだと思っている。

    20年以上前の作品だから、そういうことになっているのかな。
    性癖は育てられ方のせいではなく、持って生まれたものだと思うんだけど。
    と思っていたら、最後に衝撃の事実が明らかになる。

    本人にもわかってはいたのだ、姉兄のせいではないことを。
    だけど、認めたくなかった自分。
    そして思い出したくない過去。
    そういうことを認めるところから大人への一歩が始まるのだね。

    学校の人間関係がリアル。
    事なかれ主義のものぐさな教師、それとは対照的に必要なときに必要な支えをくれる教師。
    教室内の力学に敏感で、人の痛みに鈍感なクラスメートたち。
    あまりに自分勝手で、読んでいてちょっとキレそうになる。
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    投稿日:2023.06.23

  • 橘

    このレビューはネタバレを含みます

    黒長野。少年たちの関係だけでなく、クラスの空気もピリピリしてるのがこれまでと違うなと思いました。主要な少年たちが孤独に弱い。
    これまでは、高慢な美少年だけど集団でも上手くやってる、みたいな子たちだったけどイッくんは違う。七月と健はイッくんよりはメンタル強者。
    主人公イッくんの学校生活が不憫でした。「イッくんはちゃんとしてるなぁ」で済まされててクラスの面倒見させられてても、彼まだ中学生だ。。
    宮木あや子さんの長野愛が爆発しているけど冷静に分析してある解説とても面白かったです。作品が限りなく現実っぽい世界観でも、長野まゆみさんの描く少年は架空の生き物で、長野まゆみさんの作品にしか存在しないのすごいです。
    作品の内容を考えるとつらいので、長野まゆみ少年を愛でる読み方するのが心にあまり負担がかからないな。きっと。尊死はするけど。

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    投稿日:2023.05.21

  • いっさん 誤フォロー申し訳ありません。

    いっさん 誤フォロー申し訳ありません。

    懐かしい青春を感じさせてくれました。先生特有の曖昧なえがかれ方もあり、想像するのも楽しいです!これからが気になります!

    投稿日:2023.03.05

  • towa

    towa

    夏は長野まゆみが読みたくなる。
    解説は宮木あや子で、これがまたファンの気持ちを代弁しているような名文だった。
    本書の少年たちはまだ生身の人間らしさがあるけれど、相変わらず触れたら壊れそうな危うい関係ときらめき。
    ファンタジーであることは重々承知の上で、長野さんの描く思春期の少年像があまりにも完璧。
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    投稿日:2022.01.12

  • ⋆*❁*

    ⋆*❁*

    やはり長野まゆみさん独特の表現、繊細に描かれる人と人との距離感が大好きだと感じさせられる1冊でした。初め、まさかボーイズラブ的な内容だとは思わず読み始めたけれど、愛情とか友情とかを超えた複雑な感情が思わぬ形で描かれていて、私の価値観を根底からひっくり返されたような気がしました。登場人物個人の感情が明確にされていないのが尚更人間味を出していて、上手くいかない人との接し方にすごく心がむず痒くなります。私はこの物語を忘れられないと思うほど大好きな作品です。続きを読む

    投稿日:2021.07.11

  • 菓子パン

    菓子パン

    冷めやらぬ長野まゆみ熱のなか、またお気に入りの一冊に出会ってしまった。長野さんの描く青年たちは、その時期(中高生)特有の生々しさを含みながらも、どこか幻想的で理想をすべてかなえてくれているような特徴をはらんでいる。解説で宮本あや子さんが書いているが、決して「共感できた!」というようなエゴイスティックな感想は生まれず、いつまでも眺めていたい、鑑賞者でいたいと思うような一歩引いた楽しさがある。

    主人公の印貝一はクラスの優等生を演じながらも、他人には言えない秘密を抱えている。彼はそれをうまく隠し通せていたはずだったが、転校生の七月が現れてから彼の立場が揺らぎ始める。例にもれず、今回の登場人物たちも複雑な家庭事情を抱えており、自分の立場に葛藤しながらも居場所を探し得る。10も歳が離れた双子の姉弟である百(もも)と十(みつる)に振り回されながら、確かに愛情も受け取っている。
    長野さんの作品の登場人物たちは、行動こそときにはぶっ飛んではいるが、根っこに優しさがあるという妙な安心感がある。だからこそ(宮本あや子さんが呼んでいたように)きれいなジャイアン的なポジションである健がいわゆるいじめっ子のような行動をしていても、どこか憎めないところがある。それにある時期まで一を女であると思い込ませていた勝手気ままな双子の姉弟にも、好感をおぼえてしまう。
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    投稿日:2020.03.25

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