【感想】覚悟の人 小栗上野介忠順伝

佐藤雅美 / 角川文庫
(10件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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  • 不器用な人と呼ばれるのか・・・?

    娯楽作の多いこの作家ですが、「大君の通貨」に連なる一連の硬派な作品群の傑作です。
    いや、忠順という人物自体が非常に魅力的なんです(NHKさん「またもやめたか亭主殿」観たいです!)。
    頭が良くても、真面目過ぎて、世渡り下手で・・・。勝海舟とかと比べると、その不器用さが本当に際立ちます。
    忠順の評伝は童門とか他の作家にもあるけど、この佐藤雅美が不器用さがよく出ている気がして、一番しっくりします。
    同じく佐藤雅美の「川路聖謨」と並び、昔の人は偉かったんだなぁ、とか、崩壊しようとする組織を懸命に支えようとする姿が胸を打ちます。

    そのうち、高崎市を訪問したいと思いますが、遺徳を偲ぶなら意外なところでJR横須賀駅の近くの公園に小さな銅像があります。

    ちなみに「大君の通貨」は激推です。政治の本質は経済にあり!と思わせる感じがしますが、山川の教科書に書かれていない幕府崩壊の意外な要因に驚きます。
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    投稿日:2014.11.29

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  • 弐印

    弐印

    小栗上野介忠順の伝記。日記等の資料を引き精緻に描いているためにすらすらとは読めないが、小栗の有能な幕臣の仕事振りが伝わってくる。幕末維新の動きを、幕臣の眼で追うことができて面白かった。特に横浜開港時の墨銀と一分銀の交換比率の歪みの仕組みは、本書の説明でやっと理解できた。ハリスや徳川慶喜について辛口な評価で描いているが、なるほどと思った。続きを読む

    投稿日:2023.03.31

  • matsunokaori

    matsunokaori

    漫画「天涯の武士」の主人公。開国から始まった米英との交渉について。小栗、大隈、高橋と続く。
    アメリカとの不平等な為替の改善交渉やロシアの対馬租借危機の交渉の実績から、小栗はアメリカとアメリカ人をまるで信用していなかった。口では偉そうなことをいうが正体は追剥同然の破落戸。小栗はイギリスをそんな国だと確信した。オランダは一時期は隆盛だったがいまはただの一小国。ロシアは狐狼の国。
    今も昔も本質は変わらない。海洋国と大陸国の地政学的関係は変わらず、米英とは上手くやっていかざるを得ない日本の立ち位置は変わらない。
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    投稿日:2022.11.04

  • だまし売りNo

    だまし売りNo

    徳川慶喜は英明というイメージが一般的である。鳥羽伏見の敗戦で逃げ帰った腰抜けというイメージもあるが、時代の流れを見通したために無意味な抵抗をしなかったとも解釈されている。慶喜を徹底的に扱き下ろした作品に、佐藤雅美『覚悟の人 小栗上野介忠順伝』がある。そこでも内実は卑怯者だが、外面は格好付けている慶喜像を描いており、慶喜の英明イメージを根本的に壊すものではなかった。続きを読む

    投稿日:2021.07.25

  • 「おやっさん」

    「おやっさん」

    徳川幕府と真に心中した覚悟の人、小栗上野介忠順の生涯を描いた作品である。
    最近、この言葉が気に入っているが「社稷」。
    徳川であろうと、薩長土肥であろと、当時の日本国が置かれた状況を勘案し、西欧列強から如何に日本という国家を守れるのか、その視点がもっとも重要なことである。
    水戸がお里の慶喜の思想では、あの困難を打開することは無理だった。
    因循姑息、ひたすら向かうしかなかった。
    その点、小栗は、当時のアメリカを直に見、また、当時の幕府の財政状況の中で、通貨問題を解消すべく動き、また、開港に向け、整備すべき資金の調達にも動いたのである。
    慶喜、勝が生き残り、小栗が非業の死を遂げる。
    勝てば官軍思想、明治維新万歳思想、真摯に戦った人たちの目線、態度、つまり真の「社稷思想」で歴史をきちんと見なければならないとつくづく思いました。
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    投稿日:2018.10.20

  • yokoichi26

    yokoichi26

    難しかった…。
    けど、強い覚悟と新年の人だということは伝わった。
    何がきっかけでこの本を買ったんだっけ。どこかで見聞きしたはずなんだけど…。

    投稿日:2018.10.02

  • ゴンチャロフ

    ゴンチャロフ

    歴史上、傑出した能力をもちながら損な役回りを担わされる人物はいるものだ。本書の主人公、小栗上野介忠順などはその最たる者であろう。「覚悟の人」というタイトルは、幕臣としてそのような役回りをあえて引き受けざるを得なかったことをも含意していると思える。正論を吐いても歯に衣着せぬ物言いが反感を呼んで要職を追われ、結局事態が行き詰まると再び呼び戻され後始末に奔走する。こうして外国奉行、勘定奉行、軍艦奉行、歩兵奉行などを歴任、特に財政面に明るくあの手この手で瀕死の幕末財政を支えた。戊辰戦争では箱根での陸海邀撃策を献策するも恭順を貫く慶喜に却って役職を解かれ、知行地の上野国に引きこもる。長州藩の大村益次郎は後に小栗の邀撃策を耳にして戦慄したというが、こうした知略を恐れられてか上野国で捕縛され直ちに斬首に処せられた。小栗自身に抵抗の意思はなく、もし小栗が新政府に重用されていれば明治初期の財政的混乱はもっと緩和されていたのではないかと惜しまれてならない。続きを読む

    投稿日:2015.06.14

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