【感想】将棋の子

大崎善生 / 講談社文庫
(130件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
56
48
10
0
0
  • 敗者の紡ぐ物語

    将棋のプロ棋士となるためには、ほとんどの場合「奨励会」という養成機関に入らなければなりません。奨励会では、日本全国各地で「天才」「神童」と呼ばれていた子供たちが集められ、しのぎを削っていきます。そんな厳しい環境をくぐり抜けた実力者だけが、プロとして表舞台に立つことが許されるのです。

    北海道で天才の名を欲しいままにしていた、成田英二。北海道出身で成田の存在も知っていた著者の大崎は、社員として奨励会に入社し、そこで成田と再会します。しかし、思うように勝ち進めなかった成田は、その後奨励会を脱退。プロの道を諦めてしまいます。

    その後、さまざまな職を移り渡り、借金取りから逃げる日々にまで陥る成田。そんな彼の人生を、筆者は懸命に追いかけていくのです。一部の天才の影に隠れた、たくさんの敗者たち。その内のひとり、スポットライトの当たることのなかった成田という男の人生を浮き彫りにしていきます。ハッピーエンド、とは決して言えない物語だけれども、誇りを持って懸命に生きてきた男の人生は、確かに読み手の胸を打つのです。
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    投稿日:2015.10.20

ブクログレビュー

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  • ごま

    ごま

    このレビューはネタバレを含みます

    将棋にかける、若さの全てをかける世界。
    スポーツや勉強にかける他の世界とは全く異なる世界。
    泣ける。
    奨励会とは厳しい制度だ。
    だが、そこで夢破れても何も残らないことはない。確かに戦った経験があり、残るものがあり、その意味で彼らや彼女らは将棋の子である。

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    投稿日:2024.03.21

  • たくぼん

    たくぼん

    将棋は厳しくない、将棋は優しい

    いろんな世界で頂上やプロを目指して戦っている人がいるけど、そんな人にも読んで欲しい一冊。ただ、決してハッピーエンドじゃない

    投稿日:2024.02.29

  • 甘いパンよりしょっぱいパン

    甘いパンよりしょっぱいパン

    このレビューはネタバレを含みます

    中座真
    現五段。三段リーグを戦っていた。26歳を迎え、昇段しなければ年齢制限という奨励会特有の規則のため、これ以上リーグ戦に参加できない状況だったが、昇段が決まった。

    中座千代子
    中座真の母。

    大崎
    将棋世界編集長。新宿将棋センターの金田に紹介されて、日本将棋連盟に就職する。その後「将棋世界」編集部に配属され、編集部員として間近で激動する将棋界を見つづけてきた。少年時代に「北海道将棋会館」に時々通う。

    成田英二
    四段。二段で奨励会を退会し、その後指導棋士となり四段の免状を与えられていた。白石将棋センターに連絡先を変更。小学5年で三段、「北海道将棋会館」に通っていた。

    渡辺明
    史上4人目の中学生プロ棋士。新四段。

    池辺龍大
    三段。奨励会を退会。

    東山
    白石将棋センター。

    金田秀信
    新宿将棋センターの社長。大崎に日本将棋連盟への就職を紹介する。

    勝浦修
    A級棋士。九段。日本将棋連盟理事。

    升田幸三
    髭の九段と恐れられた。

    大山康晴
    日本将棋連盟会長。

    岡崎洋
    奨励会三段リーグ最終日に劇的な勝利で昇段する。

    秋山太郎
    岡崎の劇的な昇段の陰で、年齢の壁に敗れひっそりと千駄ヶ谷を去っていった。羽生世代。

    成田晢
    成田英二の父。夕張の炭鉱夫として働いていた。

    成田サダ
    成田英二の母。

    浅利
    成田が小学一年生の時に行った北海道将棋会館の席主。

    五十嵐豊一
    八段。札幌出身。成田の師匠。

    関口勝男
    昭和58年の春の人事異動で、将棋連盟道場の主任に赴任。五段。

    花村元司
    九段。関口が内弟子になる。東海の鬼とおそれられていた。

    田川信之
    関口が初段昇格を果たし、二人で笹塚のアパートで同居を始め

    先崎学
    八段。自らを小卒と名乗る。小学3年で米長邦雄の内弟子に入る。水戸の天才少年、略して水戸天と呼ばれる。昭和57年組に飲み込まれる。

    米谷和典
    福島育ちの青年。昭和57年組に飲み込まれる。24歳で奨励会を退会した。

    西森照幸
    札幌出身。成田の弟分。

    加藤昌彦
    小林健二八段門下として関西奨励会に入会。25歳て四段になれず、年齢制限で奨励会を退会する

    江越克将
    第1回世界将棋選手権の優勝者。ブラジル代表。森信雄六段の弟子として奨励会に入会した。6級で入会したものの、これといった成績を一度もあげることができないまま7級で退会となった。

    内山佐和子
    北見のパチンコ屋「フェニックス」に入ったばかりのパートタイマー。成田より5歳上。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.02.19

  • キキ

    キキ

    読み終わった後、感情の整理が出来なかったのですが、落ち着いてきた今感想を書いてみようと思います。
    読んでいる途中で、何度も泣きスポットがありました。
    将棋のプロを目指すべく奨励会に入ったものの、プロになることはできずに奨励会を去っていた瞬間。
    それ以上に胸を熱くさせるのは、奨励会を後にした後にどうやって人生を立て直ししていくかの過程です。
    涙なしには読むことができません。

    成田という一人の男性を中心にストーリーは進みますが、それ以外のかつてはプロを目指していた人についても書かれています。
    奨励会を退会しても将棋を別の世界で続ける者、将棋の世界とは別の世界で生きる者。
    夢破れても人生は続いていきます。
    私は夢が破れるタイミングが悲惨に感じました。
    十代(早いと)、二十代で自分の一生をかけて努力してきたものの結果を突き付けられ、その道を絶たれてしまう。
    普通の人はこれから人生の目的に向かって歩き出そうとしている時期に、人生賭けて目指していたものの道を絶たれてしまうのです。残酷です。

    文中に下記のフレーズがあります。
    ”これまでの人生で、将棋のほかのことは何もしていない。こんな自分が将棋をやめていったい何ができるというのだろう。”(抜粋)

    夢を目指している時には考えもしなかった不安が諦めの気持ちを持ち始めた瞬間に押し寄せてきます。
    人生が狂ってしまうのもわかる気がします。

    しかし、人生賭けて何かを頑張ってきたという事実は消えることはありません。
    それに気づけたときに、人生が開けていきます。
    それは夢を追いかけていた世界では報われなかったのかもしれません。でも、長い目で見るとこの時期があったからこそ、今の自分が存在している。この時期こそが生きる原動力であり、自分の人格を形成している全てであることが理解できると、次のステージに進むことができるのかもしれません。

    成田の言葉に以下のフレーズがありました。
    ”「いや。これだけはさあ。これだけは置いていけなかったんだ。だからポケットにつっこんでさぁ、持ってきたんだ。だって、これがこっちの人生のすべてなんだもの。これがなきゃ、こっち何やってきたのかもわからなくなっちゃう、何も証明できなくなっちゃうもの」”(抜粋)

    訳あって、借金取りから逃げて生活していた成田ですが、逃げる際に母親の写真を置き去りにしても奨励会を退会した時にもらった駒は持ち続けていました。

    奨励会を卒業してプロになれなかった。その一点を見れば「負けた」という事なのかもしれません。しかし、人生は長い。その先もずっと続いていきます。
    目指した世界では勝てなくても、自分の勝てる場所を見つけることは誰にもチャンスが与えられています。
    死にたくなるくらい辛い経験をしても、生きていれば勝てる時がくる。
    たとえ夢破れたとしても、人生を賭けてやりきった先に見えるもの、そこからでないと見えない景色は絶対にあるのだと思います。
    その経験をした人はやっぱり強い。
    そういう人ってGRITっていうのかな?やり抜く力が尋常じゃないと思うんですよね。

    将棋の話というよりは、人生再生の物語といったほうがいいかもしれません。
    個人的には江越のストーリーが好きです。
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    投稿日:2023.10.09

  • あき(ここのか)

    あき(ここのか)

    「成田英二」という人をはじめとする羽生善治と同世代の人間が、夢に敗れながらも奨励会で切磋琢磨した思い出を糧に残りの人生を生きていく物語。
    羽生善治といった「本当にすごい人」ばかりが有名になるが、その裏で多くの人が、実力や運に恵まれず挫折する現実を突きつけられる。
    ノンフィクションならではのままならなさを実感するが、だからこそ勝者の物語よりもむしろ感情移入して読めた。
    続きを読む

    投稿日:2023.09.11

  • けっぴー

    けっぴー

    再読
    2年前『聖の青春』のあとに読んで、比べて物足りなく感じた覚えがある。読む順番が悪かっただけだった。

    21/04/05初読

    投稿日:2023.07.24

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