【感想】樽

F・W・クロフツ, 霜島義明 / 東京創元社
(31件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
5
13
11
1
0
  • 読んで損はない古典ミステリー

    古典の中でもミステリーのオールタイムベスト等でタイトルが挙がる事が多い「樽」ですが、新訳が出た事で改めて読んだ感想はというと、やはり読みやすい。そして、筋がわかっていてもワクワクします。
    港に陸揚げされた樽の中から女性の死体が発見され、英仏の刑事、私立探偵へと視点が移り変わって物語られる捜査の状況は地道なもので、アクロバティックな論理展開が有るわけではありません。しかし、一つずつ明らかになる事実に、先が知りたくなってどんどん読み進んでいきます。
    いろんな推理小説を読んですれっからしになった人には展開がわかってしまうかもしれませんが、1世紀近く読み継がれるだけの魅力があると思います。
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    投稿日:2014.06.09

  • 昔の本格ですね(逆か・・・)

    古典の名作というやつらしいです
    ものすごく上品な本格ミステリーです
    作者は読者にクイズを出している気分満々で、
    要所要所で話を整理してくれ、そしてきっぱり読者へ挑戦する一文があります
    この時代のミステリーを他に知らないのでこれが特殊なことなのか
    わからないのだけど、綾辻先生あたりの本格ブームからしか
    ミステリーを知らない私としては、こんな昔に!と新鮮でした
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    投稿日:2017.04.11

ブクログレビュー

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  • ゆのまる

    ゆのまる

    数日かけてじっくりと読了。
    なんだろう、物語はゆっくり進むし派手な展開もないのですが、それでもぐいぐい引き込まれる面白さがありました。

    手に取ったきっかけは米澤穂信さんの『米澤屋書店』から。10代の頃にご両親から教わった一冊だそうです。
    なんともシンプルなタイトルの『樽』は、パリから運ばれロンドンにたどり着いた樽から(紆余曲折を経て)女性の遺体が発見されるところから始まります。
    捜査線上に容疑者が浮かぶも、ひとつ事実が判明すればまた謎は深まり、まるで揺れ続ける振り子のように「犯人はパリにいる男かロンドンにいる男か?」と、読者をも翻弄し続けます。

    ところでわたくし、この本を読み始めた時点で勘違いをしておりまして……"世界三大倒叙ミステリー"のひとつだと思いこんでいたんですね。
    なので、「冒頭で犯人がわかるのかぁ」なんて思い続けていたものの一向にそういったことはなく、勘違いに気づいたのは終盤のことでした。……『クロフツ発12時30分』も読まないとな。

    閑話休題。
    私がよく読むミステリーには名探偵が登場してきて、警察はなんだかあまり目立たないことが多いのですが、本書はたとえば「警察の捜査で」と一言で済まされてしまうところを実に丁寧に描いてくれます。
    証言をもとに現地を訪れ、身分を偽って聞き込みを続け、容疑者が犯行可能であったかを検証していく……。バンバン賄賂を渡すのと、事あるごとにパリのカフェで休憩したがるのはちょっと笑ってしまいましたが、地道な捜査ぶりが伺えてよかったです。ま、最後は結局探偵にオイシイところを持っていかれてしまうのですが。笑

    二人の容疑者のうち、悪魔のごとき知恵を持つのはどちらなのか?
    私はなぜか、ずっと真犯人でない方がうさんくさいと感じていました。序盤の樽の受け取りが怪しかったからかなぁ。
    うまく言葉で説明できないのですが、これはもう単に「好み」といってしまってよいでしょう。クロフツ、なかなか好きになれそうです……!

    (余談)
    巻末の海道龍一郎さんのエッセイが非常によかったです。少年時代の思い出にふふっとなり、しかしその執念に舌を巻き、シングルモルト・ウヰスキー(表記がまた渋い)になぞられた解説付き。ここまでミステリーを楽しめたら幸せだろうなぁ。
    同じく有栖川有栖さんの解説はミステリーガイドとしても良きですね。
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    投稿日:2024.02.27

  • サイトム

    サイトム

    おもしろかった。超人的な探偵の物語ではなく、地道な捜査を積み上げて不本意な結論に達する刑事たち、弁護士と私立探偵が何とか刑事たちの出した結論を覆そうと試みる。そういうリアリズムが何とも読み応えがあると思う。クロフツは面白い。基本的には輸送中の樽から金貨と死体がみつかり、はじめは樽の追跡、そしてロンドンとパリの共同捜査、弁護側に雇われた探偵のアリバイ崩しという形で物語が進行する。内面描写もよく、リアルな人間が書けていて面白いと思う。続きを読む

    投稿日:2024.01.31

  • えのき

    えのき

    謎を追っていくとまた新たな謎が出てきて、展開が非常にスリリングで面白い。
    ただし、最後まで犯人にやられっぱなし(自殺してしまう)なのが気に入らない。

    投稿日:2023.10.09

  • kemukemu

    kemukemu

    今から100年ほど前のミステリー小説。
    「樽から女性の死体が……」というショッキングな出だしからは想像できないほど、丹念な謎解きのプロセスを描く。

    この物語には、ポアロもホームズも、メグレ警視もいない。
    謎を解いていくのは、普通の真面目な職業人たち。
    しかも、発見者ブロートンは早々に退場し、300ページ近く丹念に捜査していたバーンリー警部とルファルジュ刑事は、最後の100ページで弁護士と探偵に取って代わられ……
    さてさて、いったいこの物語の主役は誰だったのか……。
    そう、最初から一貫して登場する“樽”です。

    時代は、社会を動かす力が人力から化石燃料へ劇的に変わるころ。
    馬車から船や汽車、自動車へ。
    電報から電話へ
    手書きからタイプライターへ
    葉巻からタバコへ
    人々はイギリス=フランス間を日常的に移動し、カフェでコーヒーを飲む。
    やがてこの“樽”も時代の彼方へ消えゆく……。

    二つの大戦間につくられた科学の進歩への期待や、当時の市井の人たちの生活をも思い浮かべることのできる物語でした。
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    投稿日:2023.08.10

  • MO-FU

    MO-FU

    推理小説における"アリバイ崩し"という要素を確立させた、古典的名作。
    今まで読んできたミステリが、天才的な頭脳を持つ変人名探偵が、天才的な推理をして、複雑怪奇な謎を解くのが殆どだったので、本作のような一般的な感性を持つ刑事や探偵が、自分の足を武器に、ひたすら捜査、聞き込みを繰り返し、地道に一歩一歩真相解明に近づくというのは、割と新鮮だった。なんかこういう系は地味〜な印象を持っていたので今まであんまり手に取ろうとは思わなかったのよね...
    実際インパクトは少ないのだけれど、その分堅実に面白かった。
    たまにはこういうリアリズムに溢れたのも良いなぁと思った次第。(でもやっぱりミステリはぶっ飛んでた方が好き♡)



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    投稿日:2023.08.03

  • JINTA(じんた)

    JINTA(じんた)

    シンプルでありながら奥が深い。古典的名作。ミステリファンなら一読の価値あり。鮎川哲也の黒いトランクも合わせて読むとより一層楽しめる。アリバイやトリックが少しわかりずらいが、それでもテンポよく楽しめた。

    投稿日:2023.06.29

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