【感想】魔女とほうきと黒い猫

菊地章太 / 角川ソフィア文庫
(4件のレビュー)

総合評価:

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  • いい魔女も、恐ろしい魔女も

    主に「物語」(童話、民話、戯曲、オペラなど)に登場する魔女の描写から、魔女という存在について考察した本です。著者の好みなのか、とりわけ『魔女の宅急便』ネタが頻出します。
    ドイツの「ホレおばさん」やロシアの「バーバ・ヤガー」の話は初めて知りましたが、どちらも一風変わった魔女で興味深かったです。また、史実としてあった魔女狩りについての記述は、そこに至る歴史的・文化的経緯が説明されていて納得がいきます。
    現代の私たちがフィクションの中の魔法や超能力に憧れるように、昔の人々も薄暗く神秘的なものに惹かれていたんだなあ……と思いました。
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    投稿日:2014.04.24

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  • なな

    なな

    おもしろい。耳馴染みのある赤ずきんちゃんや、眠れる森の姫など、童話やメルヘンが少しずつ紹介されて、今までとちがった目線で読むことで発見がある。物語には、その時代のその土地のものしか出てこない。悪いことも、その時代の困りごと(雹が降ってきて農作物が育たないとか、牛の乳が出てこないとか)である。

    その時代の人々が考えた反社会的なものが魔女に託されている、という。魔女は、困ったときは頼りになる、力のあるものの象徴だけども、同時にその力が恐ろしいと感じていた人々。そういった、かつての時代の精神を読みといていく。キリスト教の布教と、魔女の迫害というのも、おもしろい図式で今までにない見方だった。言われてみれば、キリスト教は父であり、迫害された魔女が女性だったというのは、男女の優位性を位置付けるもののように思われる。

    しかし、魔女が、どこか闇に惹かれてしまう私たちが作り出した存在であるのと同様に、マリアさまという聖母も、キリスト教が押し付けようとしたものではないのに、民衆は強く慕ったという。そこには、やはり母への想いがあるのだろうなあと思う。また、支配するとは言っても民衆の心が離れていってはいけないわけで、利や理屈に走りすぎたりしても人はついてこないのだなあと思った。

    そもそも、民衆の心にあった隅をつつくように宗教というのは生まれるわけで、民衆の気持ちとは切っても切れないものなのかもしれない。
    極端な宗教や思想、政治は、そのものや担い手たちだけのせいにはできず、それを誕生させ成り立たせているというのは、その土地であり人々の想いであるような気がする。魔女なるものを、私たちが心のどこかで求めているのと同じように。

    エピローグでの、日本の魔女考察も面白かった。暗闇がなくなって、静けさがなくなって、魔法が減っていく。でも魔女には知恵がつまっている。今の常識とは違うかもしれないけれど、それを生かすも殺すも、私たちにゆだねられているように思った。
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    投稿日:2019.07.01

  • mimm

    mimm

    魔女と、それに付随する(黒)猫、ほうき、牡山羊たちは、キリスト教の侵攻にしたがって堕とされた神々や土着信仰の姿。古代神の復権で、別の方の著書でも色々読んだことがあるけど、宗教って何なんだろうなぁと眉間にシワが。日本もキリスト教が浸透してたら、日本の神様方も悪魔や魔女として堕とされたのかな。そう考えると必死で防いできた昔の武将さんたち、GJって感じです。これからも多神教でおおらかな日本でありますように。…あれ?続きを読む

    投稿日:2017.12.01

  • 街暗君

    街暗君

    博学な著者による、エッセイ仕立ての魔女なる象徴について。いちいち原著から訳していたり、白黒とはいえ挿絵も豊富なもので、楽しい読み物に違いない。っていうか、魔女の宅急便、好きっすね先生。バディ物ってファウスト博士にまでさかのぼれるんだなー、とも思考の道草。民俗学、神学、心理学に触れて、性に執着する傾向をさっと切り捨てるのは好印象です。生き物は代々に続くのが仕事だもんって。極々良書とします。続きを読む

    投稿日:2015.10.21

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