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高野秀行 / 集英社文芸単行本 (43件のレビュー)
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総合評価:
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2
雪男と幸せを見つけに
「ブータンには未知の生物はいません。でも雪男はいますよ」。 そんな言葉を聞きつけた探検作家・高野秀行は、雪男を求めてブータンの雪山を目指します。 秘境と呼ばれるブータンで幾多の困難に立ち向かって行く…彼ですが、中でも旅人を無理矢理酔い潰す「ツォチャン」という風習は恐ろしい。高山病と二日酔いのダブルパンチに苦しむ姿は痛ましいけれど、小気味良く書かれる体験談には思わず笑ってしまいます。 雪男を求める冒険譚だけでなく、高野の目を通して見つめる「幸福の国 ブータン」の実像も興味深い。 続きを読む
投稿日:2014.05.08
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kuma0504
「未来国家」というよりは「ロストワールド」ブータンだ、とつくづく思う。実際、高野秀行は今回の旅を称して「これは遠野物語的だ」と何度も言い放っている。「遠野」の人たちは昔話をするつもりで話したのではなか…った。みんな「現実(リアリティ)」として喋ったのである。だから、みんな実在の地名と名前で喋っている。ブータンでも例えば「そういえば、つい2日前神隠しに遭った女の子が帰ってきた」という話が普通にドンドン出てくる。普通の民俗学者がこれを読んだら、「もう明日にでもブータンに行きたい!」と思うはずだ。私が未だ大学の常民文化研究会に居た若い20代ならば、きっとそう思ったはずだ。何故ならば、100年前の日本には其処彼処にあったそんな語り手は、現代では絶滅し(かかっ)ているからである。 2010年4月より遡ること数ヶ月前、高野秀行はブータンの農業省の国立生物多様性センターと提携して事前調査を依頼される。しかし、旅行費用は自前で。いくら辺境大好きだからと言って、それはない、と思った途端に彼にキラーワードが囁かれる。 「高野さん、ブータンには雪男(イエティ)がいるんですよ」 村人ではない。政府の高官が言っているのである。 高野秀行は即答する。「行きましょう!」 確かにブータンでは雪男(ミゲ)の話が其処彼処(そこかしこ)に語られる。でも決して映像に入るとか、実在の痕跡を見つけるとか出来ない。つい最近までの体験として語られる、というのは正しく「遠野物語」だ。 それどころか、謎の生物チュレイ(ロバやヤクに似ていて、赤い顔、赤い足の裏、長い前髪)の目撃譚も語られる。政府の役人と共に辺境を旅しながら、高野さんは伝統的な生活もきちんと記録し、人々の信仰、雪男や毒人間、精霊や妖怪も生き生きと伝えられてゆく社会を記録してゆく。 日本を含めたアジアの国々は悉く、近代化によって伝統文化を壊し、高度な教育や医療・福祉を実現し、環境を破壊して、知識人は国家を否定し或いは寄生し歪んで成長してきた。その一方で、ブータンは近代国家のいいところを吸収し、弊害を取り入れまいと意識的に努力しているかのようだ。それが高野さんが「未来国家」という根拠ではある。 ブータン国家論を展開すれば、また長い学術書になってしまう。私たちは「軽い読み物」として、高野秀行版ブータン版遠野物語を読んで「願わくばこれを語りて平地民を戦慄せしめよ(柳田國男)」となることを楽しみたいと思う。 表紙は、影山徹さんが本書のために描いた(と思う)、東京上空に天空の城ラピュタみたいに浮かぶブータンの山々。続きを読む
投稿日:2022.04.12
bangarabingen
SFチックなタイトルですが、ブータンの現地人に取材した紀行文。ブータン人の文化に深く切り込んでいて、今まで触れたことのない価値観はとても面白い。
投稿日:2020.02.03
doissyo
このレビューはネタバレを含みます
下痢で悩まされたり、二日酔いで苦しんだり、なかなか話が聞けなかったり、実際はとんでもなく大変であろう旅程の描写がいちいち面白い。
投稿日:2019.04.14
あこ
すっぴんに高野さんがゲストででてらしたので、どんなかなあっと思って借りてみる。 めっちゃおもしろかった。 これが9年前のことだから、今のブータンはどうなっているんだろう、と思う。 行きたい、とは思わない(なんか移動もたいへそうだし、これといって食べたい、っと思うもんがなかったので)けれど、ここの人たちに会ってみたいなあっとは思う。 生物多様性の研究の下見としては、どうだったんだろう?大丈夫だったのかな? 現金収入をかねた歓迎がウケた。 国がディズニーランドみたいなもん、とゆーのがちょっとなるほどなあっと思った。 その空間そのものが皆が幸せになるようにできている。 すごいなあー。 水戸黄門王様、カッコいいわあ。 二ェップのシステムはいいなあっと思った。 多様な人間と日常的に関わりあうってことは人間力を上げるんだな。 選択肢が少ない方が幸せってゆーのはあるかも。 迷いが人を苦しめる?
投稿日:2019.03.02
にゃんのきちぞう
ブータン国民がなぜ世界一幸せなのか? それは、「ブータン方式」が機能しているからである。 本書の中で触れられているブータン方式は、なかなか、いわゆる先進国と呼ばれる日本のような国では見られないシステ…ムと感じる。 病気一つ直すにも、患者に様々な選択肢が与えられており、病院に通うもホメオパシーのような医療を受けるも自由である。 選ぶ自由があることによって、その選択肢が間違いだったとしても、自分で選んだのだからと自分を責める時もある。 けれど、 ブータン方式は違う。 続きを読む
投稿日:2018.09.30
Kay
筆者のモットーである「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」をまさに体現したようなこの本。 国民総幸福量(Gross National Happiness)がとても…高いとは聞くけれど、でも半鎖国体制を敷いているがために情報が少ない魅惑の国ブータンを自分の足で歩き、 現地の人と積極的に触れ合うことで得たブータンの生(なま)の情報が面白おかしく綴られた良書でした。 僕も含め旅行好きの人にとって、筆者の高野さんがブータンでやったことは読んでいてとてもうらやましく、自分もブータンに行ってみたいという衝動に駆り立てられます。 この本はしかし、単なる面白おかしい旅行記ではなく、ブータンという国の成り立ち、文化、民族、チベットとの関わりなど、高野さんが足で得た情報が多く綴られている他に、生物多様性の問題について切り込んでいる点も興味深かったです。 毎日たくさんの動物や植物が絶滅していく昨今、なぜ多くの種を残すことが重要なのか、なぜブータンという国は種を残す環境として最適で「生物多様性の聖地」とも呼べるのか、そしてそういう環境がどうしてブータン国民に幸福をもたらすのか、その謎に迫っています。 ブータンは、「周回遅れのトップランナー」とも呼ばれているそうです。 世界各国が競うように近代化していく中、鎖国をしていた(いまも半鎖国体制の)ブータンは近代化が遅れたが、環境保全や生物を大切にする思想など独自路線を貫いた。 資源を酷使して近代化した先進国は、今度はロハスだとか環境保全だとか国民の幸福の重要性といった、経済合理性を越えた「最先端の思想」にたどり着いた。 その結果、一周回って、ビリを走っていたブータンに追いついてしまった、という先進国への皮肉を込めた呼び方でもあるそうです。 謎が多い分、魅力的な国ブータン。 この国に興味がある方はぜひ読んでみてください。続きを読む
投稿日:2018.05.08
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