【感想】新版 日本永代蔵 現代語訳付き

井原西鶴, 堀切実 / 角川ソフィア文庫
(7件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
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  • こんな話だったんだぁと、再認識

     古今東西の名作と言われるモノでも、名前だけ知っていてまったく内容を把握していない本ってありますよね。私にとっては、この本もその一つでありました。
     書籍説明にもあるとおり、江戸前期の人々の、金と物欲にまつわる悲喜劇を描く傑作なのでありますが、小説と言うよりも、エッセイの雰囲気かなぁ。様々なエピソードを連作紹介していくというスタイルです。これが江戸時代にベストセラーになったと思うと、感慨深いものがあります。み~んな金持ちに憧れていたんですかねぇ。
     面白いのは、その内容が教訓めいているかというと、そうでもなく、その一方で、家族がちゃんと食べて、生活できるのは、母親の働きであると、この時代に堂々と書いているのも興味深いものがありました。
    また解説に「近代短篇小説を読み慣れた読者からすると、各篇の物語りの進行と構成の仕方には大変戸惑いを感ずるに違いない。」と書いてありましたが、確かにそのとおりで、もどかしい部分もあります。それに、井原西鶴の主張?にも、所々矛盾点があるような気もいたします。それも含めて面白かったです。人間なんて、なかなか一筋縄ではいかないモノです。
     ただ、本のタイトルが、現代語訳付きとありますが、正確には、「日本永代蔵現代語訳 原文と解説付き」とするのがホントだと思います。まず、現代語訳が掲載されていて、その後に、原文と解説がついています。この原文と解説で本の4分の3を占めています。つまり、現代語訳は本全体の4分の1程度だけです。折角詳しい解説がついているのだから、現代語訳と原文と解説を同時に見ることができるようになっていたら良かったのにな、とは思いました。
     さて、なかなか面白い内容である一方、当然、今には通じないこともあります。妙に心に引っかかっているのは、中国人は、心が落ち着いていて、家業にもあくせくせず、風雅な楽しみに興じ、世渡りに無頓着との記述があるところです。江戸前期の知識人は、中国の人をそう評していたのでしょうか?現在では、考えられませんけれどねぇ。
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    投稿日:2016.07.23

ブクログレビュー

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  • ネク

    ネク

    庶民向けの自己啓発本的な内容

    倹約しつつ工夫して本分に励む事が重要と説いている

    本分に関しては町民には芸事は贅沢で余計なものと言ってるところとかは時代を感じる

    貨幣経済が発展してきている時代のためか、投資をしきりに勧めていることが印象深かった続きを読む

    投稿日:2022.01.12

  • sayuri05

    sayuri05

    このレビューはネタバレを含みます

    金銭の貴重さ、みの持ち崩し方、芸事の無益さ、様々な町人の立身出世、栄枯盛衰を描く。三井の話が出てきて驚く。当時の中国人は琴や書、詩に親しみ雅で実直だったとある。

    2代目に破る扇の風
    世は張物
    欲しいものは買わず、惜しいものを売れ

    唐土人は心静かにして、世の稼ぎもいそがず、琴棋詩酒に暮して、秋は月見る浦に出、春は海棠の咲く山を眺め

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    投稿日:2018.04.04

  • nigody25

    nigody25

    まず全6巻(といっても150ページもない)の現代語訳、その後、一篇ごとの原文と解説といった流れ。 庶民のお金にまつわる短編集といった感じ。 全体としてはそんなにおもしろいという内容ではないかな。 今も昔も基本的な考え方は変わらないんじゃないかなと思えたのは良かった。 お金を貯めたければ倹約と勤勉さ。 羽目を外しすぎると転がり落ちるし、かといってケチケチしすぎるのも考えものですね。 バランス大事。続きを読む

    投稿日:2017.11.01

  • yoshidamasakazu

    yoshidamasakazu

    江戸商人の商人道の本だろうが、町人の金銭欲や成功欲を描いた短編集にも読める。井原西鶴は 自身が書きたいものではなく、読み手が読みたいものを書いているのでは ないだろうか


    道徳を前提に 「貯金」「倹約」「勤労」「分相応」「健康」を商人の成功のコツとしており、時代への対応も重視する内容となっている続きを読む

    投稿日:2017.04.21

  • まりも

    まりも

    貨幣経済の浸透し、町人の台頭した元禄文化を代表する井原西鶴の古典。
    成功した長者たちの話を中心に訓戒めいた逸話が多い。掛け金の回収など現代に通じる面もある。ただし、日本の古典は構成が現代文学と大分趣が異なり、すっと理解できないのが難点。続きを読む

    投稿日:2017.02.13

  • kazlab

    kazlab

    江戸時代の商人の成功譚、商売の教訓を描いた言わずと知れた、井原西鶴の浮世草子。
    当時の高度に発展した資本主義、町人の風俗や道徳がわかって面白い。

    例えば、長屋に住んで、質素に暮らして長者になったひとが町で噂になるのだが、強盗に入られないほどに安全な社会なんだな、とか、売掛金はきちんと回収できるもんなんだなとか、とても新鮮な印象を受ける。

    武士道を説く「葉隠」ばかりが着目されるが、江戸の町人のダイナミズムにもっと注目されてもいいと思う。
    続きを読む

    投稿日:2012.10.13

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