【感想】ベイジン(上)

真山仁 / 幻冬舎文庫
(83件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
24
36
16
2
0
  • 中国人の生理をこれほど的確に描いた小説はないかもしれない

    本書のモチーフとなっているのは北京オリンピックと原発。なんといまの日本と似通った話題なのだろうか。この本は、たびたび話題となってきた。まずは発売当時、次は福島第一原発の事故、そして東京オリンピックの決定の時。そして2020年、原発問題にどんな進展が見えているのかわからないけれど、またこの本を肴に話しが再燃しているかもしれない。

    北京オリンピックの開会式で中国が誇る技術と威信をかけた原発稼働を生中継するという、国威発揚や世界への先進国アピールの意味を含んだ、政治パフォーマンスは、かつてのヒトラー時代のドイツを思い起こさせる。

    理解できないとよく言われる中国人の生理や考え方を、当の中国人が褒めるほどにしっかりと描いた小説は少ないのではないか。裏切りと信頼、偏見、粛清、そうしたネガティブな言葉の先にあるのは、著者が最後に残した希望だった。パンドラの箱に残された希望は、どんなかたちで示されるのだろうか。
    続きを読む

    投稿日:2014.01.31

  • すぐ隣の巨人の姿

    仕事をする上で中国はカントリーリスクを考慮してもなお避けては通れない巨大市場であるが、その仕事の様式、国民性、生活習慣などは大きく日本から乖離している。
    本著の、
    「あの国は、狂っているんだ。まともな人間が仕事をする場所じゃない。おまえ、殺されるぞ。そうだ、絶対に殺される!」
    「いいか、田嶋。おまえ、本当に後悔するぞ。俺みたいになるな!」
    これらのセリフから不気味さを感じるのは私だけではないだろう
    続きを読む

    投稿日:2014.01.03

  • 『フクシマ』以前に書かれた仮想原子力発電所クライシス : 面子にこだわる中国での核電危機は人為的か?

    中国:技術力を伴わず面子だけで成立している国家が、2008年北京オリンピック開催と世界最大の原子力発電所・紅陽核電の運転開始を同時に成立させるべく物語は進捗する。中国産100%の原子力発電所を作れない中国は、技術力不足を補うために日本から技術顧問・田嶋を招聘するが、彼の前に様々な問題が降りかかる。地震は無いと言い放った中国側権威の発言とは裏腹に、建設地には2匹もの龍(地震帯)が蠢いている。はたして中国は矛盾を抱えたまま建設を強行し、運転開始までもっていくのか?そして、このリスクは中国のみならず、朝鮮半島・日本を直撃するのか。この小説が書かれたのは東北大震災前であり、あの『フクシマ問題』もなかった。はたして、真山氏は中国を舞台に日本の原子力行政をも批判したかったのだろうか?下巻へ続きを読む

    投稿日:2016.03.30

ブクログレビュー

"powered by"

  • につ

    につ

    このレビューはネタバレを含みます

    感想
    中国の急速な成長、国内格差、都市と地方の差別など様々学べる。

    また、安全絶対の原発にも汚職が蔓延して、実績のない企業を使ったり、本当に中国の原発大丈夫?と心配になる。腐敗と金儲け。安全や人命は二の次。怖気がする。

    あらすじ
    日本の民間の原発技術者である田嶋は、日本でのプロジェクトが暗礁に乗り上げ、北京五輪に合わせて大きな原発を稼働させる技術責任者として赴任する。

    一方、共産党でのし上がろうとする若手の鄧は、共産党員の不正を次々と暴いて地位を上げていた。鄧は突然、紅陽市の副書記として核電の完成と、裏の仕事として紅陽市に蔓延る不正を暴くミッションを与えられる。

    田嶋は赴任後、セメントや鉄筋の質の悪さ、核電の大事な熱交換器が粗悪な材質作られていることを問題視していた。鄧に協力してもらい、金儲けしか頭にない副首相夫人の李をなんとか説得する。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.07

  • highriver

    highriver

    この作品は2008年が舞台なので今から約15年前の設定だが、中国という国の官僚主義、拝金主義、原発の難易度の高さなどはほとんど変わっていないのではないか。変わったのは15年前よりも中国の国際的なステータスが上がった事だろう。
    そういう意味ではこれから先は中国との付き合い方はもっと難しく重要になる。
    この作品はそれらを題材にしながらも、根底には国家を超えた人間同士の信頼関係や絆を築き得るというメッセージが込められている。
    蛇足になるが最後の終わり方は賛否両論あるだろう。私個人はもう少し最後まで書いてほしかった。
    続きを読む

    投稿日:2023.04.21

  • にしど

    にしど

    北京オリンピック前の中国を舞台に原発稼働に向けて奮闘する日本人技師、中国人政治家、中国人女性映画監督の話。
    真山さんの作品には原発をテーマにしたものが多く、本作もフィクションではありますが原発についての学びがあります。続きを読む

    投稿日:2022.09.30

  • RA101E

    RA101E

    2008年の北京が舞台。

    もう忘れてしまった感じがありますが、オリンピックの前で高揚する中国の雰囲気を思い出しながら、そのあと日本で現実になる出来事と合わせてタイムマシンに乗ったかのような感覚が味わえます。

    小説にここまで描かれていたことが、なぜ、簡単に起こってしまったのか。

    喉元を過ぎ、原発に頼っていく「この道しかない」雰囲気になった今、もう一度あのときのことを思い出すのにいい時期なのかもしれません。
    続きを読む

    投稿日:2021.10.18

  • Yukirobbinson

    Yukirobbinson

    北京オリンピックに合わせ運転開始が計画される世界一の規模である原子力発電所建設計画。そこに技術顧問として赴任する田嶋は現地工員と力を合わせ運転準備を進める。
    政治的妨害や権力争い、杜撰な中国人文化を乗り越え無事運転開始を迎えることができるのか。続きを読む

    投稿日:2020.02.01

  • habuko

    habuko

    政治のことも、エネルギーのことも
    このタイミングで読むにはあまりにもリアルな内容。
    丁寧に取材して書かれたこと、
    そしてかなりのボリュームで真実も含まれているであろうことを考えると
    隣国が舞台となったフィクションとは思えません。

    人物の描写もいきいきとしていて、
    ぐいぐいと話に引き込まれます。
    壮大なテーマのドキュメンタリーのようです。
    続きを読む

    投稿日:2019.09.26

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。