【感想】物語 朝鮮王朝の滅亡

金重明 / 岩波新書
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
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  • 学者たちの生き様

    「腐敗した王朝」、「日本の侵略」、うらみつらみ。タイトルからイメージするのはこうしたものだろうか。
    だが、手に取ってみるとちょっと違った。まず、著者の姿勢はこのようなものである。

    わたしの両親は朝鮮半島の生まれで、わたしはいわゆる在日二世にあたる。
    しかしわたしには「愛国心」なるものはかけらもない。愛国心は近代に生まれた迷妄であると確信しているからである。

    ちなみに、著者は小説家である。岩波新書とはいえ、小説家が「愛国心」を全否定して、何をものがたりたいのか。次のように言う。

    わたしは歴史を語る場合、民族ではなく、つねに歴史の中で虐げられた人々によりそっていきたいと考えている。

    とのこと。これは著者も言うとおり、司馬遷の姿勢に近い。

    では、具体的に、朝鮮王朝が滅亡に向かう時代を舞台に、どのような人を主に扱っているのか。
    これが結構意外だったのだが、「学者」である。
    しかも、王朝が是とした朱子学ではなく、それに叛旗を翻した実学者たちである。
    実学とは何か、狭義には科学技術である。
    が、もう少し言うと「役に立たない学問は死んだ学問である」とするようなまさに「実」の学問だ。

    ただ役に立つものであればいいというわけではない。
    「実心」つまり、誠の学、真実の学であるかをみずから厳しく問い続ける姿勢がなければならない。

    さて、こうした人々は、何を目指したのだろう?
    そしてどんな人生を送ったのだろう?

    あくまで小説家がざっくりと書いたものなので、
    本書から得られた知識だけに甘んじるのはいかがなものかとは思うが、
    朝鮮王朝末期の学問、という切り口は貴重。
    もう少しいろいろな本を読んでみたくなる。
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    投稿日:2014.09.22

ブクログレビュー

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  • yoshio2018

    yoshio2018

    1392年、李成桂によって朝鮮王朝は始まった。この本は近代資本主義が東アジアを飲み込んでいく過程で朝鮮王朝が巻き込まれ滅亡していく過程を描いている。時代は、党争を抑え王権を確立しようとした英祖と正祖から始まる。儒教国家と言われた朝鮮王朝だが、儒学と実学の戦いでもあった。実学派が勝っていたらば、どのような歴史になっていただろうか。読んでいて日本がこの半島になした出来事に胸が痛い。我々日本人はあまりにもこの歴史を知らなすぎるのだろう。いや知らせない力が働いているのだろうか。それもますます強くなって。最後に申采浩の「朝鮮革命宣言」の全文が載せられている。続きを読む

    投稿日:2019.01.28

  • itomona

    itomona

    幕末日本の開国にあたって、多くの人物が様々に考え行動したことは多くの日本人が知るところであるが、同じように開国を迫られた朝鮮王朝支配下の人々はどうだったのか。この本を読めば、日本同様、様々な人物が様々に考え行動していたことがわかる。福沢の脱亜論の是非を論ずるにも、まず、こうした歴史を学ぶ必要があると感じた。続きを読む

    投稿日:2016.08.03

  • H.Sato

    H.Sato

    イエズス会はとりわけ東方伝道に注力した。
    イエズス会は儒教的な祭礼を認めたが、典礼論争後、ローマ法王はそれらを迷信として排撃するという立場を鮮明にした。
    日本には蘭学の伝統があった。朝鮮にはそういう西洋の学問の研究の素地がなかった。続きを読む

    投稿日:2014.04.27

  • unzarist

    unzarist

    朝鮮王朝末期の18世紀より韓国併合までを
    学者や外交の視点から解説する一冊。
    同岩波新書の「近代朝鮮と日本」と重複する内容が多く、
    総じて他書の方が記載がていねいでわかりよいと感じた。
    その一方で朝鮮において19世紀前半の西洋科学技術受容の空白が
    朝鮮の遅れを招いたという観点は面白い。
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    投稿日:2014.01.05

  • タカギ

    タカギ

    控えめに「物語」をつけているだけでしょうね。
    著者のあとがきで言われているように、歴史に忠実であることを心がけておられるようですし、決して架空をでっちあげた「物語」ではないです。
    日本史は日本の文科省中心の教科書でしか勉強してこない日本人ですから、近隣諸国の歴史観、視座で眺めるのは新鮮です。
    確かに、日本批判につながることになるし、竹島、尖閣にしても、結論的に「日本のものでない」と結論付けられてもいるし・・・・。
    だから「違う」とも思わない。
    たぶん・・・・、日本側に大いに問題があるのだろう・・・という気持ちにさせられていく。
    とくに、歴史認識については、著者も言うようにかなりな溝がある。
    この溝が埋められる日は来るのでしょうか。
    続きを読む

    投稿日:2013.09.23

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