【感想】フロスト日和

R・D・ウィングフィールド, 芹澤恵 / 創元推理文庫
(64件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
34
24
3
1
0
  • 「帰ろう、坊や。今夜はもう、お釣りがくるほど働いた」

    フロスト警部の愉快で下品な冗談の影で見過ごされてしまいそうだが、作者の巧緻な物語の組み立てに舌を巻く。
    読者は毎回、新入りと同じ視点から、フロストという案内人を従えて、デントンの町を探訪することになる
    「何だ、誰かと思ったらお前か」と、犯罪者を含め出会う人すべてフロストの顔見知り。
    行き当たりばったりの彼とは違い、ライバルであるアレン警部は、秩序と段取りに五月蝿く、上司であるマレット署長は、自惚れの強い俗物でいつもいがみ合っている。
    難解な事件も、犯人との頭脳バトルもなく、ただどでかいツキ頼みの捜査だが、謎解きは意外に複雑で精緻。

    「度しがたい間抜けに、くそにも劣る能無しときた」フロストはドースンのことばを繰り返した。「だが、あいつの言うことは正しい。おれはまさにそのとおりの人間だもの」。

    下卑た笑いの合間に、時折見せる反省や、亡くなった妻への密やかな思慕など、新入りウェブスターの目を通して、多面的で人間臭い姿を目にすることになる。
    十字勲章など英雄的な側面も、書類仕事に逃げ回るだらしない一面も、最後に「帰ろう、坊や。今夜はもう、お釣りがくるほど働いた」との言葉で、すべてが癒される。
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    投稿日:2016.09.03

  • 愛すべき警部

    フロストの適当さに目を奪われがちだけど、結構重いことも含まれてるよね。
    それがさらりとしているのがこのシリーズのいいところなんだと思う。
    やっぱりフロストは愛すべきキャラだ。

    投稿日:2013.12.23

  • ひきこまれてしまいます

    二冊目ですがおもしろいですね。ひきこまれてしまい家事のじゃまになります。しなければならないことがあるのについ手をだしてしまいます。もう三冊目購入しようとしている自分がいます。フロスト警部の人柄人間性にひかれます。身近にいると困りもので迷惑だけれど上司や同僚のいかりはよくわかるけれどそれは小説なので~次々に事件が起きめまぐるしいですがよくできています。何かを忘れたいとき現実逃避したいときなどうってつけの本です。おもしろかったですよ続きを読む

    投稿日:2015.04.05

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  • ぐっち

    ぐっち

    このレビューはネタバレを含みます

    娘(10代)行方不明→森の中で婦女暴行→被害者が30才越えのストリッパーとわかる→議員の息子、ストリップ劇場に強盗→議員息子、強盗の間に恋人に自分の車乗らせてアリバイ工作→議員息子の恋人、轢き逃げ→轢き逃げばれたくないので2人で口裏合わせて車盗まれたことにする→嘘(恋人の轢き逃げを隠したこと)がばれて逮捕されそうになるけど親の力(死んだ警官の遺族に金銭的支援すると約束)でなかったことにする→劇場強盗翌日に議員息子の口座に大金入金(劇場オーナーからの借金を返済するために書いた小切手が不渡にならないようにするため)されたことがわかる→強盗の罪認めさせて逮捕

    婦女暴行の犯人捕まえるためねずみ取り作戦無許可で実行→犯人取り逃がすが、逃走中に落とした鍵を入手→無許可で危険な捜査実行した罰として担当外されどうでもよさそうな空き巣事件回される→空き巣にしては不可解(何も盗られてない、目撃者の庭わざわざ横切って逆隣の家の塀?扉?壊して逃げ込む)→鍵無くして家入れないから空き巣の仕業ってことにして無理やり扉壊して帰宅した婦女暴行の犯人だった

    空き巣に入りソヴリン金貨盗む→息子、金貨半分盗み麻薬取引→公衆トイレで殺される→警官、不倫相手に会いに行くために近くの公衆トイレ前に車停めて死体見つける→別の警官、妻の不倫に気づき、相手の警官殺す→宝石強盗の犯人に罪着せるため証拠偽装→宝石強盗の犯人、警官殺しはやってないと怒って立てこもり→フロストが中に入り、銃に弾は入ってないと教えてもらう→寝取られ警官、フロストが撃たれると思って狙撃、犯人死亡→警官殺しの件がフロストに見抜かれてたと知り、自首

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    投稿日:2023.06.25

  • kamiyajin

    kamiyajin

    クリスマスのフロストに続いて2作目。
    700ページを超える長さだが、全く飽きることなく、読むことができた。
    長編だと、途中で残りのページの厚さを見ては、まだこんなにあるのか、、、と辟易することがある。
    だが、本作の場合は、まだまだこんなにフロストの世界を堪能できる!と思えるのだ。
    たくさんの事件が、矢継ぎ早に発生し、フロストはその都度、場当たり的に対応していく。普通これだけの事件が並列的に描かれたら、読者の頭はこんがらがるのではないかと思うが、それは、大丈夫。
    いろんな事実が、絡んでいたり、偶然など、ご都合主義的と感じざるをえない部分もあるが、それを承知でも、充分楽しめた。

    ちなみに、前回フロストの相棒だったクライヴはいなくなり、代わりに、元警部の短気なウェブスター巡査とのコンビになった。
    クライヴが消えたのは寂しいけど、ウェブスターのキャラもとても魅力的で良かった。

    3冊目もすぐに読みたくなった!
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    投稿日:2023.06.11

  • xan8823

    xan8823

    このレビューはネタバレを含みます

    分厚い

    確かに、下品だし、小汚いし、いい加減だし、運任せだし、
    上からは疎まれてるかもしれないけれど、
    同僚や、町の住人から絶大(?)な信頼がある、フロスト警部

    今回は、プレイブリッジから降格人事で移動してきた新人連れて、様々な事件の捜査に向かいます。
    相変わらず、デントンは、色んな事件がまとめて起こる訳です。次から次へと。

    フロスト警部は、目が利く。
    よく見てる。
    ただ、見たことが、どういう事に繋がるのか、気になってるのに、マレットが上からぎゃーぎゃー言ってくるわ、事件があちこちで起こって呼び出されるわで、検討する暇がなかなかなくて、気づいた時には大事になってたりするのが可哀想。 気になった時に熟考する時間があればねぇ・・・と思ったものの、いやいや、フロスト警部の事だもの、そんな時間あったら、違う事してるわ。
    結局、時間あってもなくても一緒か!
    って、まるで自分のことのよう・・・

    嫌な事、面倒くさいことは、全部やらされて、
    美味しいとこだけさらわれたりするけれど、
    別に、名声をあげたいわけじゃない彼は、仕事を引き受けてくれるなら、どうぞどうぞと、手柄も人にあげちゃうし。

    事件が起きて、住人に訊き込みにいくけど、マレットが好きそうな相手以外の住人の事は、良く知っていて、相手もフロストを信頼してる。
    実際、アレン警部やマレット署長なんかより、ずーっと信頼できる。だって、相手の事ちゃんと考えてるもん。
    まぁ、直属で、ずーっと一緒だと、下品だったり親父ギャグだったり付き合うの大変かもしれんけど、人間としては、ヤツらよりよっぽど尊敬できると思う。

    ユースタスの件で、イングラム刑事と話するとこなんか、本当に、良い上司だよなぁと目頭が熱くなりました。
    こっそり聞いてたウェブスターも、フロストの事、毛嫌いしてたけど、このとき、彼が署のみんなから信頼されてる意味わかったよね。良いシーンでした。
    悲しい事件だったけれど。

    色んな事件が巻き起こったけど、全て解決。
    でも、また、彼には、次の事件が待っている。
    負けるなフロスト警部。

    そういや、前巻での新人、警察庁のおいっこ、クライブ君は、今何してんですかね。

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    投稿日:2023.04.04

  • じゅう

    じゅう

    イギリスの作家「R・D・ウィングフィールド」の長篇ミステリ作品『フロスト日和(原題:A Touch of Frost)』を読みました。

    『東西ミステリーベスト100』で海外篇の65位として紹介されていた作品、、、

    『クリスマスのフロスト』に続き、「R・D・ウィングフィールド」作品です。

    -----story-------------
    肌寒い秋の季節。
    デントンの町では連続婦女暴行魔が跳梁し、公衆便所には浮浪者の死体が転がる。
    なに、これはまだ序の口で……。
    皆から無能とそしられながら、名物警部「フロスト」の不眠不休の奮戦と、推理の乱れ撃ちはつづく。
    中間管理職に、春の日和は訪れるのだろうか? 
    笑いも緊張も堪能できる、まさに得難い個性。
    『クリスマスのフロスト』につづく第2弾! 
    解説=「温水ゆかり」

    *英国ITVで1992年よりTVドラマ・シリーズ化

    *第1位『このミステリーがすごい! 1998年版』海外編ベスト10
    *第2位『週刊文春』1997年ミステリーベスト10/海外部門
    -----------------------

    1987年(昭和62年)に発表された作品で、イギリスの架空の地方都市デントン市を舞台にした警察小説、「ジャック・フロスト警部」シリーズの第2作目にあたる作品です… 前作は500ページ超でしたが、今回はなんと700ページ超の大作だったので了まで一週間程度かかりましたね、、、

    前作同様に「フロスト警部」が次々と起こる難事件に中途半端に首を突っ込んで、にっちもさっちもいかなくなりながらも、なんとか解決に持ち込んでいくという展開で、「フロスト警部」の奮闘が実を結び、難事件が解決される終盤は一気読み、スッキリする展開でした… 「フロスト警部」の人柄・生き様に魅了されましたね。


    デントン警察署の2階の食堂では退職する警官のパーティが開かれていて、暖かい空気と熱気に包まれていた… 非番の警官達が陽気に飲み食いする中、「フロスト警部」や「ビル・ウェルズ巡査部長」、「デイヴィッド・シェルビー巡査」等は貧乏クジを引かされ勤務についていた、、、

    そんな中、パトロール中の「シェルビー巡査」が公衆便所に浮かんだ浮浪者の死体を発見する… さっさと仕事を片付けてパーティに乱入しようとしていた「フロスト警部」は、いやいやながら捜査に赴く。

    その後は、森での連続婦女暴行事件、老人の轢き逃げ事件、失踪した少女の捜索、ストリップバーの現金強盗事件、老女宅でのソヴリン金貨79枚の盗難事件、質屋への押しこみ強盗事件、警官殺し事件等々、種々雑多な事件や犯罪を時間差で追いかけるという相変わらずの展開… 「マレット署長」を激怒させようが、「アレン警部」と仲違いしようが、「フロスト警部」は、上司を殴り警部から巡査に降格となった「マーティン・ウェブスター巡査」を伴い、直感に基づく捜査方法を貫いていく、、、

    捜査は錯綜し、混乱を極めて迷走の一途を辿るが… 一見、無関係に思えた事件が微妙にリンクし、連鎖することで、一気に解決していく展開が心地良いですね。

    「フロスト警部」が、警官殺し事件を解決する現場を目にした「ウェブスター巡査」は、きっと「フロスト警部」のことを見直し、警察官としての在り方を見つめ直すことができたんじゃないかな… 組織の一員でありながら、効率、規律一辺倒のシステムを無視して身の丈の勝手さで生きる「フロスト警部」に共感を覚えますよねぇ、、、

    町の無名の人々や小悪党と知りあいであることをうかがわせる雰囲気もイイ感じです… 「フロスト警部」は彼らを見守り、気遣っているんですよねぇ、殉死した若い警官「シェルビー巡査」の身重の妻等への対応でひょっこり顔を出す独特の優しさ、生活弱者に対する優しい対応が印象的ですね。

    日本人の好きな義理と人情を感じさせるところがイイんでしょうね… 「フロスト警部」のことを、さらに好きになりました。




    以下、主な登場人物です。

    「ジャック・フロスト」
     警部。主人公

    「アレン」
     警部

    「ヴィク・イングラム」
     部長刑事

    「ビル・ウェルズ」
     巡査部長

    「ジョニー・ジョンスン」
     巡査部長

    「デイヴィッド(デイヴ)・シェルビー」
     巡査

    「リドリー」
     巡査

    「マーティン・ウェブスター」
     巡査

    「スーザン(スー)・ハーヴェイ」
     巡査

    「マレット」
     警視。署長

    「アイダ・スミス」
     マレットの秘書

    「スロウモン」
     警察医

    「ベン・コーニッシュ」
     浮浪者

    「コーニッシュ婦人」
     ベンの母

    「ダニー・コーニッシュ」
     ベンの弟

    「ウォリー・ピーターズ」
     浮浪者

    「アルバート・ヒックマン」
     轢き逃げの被害者

    「マックス・ドースン」
     事業家

    「クレア・ドースン」
     マックスの妻

    「カレン・ドースン」
     ドースン夫妻の娘

    「デビー・テイラー」
     カレンの友人

    「ハリー・バスキン」
     《ココナツ・グローヴ》の主

    「トム(トミー)・クロル」
     《ココナツ・グローヴ》の用心棒

    「バート・ハリス」
     《ココナツ・グローヴ》の用心棒

    「ポーラ・グレイ」
     ストリッパー

    「チャールズ・ミラー卿」
     下院議員

    「ロジャー・ミラー」
     チャールズの息子

    「ジェラルド・ムーア」
     ロジャーの弁護士

    「ジュリー・キング」
     ロジャーの恋人

    「リル・ケアリー」
     金貸し

    「サミー・グリックマン」
     質屋

    「スタンリー(スタン)・ユースタス」
     こそ泥

    「セイディ・ユースタス」
     スタンリーの妻

    「ウェンディ・レイナー」
     パートタイムの店員

    「テリー・ダガン」
     ウェンディのボーイ・フレンド

    「デズモンド・ソーリー」
     廃棄された客車の住人

    「ジャドボルト婦人」
     押し込みの被害者

    「チャールズ・プライス」
     ジャドボルト婦人の隣人
    続きを読む

    投稿日:2023.02.15

  • mysterymanbo

    mysterymanbo

    シリーズ2作目となる本作は、ケンカが原因で左遷されてきたウェブスター巡査との絡みを軸に展開されるが、ラストでは不覚にも泣ける演出が憎い。いつも要領が悪くてドジなフロスト警部のことを内心小ばかにして「フロスト警部」と呼んだことがなかったウェブスター巡査が初めてフロスト警部の信望の厚さ(上司以外から)を知ることになるその出来事とは・・安定の面白さは「このミス1997年度1位」に選ばれていることでも証明済み。続きを読む

    投稿日:2022.06.25

  • kazubook21613

    kazubook21613

    少し甘いが☆五つ!

    なんとも人情味溢れるフロスト。憎めないキャラですね。自分もこういう人間になりたいと思うが、ここまで懐深くはなれないですね。

    物語の方は、これでもかというくらい盛りだくさんに突発的にいろんなことが起こるが、どれも見事に回収される。
    フロストじゃなければ、後味悪くなりかねないが、その人柄が事件に救いをもたらしている。

    それにしても、イギリスの警官ってこんなに忙しいんですか。ブラック企業なんてもんじゃないですね。志がなければ務まりませんね。
    続きを読む

    投稿日:2021.12.26

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