【感想】心臓に毛が生えている理由

米原万里 / 角川文庫
(34件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
12
12
7
1
0
  • 日本人でありながら外国人

    著者の米原万里は日本人だが、親の仕事の都合で幼少時長期間プラハ(チェコ)にて過ごしていた。
    当時は共産主義体制全開なので、当然学校に行くといってもソヴェト学校で、学校内ではロシア語が公用語。
    その結果、長じてロシア語同時通訳という職を得る事になるのだが。
    そのロシア事情の通暁ぶりは、外務省在籍時にロシア通として通っていた佐藤優すら驚くほどである(政治的観点から捉える佐藤に対し、生活者視点を確実に押さえていく米原)事は、著者の名著「嘘つきアーニャ~」の解説でも触れられている。
    反面、当人は日本語で書く自分の文章に満足できていない事が本書で触れられている。ネイティブなら自然な崩し方を当たり前にしている所で、非常に綺麗な・丁寧な書き方をしてしまう所が、所謂「よく勉強した外国人」的になっていると感じているようで。
    だが、それが逆に良かったのではないだろうか。
    当たり前の日本人の視点とは違う、ロシア人・プラハっ子的視点で世界を捉える事ができる点が、著者の大きな魅力であるのも事実だが、日本語は崩し方に慣れてしまうとすぐ情に流されたウェットな文体になってしまうように思う。そのウェットな文体では、「嘘つきアーニャ~」のような、心にジワジワと染みこんでいくような感銘が出て来ないのではなかろうか。

    そんな著者の日々のエッセイ。「嘘つきアーニャ~」執筆の裏話なども掲載されており、楽しく読了させて貰った。
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    投稿日:2013.11.04

ブクログレビュー

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  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    2023年3月13日
    「『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』の著者が、ロシア語通訳として活躍しながら考えたこと、在プラハ・ソビエト学校時代に得たもの、日本人のアイデンティティなど、言葉や文化に対する深い洞察を痛快な文章で綴る。」続きを読む

    投稿日:2023.09.26

  • つき

    つき

    解説でも触れられていたが…
    地続きに近隣国がある国の人たちの、国や民族に対する考え方は、純日本人には一生分からないんだろうな。と思ってる。

    投稿日:2023.03.27

  • 門哉彗遥

    門哉彗遥

    誰かがFacebookに書いたようなライトでブツ切りのエッセイからかなり硬派な内容のものまでバラエティに富んでいたが、著者の性格が表れているのか、サバサバとした男前なものが多く、また思わず声を出して笑ってしまったものも多々あった。一番最初のオホーツクでの話は、思わず地図で確認しながら読み始めたけど、結局言いたいところはそこではないのかと、肩透かし的で逆に印象に残ってしまった。続きを読む

    投稿日:2022.12.31

  • 苗

    このところのロシアを見ていて、著者の本がたまらなく読みなくなり手に取りました。

    ソビエト、東欧にフォーカスした著者の目線は、今まで知らなかった世界への目を開かせてくれます。

    著者の快活なエネルギッシュさを感じる、歯切れの良い文章にも元気をもらえます。

    久しぶりに「嘘つきアーニャ」と、「オリガ」も読み返してみようかな。著者が今も生きていたら、今のロシアをどう見るのかな。早逝が惜しまれます。
    続きを読む

    投稿日:2022.07.07

  • りさきゃん

    りさきゃん

    以下、好きなエピソード。

    * ナポレオンの愛した料理人
    * 言い換えの美学
    * 曖昧の効用
    * 心臓に毛が生えている理由
    * あけおめ&ことよろ
    * 読書にもTPO
    * 何て呼びかけてますか?
    * 記憶力と年賀状続きを読む

    投稿日:2022.01.30

  • sagami246

    sagami246

    このエッセイ集の文庫版は、2011年に角川から発行されたもの。もともとは、同じく角川から2008年に単行本で発行されたものを文庫化したものである。色々な新聞、例えば、読売新聞、日経新聞、神戸新聞、朝日新聞や、その他、雑誌に連載されたり掲載されたりしたものを1冊にまとめたもの。米原万里さんが亡くなられたのは、2006年5月のことなので、死後の発行ということになる。

    いくつも印象に残ったエッセイがあった。「ドラゴン・アレクサンドラの尋問」は、印象に残ったものの1つである。
    米原さんはお父様のお仕事の都合で、プラハのソビエト学校に小学校2年生から通われている。授業はロシア語で行われるし、学校の公式言語はロシア語だ。米原さんはソビエト学校に入るまでは日本の小学校に通っておられ、ロシア語が出来るわけではない。アレクサンドラ先生は、ソビエト学校の先生。学校の図書館で本を借りると返却の際に、その本の内容を要約させられる、もちろん、ロシア語の本をロシア語で要約する必要がある。その要約をアレクサンドラ先生が厳しくチェックする、まるで尋問のように。
    レベルも内容も違うが、私も英語の個人レッスンをイギリス人の先生について受けていた時に、同じようなことを経験した。英字新聞の中から1つ記事を選び、それを要約して先生に説明するのであるが、「新聞で使われている単語は原則として使用禁止、要するに全ての単語を別の単語に言い換える必要がある」という厳しい条件がつくのである。このレッスンが毎週数回、数か月に渡って続いた。やっている時には、とても大変だったけれども、これほど役に立ったレッスンはなかった。英語を理解することと、自分の理解を表現すること、これが出来ないと会話が成立しない。その訓練を個人レッスンとして受けることが出来ていたのだ。米原さんはそれを、まだ小学生低学年のうちから練習させられているわけで、随分とロシア語の上達には役に立ったのだろうな、と思った。
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    投稿日:2021.10.02

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