【感想】誰のために法は生まれた

木庭顕 / 朝日出版社
(20件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
7
5
3
1
0
  • 目から鱗の、法律!

    法は、必要悪かと思っていたのですが、そうではないのですね! すごく感動しました。法が悪いのではなく、それを正しく使用すれば、個々の人が助けられる。徒党を組み、自分たちの利益を謀る連中から、個々の人を守る。是非、法に、本来の力を取り戻して欲しい、と切に、思いました。読みやすいので、ぜひ、一読を。続きを読む

    投稿日:2019.03.11

ブクログレビュー

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  • ちょこ兵士

    ちょこ兵士

    「なんかよく分からないけれどここには大切なことが書いてある」と感じる本。
    そんな本に20代のころにはよく出会ったように思う。
    そしてなんだか訳の分からないままに読み進めて、運がよければそれを仲間と語り合って、何か掴みかけたような気がする手がかりを確かな手ざわりのある論理に変えていく。
    そんな経験が昔はしばしばあったように思う。

    それは馬齢を重ねるなかで、それなりにまあ分かることも増えてきたからということもあるだろけれど、「分からない」中に希望や期待を見出すことができる頭や精神の柔らかさが、それこそ馬齢を重ねた結果失われたためだろう。

    そして久しぶりに出会ったのがこの本である。
    「なんかよく分からないけれどここには大切なことが書いてある」と感じて読み進める感覚。
    まだまだ私の頭や精神にも柔らかい部分があったんだと思うと、それだけで嬉しい。

    内容は「法」や「政治」の本質に迫ろうとするもの。
    「法」を相手にずっと研究に取り組んできた老教授が、古典文学テクストを手がかりに、中高生を相手にしながら、その核心へと迫っていく。
    とてもエキサイティングでスリリングだ。でも老教授が何十年の相手にしてようやく至った「法」の核心を語ろうとするのであるから、当然それはすっと飲み込めるような軽いものではない。
    ただどうしても食べたくなる。本書の言葉で言えば「こっちの水はあ~まいぞ」という声が聞こえてくるからだ。
    そうした声に誘われるようにふらふらと最終章まで読み進めると、それでもなんか大切なことのいったんには触れられた安心感がある。
    もちろんそれはかりそめの安心感にすぎない。
    十牛図(禅)で言えば「見跡」「見牛」くらいの段階だろう。でもそれでも大切なプロセスの最初の一歩、二歩分くらいは進んだと言えるのではないかと思う。

    だから本書の相手も中高生なのだろう。
    ここからは一人一人が「悟り」に向けてその歩みを進めていくことが期待されている。
    ぜひ若者たちにはそうした道を歩んでもらいたいと思う。

    同時に「おっさん」になったことを免罪符にしてはいけないのだろう。そんなことを痛切に反省させられる一冊になりました。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.22

  • こん

    こん

    再読する。
    人権とは、もともと何もないところから何かを生み出す「権利」ではなく今あるものを守るための「占有」だということ。
    誰のために、それは、徒党に対する個人のために。
    数々の古典を読み込み、最後に出てきた自衛官合祀事件の受け止め方は、判例集を見て、「他人の信仰に基づく行為に対して、自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請している」という部分を頷きながら読んで済ましていた自分に強烈な反省を促すものだった。続きを読む

    投稿日:2022.01.05

  • wada

    wada

    対話形式で書かれており読み易いけども、内容は結構難しい、、
    何かをスッキリ理解させてくれる本というより、法や政治のような世の中の仕組みに対する興味関心を大いに沸かせてくれる、文学が持つ力を見せつけてくれるような本だ。中高生の頃にこんな本に出会えていたらな〜続きを読む

    投稿日:2022.01.02

  • 勇気の花

    勇気の花

    2021/06/16 22:30
    結局、ツタヤで見かけて悩んで悩んで結局買ってから読み終わるまで一年間かかったんだな。
    積読もいい加減にしないとだけど、
    買って、そして読んで良かったと思う。この著者は初めてだし、法というが、政治システムを、ギリシャ神話から近松、そして最高裁判例まで使って、桐蔭学園の中2から高3までの生徒たちそして教師も参加した座談会形式で、突き詰めていく。
    占有とはそういう意味だったのか‼︎とまた得難い話を聞かせてもらった感で、全編通じて楽しかった。
    とまあ、素直な感想ではあるけれど、実際にはそんなに分かってないんだけどな。
    著者が、この本で教材にしたものはあらすじだけではなく、実際に読んで、観て欲しいと言っていたのだが、まずはカミさんが借りてきてくれた自転車泥棒を観よう。
    続きを読む

    投稿日:2021.06.16

  • ハイジ

    ハイジ

    このタイトルだけではなかなか読む気になれない(笑)

    きっかけはとても気に入った著書「絵を見る技術 名画の構造を読み解く」の著者秋田麻早子さんのブログで絶賛・紹介されていたからだ
    かなり前のことなので内容も覚えていないが、興味深くぜひ読んでみたいと思いずいぶん前に入手しており、ようやく着手できた

    映画や戯曲を観たあと、法学教師がカジュアルに中高生と問答する

    最初にあらすじがあり、そこから生徒との対話形式で紐解かれるため、非常に読みやすい
    しかしながら内容は深いため、なかなか考えさせられるのだ!うーむ


    ■「近松物語」
    ここでは「グルになった集団を解体する」、「グルになった集団に対抗する」ために法はあることが学べる
    ・追い詰められた一人の人に肩入れする
    ・意外にも…頭を動かすより、直感と感じることが大切
     その人の苦痛に共感する想像力
     これがないと何が問題かつかめない
     そういう問題を感じ取る力のために古典が有効
     
    ■「自転車泥棒」
    (有名な映画ですね 残念ながら観ておらず…)
    舞台はイタリア
    貧しい親子のなかなか救いのない話だ
    ここでは「占有」の大切さ優位性について学べる、「所有」とは違う
    ある人がある物に関わっている
    その物に高い質がある方が勝ち、とても良い状態で保持している
    つまり人から盗んだ物は占有にはならない
    例)土地の占有と所有
    占有:環境や住む人たちも大事にしてそれに相応しいきれいなものを建てるような土地の持ち主
    所有:とても閑静な住宅地に、ここは俺の土地だから勝手だ!とケバケバしいビルや風俗店を建てる


    ■プラウトゥス(ローマの喜劇作家)
    こちらでは「カシーナ」と「ルデンス」が取り上げられている
    軽く「カシーナ」を紹介
    今でいうパワハラ、セクハラの世界で権力とセコくて見え透いたテクニックを使って、おっさんが若い女性をモノにしようというゲスな話である
    これをドタバタ劇みたいな感じで最後は面白おかしくハッピーエンドだ

    ここでは本来の政治について学べる…
    (ここでの)政治とは→権力を排除し、個人の自由を守るためにある仕組み
    まず法があって、一旦ブロックする(個人を守るために)そうしてから、ゆっくり政治、つまり裁判で正義を追求する
    「カシーナ」でいえば、権力があるからってゲスなことをしてもちゃんと最後は成敗されるのだーということを、より具体的に知的に説明してもらえる
    古典の力の凄さも教えてくださる
    人間の歴史の土台を作ってきたものだから古典は素晴らしいという
    古典を土台に社会が動いているとのこと(これは法律以外でも感じることだ)


    ■ソフォクレス(ギリシャの悲劇詩人 ソプクレスとも オイディプス王の作者)
    こちらでは「アンティゴネー」、「フィロクテーテース」を取り上げる

    ソフォクレスはデモクラシーの問題を取り扱っている
    デモクラシーは政治がもっと高度になったもののはずなのに、いつの間にか友と敵だの利益だのという発想になっていて、原点を忘れているんじゃないか…という角度から切り込んでいる

    そのために必要な原理
    ・連帯が大事
    ・完全なる孤独の一人となる
    一見、矛盾しているようにも思えるが、以下のような説明がある
    個人を一層自由にし、皆で連帯してボスと集団を解体するぞ、という自由ばかりでなく、一人一人が自分の幸福を追求する自由というものをもたらす
    ややこしいが、たとえ他人がどんなに迷惑を思おうとも、その人が自分の幸福を追求している以上は喜んで許す
    もっと集団から遠くなったように思えるが、みんなが応援団のようになるので結果的には集団を生み出す
    集団が個人を犠牲にしていくのを批判する
    完全なる孤立した1人が連帯すること
    これが、本物の連帯とのこと

    さらに「フィロクテーテース」になると「連帯」+「かけがえのないものを承認」となり、さらに上をいく
    追い詰められた個人を排除すると結果社会全体が破滅だという教訓になっている

    ギリシャ人たちは言葉の自由をとことん追求
    実際言葉の自由が、どうしたら社会の中で実際に実現して、本当に自由になれるのか…
    それを考え抜いた上での作品とのこと

    いやぁ、ギリシャ神話深い!哲学だ!
    (ソフォクレスの作品は、せつない運命ややりきれなくて物悲しい…だけじゃなくこういう読み方もできるのかぁ
     実に興味深い 現代人に必要な教えがたくさんある!)

    最後は実際の最高裁判所の公式判例があげられる
    原文ではちっとも理解できないが、もちろんここでも対話式で解説が入るので理解できる


    と簡単に言うとこのような内容である


    「法」の視点が変えられた!
    先生の質問で中高生の視野がどんどん開けていく
    のだが、こちらも同じように、ああ、そういう見方があるのか!となんともA・HA体験ができる体感的読書とでもいうのか…
    よくもわるくも常識に縛られた頭の硬くなった大人にガツンと効く!
    法ってガチガチのものじゃなくて、歴史を紐解けば、やさしさと思いやりに満ちたものだったんだなぁ
    なんだか時代が進むにつれて、大切な根本がなくなっていっているんじゃないかなぁ
    そんなことをシンプルに考えた
    法律のベースってこういうことだよね?

    表題からは想像つかないほど読みやすいが、内容は正直難しい
    表面的にしかまだ読めていないと思うが、それでも読む価値は十分ある
    法律以外の部分でも古典の大切さ、読み方、ギリシャ戯曲や神話の面白さ(もっと知りたい、読んでみたい!)に触れることができる

    桐蔭学園の皆さんのスマートさにも感心
    若者の明るい前向きな姿勢は気持ちが良いし、日本も捨てたもんじゃないな…と安心する

    完全なる理解がなくても触れるだけで知的好奇心を十分満たしてもらえる良書!
    続きを読む

    投稿日:2021.06.16

  • tichinyo

    tichinyo

    現代の法に慣れていると、この言葉から想像するものとはかなり違う法の話で驚く。法の起源となるギリシアやローマでの倫理というか、ものの考え方に遡ることで、現代の法を批判的に考え直す内容。

    この本の骨子だけ書いた本があったら、ほとんど誰も関心を持たなそうだが、高校生への講義を口語で書いてあることで、上手にガイドされて最後まで楽しく読める。続きを読む

    投稿日:2020.11.07

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