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ドン・ウィンズロウ, 田口俊樹 / ハーパーBOOKS (13件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
悪臭を放つほど甘いニューヨークの豊かさ
本国で『犬の力』や『ザ・カルテル』と並ぶほどの賞賛を受けていたので翻訳が待ち遠しかったが、いざ読み始めて「これがあの傑作を書き上げた作者なのか」と疑問に思わざるを得なかった。 『犬の力』で絶対的な悪…を、『ザ・カルテル』で地獄の極地を描いて、次は地域警察内部の汚職だと何かスケールが小さく今更という感じも。 とりあえず上巻を読みきったあとはそのまま放っていたのだが、危ない危ない。 ようやく年末に下巻を読み終え、著者が何に突き動かされ、本書を描いたのかようやく理解できた。 きっかけはおそらく、現実に起きた白人警官による黒人青年への射殺事件と、それに続く市民の怒りや暴動を報じたニュースだったのだろう。 批判の矢面に立たされた警察組織の苦悩や、それでも現場の最前線で体を張って働く警察官の姿に心打たれて、取材を始めたのではないかと勝手に想像している。映画『トレーニング・デイ』にも描かれた、悪事に手を染め、いわば王となって街を牛耳る悪徳警官はこれまでも描かれてきたが、冒頭から悪事が露見して捕まり、挙げ句の果てに仲間を売るネズミに転んだ男を主人公に持って来た理由は下巻で明らかになる。 どんな警官にも、よって立つべき場所があり、寄り添うべき対象がいるものだが、マローンの場合は、ニューヨークとその市民がそれに当たる。 彼は、悪臭を放つほど甘いこの市の豊かさを愛している。 「一本の通りを歩いているだけで五つの言語が聞こえ、六つの文化のにおいが漂い、七つの音楽が聞こえ、百もの人種とすれちがい、千もの物語が存在する」ニューヨークが好きで好きでたまらないのだ。 これも現職警官からの聞き取りから得た話なのかわからないが、警官が保護し守るべき市民である被害者を逆に憎むようになるメカニズムも紹介されている。 それは責任感が強く、熱心であればあるほど倒錯した感情が生まれるらしい。 「被害者の痛みはやがて自分の痛みになり、彼らの苦しみはやがて重い責任となって自分の肩にのしかかる - 彼らを守りきれなかった、いるべきところに自分はいなかった、犯人を捕まえるのが遅すぎた」と。 そうして被害者も責めるようになる。「なんでそんなに無防備なんだ、なんでそんなに弱いんだ」と。続きを読む
投稿日:2018.12.29
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うみかもめ
生産・流通を担っている麻薬カルテルを描いてきた著者が、一大市場であるニューヨークの麻薬市場を書いた作品が本書だ。麻薬を取り締まる警察官の活躍が描かれるが、蛇の道は蛇で、警察官の守る正義は一筋縄ではな…い。 知らず知らずに正義を踏み外していく刑事たちは、なぜ踏みとどまれなかったのか。それは一歩一歩、少しづつ踏み外していったからだ。ただ、彼らの胸の内にあふれる正義感は熱くあふれている。 冒頭で留置されている刑事が書かれ、過去にさかのぼり正義から逸脱していく様が語られる。終盤、伏線を回収するように逸脱の背景が書かれ、刑事たちの哀愁が立ち昇るように感じられる。 市警察、市行政、連邦捜査局、アメリカの警察組織は複雑で、それを理解することもエンターテイメントの一つだ。映画を観ているような感覚で、一気にページがめくられていく。続きを読む
投稿日:2022.08.21
Ghost Rider
2021年11月20日読了。 ウィンズロウの小説は奥が深い。 そして、口が悪い。 ニューヨーク市警特捜部、通称「ダ・フォース」の部長刑事デニー・マローン。 マフィア、薬の売人、娼婦、汚職弁護士な…どを取り巻き、ダ・フォースを取り仕切る。続きを読む
投稿日:2021.11.21
ブ-船長とスヌ
ドン・ウィンズロウを初めて読みました。 話の中に入るのに少し時間がかかってこのまま読み続けようかどうしようか考えたのですが、だんだんと話に引き込まれました。 ただ、舞台がニューヨークだから?なのか、言…葉遣いのひどさには閉口しました。 久しぶりに長編の一気読みをしたような気がします。続きを読む
投稿日:2020.09.28
figo2011
最初はどんな物語かのみ込めなかった。警察対マフィア?ではなかった。汚職、正義、人種差別に王とネズミの話し。 後半に向けて物語は急展開し、加速していく。
投稿日:2020.06.14
Gen.
ウインズロウらしい。まさに清濁併せ吞む?リアルティのある正義とはこういうものか。 マローンが最後までカッコ良くいて欲しいけど・・
投稿日:2019.09.18
herbtea
麻薬や銃による犯罪を取り締まるマンハッタン・ノース特捜部、通称「ダ・フォース」。ニューヨークの街で麻薬ディーラーやファミリーの悪党たちと渡り合うには自分たちもある程度の毒を併せ飲むことも必要だ。そんな…市警を率いる警官の王、マローンに少々の反発を覚えながらも彼の行動を見守り、追った。プロローグの前の10ページで彼のいる場所がわかっているからこそ、上巻後半でわずかな油断から綻びを見つけられた彼が今後どうなっていくのか、想像以上に読むのが辛くなってきた。休む間もなく続けて下巻へ。続きを読む
投稿日:2019.06.14
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