【感想】ペスト

カミュ, 宮崎嶺雄 / 新潮文庫
(335件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
80
101
84
17
4
  • 2011年4月の読書メモより

    震災後の状況をこの作品になぞらえた文章をたまたま2つも別々に見つけた。そこで読んでみる事に。

    日常をむさぼっていた都市が、徐々に不条理な事態に直面する(徐々に、というのが地震と異なるが、原発や電力の問題が当初の予想を超えてエスカレートしていく様は少し似ていないか)様子を淡々と描く前半から、そのペストと言う事態の只中で、確たる希望もないまま闘う人物の姿が描きこまれていく後半へと盛り上がっていく。主人公のリウーやともに保健隊で働く仲間たちは、彼らを動かす原動力こそ違えど、ヒロイズムでなく平凡に自分の職務と思うところを果たしていく。世界は圧倒的な力で人間を打ち負かすことがあるが、それでも抗うことに人間の人間たる所以があるのだろう。

    しかし、フランス人が書いたせいか、60年の隔たりのせいか、翻訳と言うフィルターのせいか、単に趣味の問題か、どうもセリフや叙述がまだるっこしく思える(これでも簡潔な文体と訳者は言うが)。それに主題も、ボクにとってスッと腹に落ちるものなのだが、スっと落ちすぎて引っ掛かりが足りない感じ。読みきれていない部分もあるのだろうけれど。
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    投稿日:2017.03.12

ブクログレビュー

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  • タイラ

    タイラ

    この本に書かれていることを完全に理解するにはまだ至らない。だから、これから何度も読み返したい、あるいは、自分の成長を測る物差しのようなものとして持っておきたい。

    投稿日:2024.04.07

  • はるたろう

    はるたろう

    2024/03/18読了
    #カミュ作品

    アルジェリアを舞台に発生したペストの物語。
    テーマだけに終始重い展開。
    50年も前の作品だが、この度発生した新型コロナと
    様相が非常にかぶるシーンが多くて驚いた。
    感染症の状況も生々しいが、
    それ以上にペスト環境下で非罹患者でさえも
    希望を失う絶望的さまが痛々しく描かれる。
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    投稿日:2024.03.29

  • まめだいふく

    まめだいふく

    人間ではどうしようもできない圧倒的恐怖、それでも闘おうとする人間特有の強さ、世の中の無常を思い知らされた。

    投稿日:2024.02.05

  • tom555

    tom555

    このレビューはネタバレを含みます

    アルジェリアのオランでペストが発生し町は封鎖される。その街の中の人々の生活や振る舞いが時系列に描かれている。コロナを経験した今、ドキュメンタリーのように読んだ。淡々と語り治療をする医師リウーは気力も体力もギリギリの状態で良く生き延びたと思う。感情が無くなる程過酷な状態の中で治療を続ける姿勢に胸を打たれた。待ち望んだペストの収束と門の解放。その喜びの中で戻ることの無い人を思うと悲しみを強く感じる。何も起きなかった頃のようには生きられないと認識できたことだけでも、読んだ甲斐があったな。

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    投稿日:2024.02.02

  • 一塔

    一塔

    このレビューはネタバレを含みます

    とある港町に発生した疫病の進行と終息までを、実際に見届けてきた当事者が書き残すという体を取っている。
    1匹の鼠の死骸から始まり、忽ちのうちに無味乾燥な町にペスト=死が蔓延していく様子、その中で人々がどのように生きようとしたかを努めて客観的に、注意深いまなざしで綴っていて、読み進める程に引き込まれていった。
    少年の苦悶の死、夜のテラスでの会話、ショーウィンドウ前での老吏の涙、物語の最後の死者が見せた戦いなど、終盤胸がグッと詰まる場面が続いてたまらなかった。務めを果たさんと奮闘する人たちを美化せず描くところが良い

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    投稿日:2024.01.02

  • tanukitune1031

    tanukitune1031

     医師リウーは、ある日鼠の死骸を発見する、その後、円済みは町から姿を消し、猫も同じ道筋を辿った。そのころから、人間には原因不明の熱病者が蔓延することになる。その正体はペストだった。見通しの立たない隔離生活と一方的な「不条理」を押してけられた人間達の行動と心情を描くフィクションである。

     まず、驚いたのが新型コロナウイルスが流行したときの状況と似ている描写が多いことだ。あのとき、私はこれから社会の病気に対する意識や生活の変化にほんの少しだが、不安を覚えた。だが、その過程と結末は本書に書いてあったのだとすら思える。それくらい、似通っているエピソードを描いたカミュの洞察力と言語能力に感服する。
     また、これらの能力を示す証拠として、オラン市や患者の状態が事細かに、あらゆる視点ら描写されていて、場面に対する解像度が高いと感じた。特に、会話をなくした状況説明はメリハリがあるため、理解しやすい。
     また、リウーとその周辺では経過ごとの心情の移り変わりに人間の道徳心が表れている。個人的には、ランベールが幸福のために市外の妻の元に会いに行こうするが、リウーや町の姿を見て、自らもオランの人間であると考えを改めるところには少し感動した。幸福を選んでも後ろめたさから結局、完全な幸福にはなりきれないという考えからくるものだろう。リウーもランベールを止めようとせず、送りだそうとする心意気があって、自分の幸福を他人に預けようとする他人を思いやる気持ちがあった。不条理の中でも思いやりが生き残っているのは、打算がないように感じられる。

     全体的な印象としては、正直読みにくい点が多い。段落や余白が少ないことと状況説明が淡々としているからだと思われる。しかし、本書のような状況は、コロナ以外にも今後起こるかもしれず、自分らしい行動とは何かを考えるきっかけにもなった。
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    投稿日:2023.12.29

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