【感想】「子供を殺してください」という親たち

押川剛 / 新潮文庫
(78件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
9
21
29
5
2
  • 衝撃的なタイトルそのままの…。

    2時間ほどで読み終えました。

    実は、私の知人に同じような経験をいま、まさにされている方がおり、その話を聞いては暗澹たる気持ちになっていたから、この本を読んでみようと思いました。

    知人(男性)の子供は、多分高校中退か卒業した男の子です。

    彼は、多くを語りません。「精神科に入院させた」、「腫れ物に触るように接している」、「しばらく距離を置くため一人暮しをさせた」などぽつぽつとこちらが水を向けた時に話すのみです。「あなたは?奥さんは暴力振るわれてない?」といった問いかけには無言でした。無言の肯定だと思います。

    男の子が小学生から青年になる過程を私は知りません。まさか、そんな深刻な事態になっているなんて、思いもよりませんでした。でもこの本を読んで、私が考えている以上に、彼(私の知人)を取り巻く状況は厳しいのだと痛感しました。

    でも知人にはこの本を読んで、なんて気軽に薦めることはできません。この本から幾つか得たヒントを忘れないようにして、知人夫婦の声にならない声を聞き逃さないようにしたいです。

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    投稿日:2017.05.06

ブクログレビュー

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  • つらだ

    つらだ

    本人に病識が無く、通院や服薬を拒む患者を家族や保護者に代わり医療の現場に繋げる「精神障害者移送サービス」という特殊事業を営む筆者による著作。

    お恥ずかしながら、このような事業があることを今回初めて知った。私事だが、ここ数年のコロナ禍による生活環境の変化をきっかけに我が家も不安定な状況が続いている。先日は家庭内トラブルが原因で、急遽警察の方に来ていただいたりもした。派遣された生活安全課の刑事の方はとても優しく、動揺する自分に利用できそうな支援制度を丁寧に教えて下さった。とても感謝している。

    本の前半部分はこれまでに著者である押川氏が遭遇した「精神障害者の移送依頼」にまつわるエピソードが語られており、後半部分は精神障害者を取り巻く医療・福祉の現場のリアルな状況と、それに対する問題提起が行われている。
    現在の日本の精神医学は薬物療法に偏りがちなところがあり、自ら通院せず服薬も拒む扱いにくい患者は現場において煙たがられているという話は正直耳が痛いものがあった。(なぜならわたしの家族の場合も本人に病識がなく、心療内科から処方された薬に抵抗を示すからだ。身に覚えがありすぎる……)

    押川氏によると、現状こうした扱いにくい患者の相談窓口や受け皿になっているのは警察だという。警察関係者は職務上ハイレベルな対人能力と危機管理スキルを有しているので、精神錯乱状態で暴力を振るい、自傷他害リスクのある患者に対しても適切な対応が出来るのだそうだ。これに関しては、実際に対応していただいた側の立場として納得するものがあった。しかしそれと同時に、わたし自身も著者同様に警察の現機能だけではこうしたトラブルへの受け皿としては不足していると感じる。今表沙汰となっているケースはほんの一握りで、水面下ではもっと「精神障害をもつ家族と向き合うこと」に悩み苦しんでいる人々がいると思うからだ。押川氏の活動に改めて感謝と敬意を示しつつ、今後は国や行政が主体となり、十分な支援体制が整えられることを願っている。

    この本では年老いた親が精神障害を持つ子どもにどう向き合うかということが主題になっており、子どもとの暮らしに行き詰まった絶望の果てに、表題の「子どもを殺してください」という台詞を紡ぐ家族が何パターンも出てくる。それがまた、個人的に胸が痛かった。親と子どもという関係性。置かれた立場は逆だが、以前にわたしも家族から敵意と攻撃的な言葉を浴びせられた際、同じようなことを考えたことがあるからだ。不謹慎なことだが、自分に関係のないところで、ひっそりといなくなってくれたら……なんて願ったこともある。

    しかし、これはただの逃避に他ならない。押川氏は終章でこうした言葉を綴っている。
    「子供は対応困難な問題を繰り返すことで、親に自分の心を突きつけている。こうなるまで気づかなかった、子供の心の痛みを受け止めてほしい。問題から目を逸らしたり、子供の心を縛るのでは無く、真摯に現実を受け止め、一人の人間として尊重する気持ちを持たれるように……」
    わたしも家族ときちんと向き合わねばならないし、今も、その覚悟が足りていないのかもしれない。そうした自省の念を抱いたりもする。
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    投稿日:2023.12.21

  • あかね空

    あかね空

    閉じ込めることしか対策を思いつかない。攻撃性のある知恵のある人間。家族任せにできない放置できない問題であることは明確。

    投稿日:2023.04.30

  • bon appetit

    bon appetit

     感想を書くことがとても難しい。
     本書に登場する子供、彼らを保護する人、子供の親、警察、福祉関係者はそれぞれの立場、利害をもち行動する。私は心中でそれぞれの行動に対して直感的に肯定的または否定的な意見を持つ。しかし私自身が本書で取り上げられるような問題の当事者でないということからその意見はとても無意味なものに思えてしまう。当事者でないことは私がある問題に対して何らかの感想を持つことに対する自信を奪うときがある。
     一方で本書で取り上げられた問題はもっと社会で大きな議論をして、対策を講じなければいけない問題だ。私が当事者でなくても、まさにいま私が問題の渦中にいるのだという意識を持つべきだ。筆者も当事者でない我々に問題提起をするという意味で本書を書いた側面もあると思う。
     私が本書を読んでどの立場を取るにせよ、この問題に対して一定の立場と見解を持つことを恐れないようにしたい。
     最後に筆者に問いたい。
    「当事者ではない私たちには何ができますか?」
     
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    投稿日:2023.03.14

  • pokke

    pokke

    先日の相模原殺傷事件が起こり、とても興味深く読みました。精神保健福祉法が改正され、2014年4月に施行されてから、複雑かつ対応困難なケースほど、なかなか医療につながらず、入院できても半ば強制的に早期退院を促されるようになっているらしい。二度とこのような事件が起こらないよう取り組んでほしい。また子どもを持つ親は、子どもの顔色をうかがうような事なく、子どもを大切し、本気で子どもと対峙していかなければならないと思いました。続きを読む

    投稿日:2023.02.08

  • のの

    のの

    精神科病院で働く前には「なんだこの本!!」と憤りに近い感想を抱いたものでしたが、勤務後は「わからなくもない」に変わりました。
    ただ病院はいつも満床満杯。午前中1人退院しても午後には新たな患者が入院してきます。受け入れたくても受け入れられない現実もまた事実。保護室が空かないってのもざらだし。続きを読む

    投稿日:2022.12.30

  • Aの本棚

    Aの本棚

    このレビューはネタバレを含みます

    【崩壊した家族を救え .ᐟ.ᐟ】

    ※実際にあった事件なので、事件の内容ではなく、全体の構成の読みやすさ、著者のこの事件を通して読者に訴えたい事が伝わったかどうかで評価

    かなりインパクトのある題名が気になり先に漫画版を読んでいたのだが、Kindleにあったので読むことに。
    なかなかハードな内容なので漫画から読むのがおすすめだが、社会問題として詳しく現状を知りたい方は本作を読むといいだろう。

    内容は、精神障害者を医療に繋げる移送サービスと、自立・更生支援施設を運営している著者によるリアルな現状が記されている。
    本作の前半では著者が請け負ったケースが紹介され、後半では医療や行政の現状や問題提起、子供の向き合い方に分かれている。

    強制拘束を否定し、対話と説得によって患者を医療につなげるスタイルには苦労や落胆することも絶えないだろうが、時には家族より対象者に向き合い接している姿に尊敬した。

    せっかく医療につなげたとしてもだいたい3ヶ月程で退院させられてしまったり、通院履歴がないと行政で対応してもらえなかったりする現状。
    対象者自身が病気の自覚がなく同居する親も同時に病んでしまっているので、家庭ごと救わないといけないこと。
    幼少期に問題行動はなかったか、その時子供にどう向き合っていたか思い返してみること。
    『点ではなく、線で考える』こと。

    精神障害はけして他人ごとではなく、誰でもなり得る。
    社会全体で考え、知る必要がある問題だと一石を投じている一冊だ。


    こんなひとにおすすめ .ᐟ.ᐟ
    ・社会派が好きなひと
    ・子育て中のひと
    ・大人
    ・医療や行政関係者

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    投稿日:2022.11.30

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