【感想】項羽と劉邦(上)

司馬遼太郎 / 新潮文庫
(154件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
59
50
31
1
0
  • 三国志自体が創作小説

    孔明という人物が実在したのは確認されているが、事実は軍師ではなく裕福な家の出の薄学ものだったようである。
    この手の本を読むときには、まず他国の文化・歴史の背景をよくよく理解してから読むことをお勧めしたい。

    そもそも支那では歴史捏造をする学問すらある。偽史は伝統文化なのである。
    つまり、支那が正しい歴史認識と銘打つものは、すべてが捏造された歴史と考えるのが正解だ。
    捏造されたものだから「正しい」と言い張る必要があるのだ。
    さらにもう一つ、支那社会が人間不信も社会ということがある。
    だから偽史、すなわちニセの歴史が非常に流行った。
    支那では有史以来、歴史を書くことを経国の大事としてきた国であり、経典の偽造や歴史の捏造文化は伝統なのである。
    2000年前以上の支那初の経典とされる「尚書」についても、すでに漢の時代から
    「今文尚書」と「古文尚書」の真偽をめぐる論争が延々と続いている。
    この古文今文論争は清の時代に閻若璩(えんじゃくきょ)という有名な考書学者が、孔子の11世の孫が古文尚書を偽造したことを
    理路整然と論証して偽作であることを証明した。

    このように、歴史や経典の偽造、捏造を専門とに考証・研究する考証学や弁偽学が確立され、これが支那の経史研究の入門とされているほどだ。
    「偽書通考」等でも、1104部もの偽書を非常に明快に証明してみせている。
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    投稿日:2015.05.05

ブクログレビュー

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  • ちゃいろいとり

    ちゃいろいとり

    個人的には読み進めるほど、章邯と司馬欣に魅力を感じて持っていかれました笑
    現代日本人の私たちでは感覚が掴みづらい当時の風習や世界観を端的にわかり易く説明しながら、キャラクターにしっかり血が通っているのが感じ取れる物語の展開の仕方が凄かった。
    司馬遼太郎先生の作品を初めて読み終えたけど、頭が混乱しない物語運びが、ただシンプルに凄いと思った。
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    投稿日:2024.03.01

  • kazu1216

    kazu1216

    登場人物全員、キャラがいいんだよなあ。。。
    劉邦のダメっぷりもいい(笑)
    ちっぽけな自我を捨てられたら、少しは器が大きくなれるかなあ~

    投稿日:2024.02.21

  • sambo0217

    sambo0217

    やはり中華の歴史は読み応えがある。

    登場人物の魅力的なことといったらない。
    その土地土地の民族性などの説明もあり、すごく分かりやすいし読みやすい。

    上巻は劉邦はあまり活躍せず、主に項羽がどのような人柄かがよく分かった。続きを読む

    投稿日:2023.12.26

  • ゆゆ

    ゆゆ

    兵士と共に戦う項羽、戦下手だけど人の話をよく聞き褒美をしっかり出し人が集まる劉邦。この対比が面白かった。

    投稿日:2023.12.20

  • ちむさーちょい

    ちむさーちょい

    このレビューはネタバレを含みます

    紀元前221年に春秋戦国時代の中国を統一し、秦王朝を打ち立てた始皇帝の末期から始まる本書。それまでの封建性に取って代わり、官僚制による各地を統治するという斬新な方法で全国を支配した。万里の長城を始めとする数々の大型土木工事を行ったが、これを実行する為に各地から労働力を徴用しつづけたことで民心は離反していた。始皇帝が死ぬと、各地で武力勢力が蜂起する。宦官の趙高は胡亥(こがい)を担いで形ばかりの後継の皇帝とし、自らがすべてを取り仕切る事に成功する。

    統制が乱れた地方では同じ様に各地域の旧王族を担ぎ上げた自称王国が多数誕生する。其の中の一つが、江南の楚であった。項梁がかつての楚の王を血を引く男、羊の糞を乾かして売り歩く男を探し出し、楚王に祭り上げる。
    軍を立上げ、項梁の甥である項羽と、劉邦は楚軍の将軍として秦の軍を打ち破っていく。

    一方、秦は趙高の代理施政によって完全に内部が腐敗し、外で展開する反乱を収める能力は失っていた。

    ここで描かれている事は、その4〜500年後の三国志で起きる事と酷似しており、歴史は繰り返すという言葉はすでに2000年前から同じである事を思い起こされる。役人の腐敗、人民からの搾取と虐殺、傀儡による政治の私物化、謀反などあらゆる悪事はその後の中国の歴代王朝でも何度と無く繰り返され、そして現代に至る。

    更に驚くのは、ここから更に1500年ほど遡った殷王朝に関する記述。存在が確認されている王朝としては中国最古であるが、その遺跡には王の周辺に首の無い骨が500柱程発掘されているという。それが何を意味するのかは不明であるが、おそらくは殉死者なのか奴隷なのかという事である。そのような野蛮な事が行われていた事に驚愕する。

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    投稿日:2023.12.19

  • 昨今亭新書

    昨今亭新書

    他の作品もそうだが、『項羽と劉邦』もビジネス教養書としてあまりに有名。
    曰く、項羽はカリスマ性もあって有能だが部下の意見を容れず、劉邦は無能だが部下に慕われ、優秀な人材を多く集めたため天下を獲った。だから上司たるもの、自分の能力以上に部下への接し方が大切である…といった具合に語られるのをよくみる。

    上巻読了時点の感想としては、そういう風に読むことも可能だろうが、司馬遼太郎の描きたかったこととはズレるのではないかな、といったところ。
    まず項羽からして、カリスマと呼ぶには蛮勇の色が強すぎる。むしろ頑固で人間味の薄い戦闘狂といった具合でカッコよさはあまり感じない。
    一方の劉邦も、人徳を集める人物という描写は多いが、その理由は龍に似た人相にかなりのところを負っていて、ダメさを帳消しにするほどの魅力的な人格の持ち主には見えない。

    というわけで現状ではどちらも何を考えているのかよく分からず、感情移入しづらいものの、単純に古代中国の世界観を味わう読み物としても充分に面白く読めた。今後に期待。
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    投稿日:2023.12.11

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