【感想】赤い鯱

西村寿行 / 徳間文庫
(2件のレビュー)

総合評価:

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  • これはいいです! 西村寿行氏版のミッション・インポッシブル

    時代背景が東西冷戦時代という点で、一種の歴史エンタメ小説として愉しめました。
    壮大なスケールに圧倒され、寝る間も惜しんで読破してしまいました。リーダーストアのお陰で、こういう作品に出会える僥倖に感謝します。これだからリーダーでの読書はやめられない。わけても、西村寿行氏の作品は、全て読みたくなります。
    何せ、物語の主軸が、「赤い国の最新鋭原子力潜水艦を捕獲せよ」というミッション・インポッシブルなんです。
    それを日本人4名で成し遂げようっていうんです。
    思わず、そんなん無理でしょう、と4名に呆れた口調で話しかける心境になっていました。
    まさしくハードロマン。錆の浮いた鉄を思わせるハードさが剛直な根を下ろし、その地上部でロマンが息衝いています。
    基本的に女人禁制。ですが、西村氏をあまり知らない方にもお勧めしやすい作品のように思います。西村ワールドのあらゆる要素がパワー全開という作品なので、愉しんで頂けるのではないか、と。
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    投稿日:2015.05.06

ブクログレビュー

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  • haru507

    haru507

    このレビューはネタバレを含みます

     シリーズ作品を途中で読まなくなってしまうことが、ままある。
     けっして面白くなかったわけではないのだが、他に読みたい作品があって後回しにしているうち、いつの間にか積読になってしまっているというパターンだ。
     本「鯱」シリーズも、講談社文庫版全9巻を買ってはいたのだが、第4作まで読んだところで放置したままになっていた。
     ようやく時間もできたことだし積読を解消しようかと思ったのだが、それまでの話をすっかり忘れてしまっていたので、最初から読み直してみることにした。
     ところが、再読にあたって事前に確認してみたところ、同シリーズで文庫化されていない作品があることがわかった。
     文庫になった第9作までは、週刊現代に連載したものが1979年から1991年までに1~2年の間隔でまとめられていたが、シリーズ最後となった第10作はメフィストに掲載されたのちに1995年と1998年に2分冊で刊行されていた。
     あわててネットをあさってみたが、文庫になった様子もなく、単行本が売れ残っているわけもなく、しかたなく図書館を探しまわってようやく手に入れることができた。
     さあ、これで漏れなく全巻読むことができる。
     また途中で間延びしてしまわないよう気を付けたいと思っている。

     西村寿行作品の多くが“ハードロマン”と呼称されている。
     初期の冒険活劇作品に、復讐のためにたった一人で強大な組織に立ち向かう男の姿を描いたものが多く、そこに見られる情念や憂愁、寂寥感といったものが“ロマン”を感じさせるからだろう。
     しかしながら、本作「赤い鯱」に始まるいわゆる“鯱シリーズ”は、どちらかと言えば「スーパーアクション」といったほうがより適切に思える。
     「国際謀略小説」のキャッチコピーもあったが、世界各国から極秘の依頼を受けて活躍する4人の男達――幻術を操る仙石文蔵老人、科学技術のスペシャリスト関根十郎、物資調達能力に傑出する十樹吾一、情報担当の天星清八――の能力があまりにも超人的なのだ。
     本作では、“赤い国”の新型潜水艦――従来型の倍以上の潜水能力を持つと思われる弾道ミサイル搭載原子力潜水艦の捕獲を米国からの依頼される。情報を求めて動き始めた4人は国内外で敵の襲撃を受けるが、あっさりと撃退してのける。ハニー・トラップ以外は。
     どんだけ、「俺TUEEE」なんだろう。たった4人の男たちで一国の諜報・軍事組織を手玉にとってみせるなんて。
     まるで“なろう小説”のご先祖様のように思えた。

     自分は第4作までしか読んでいなかったが、もしかするとこれは幸運だったのかも知れない。
     現在でも電子書籍として第4作までは販売されているが、第5作以降、シリーズを重ねるに従ってこの4人の超人っぷりが、とんでもなく跳ね上がっているらしい。
     宇宙人が出てきたとか、超能力戦だとか、時間や次元を超えたとか……読んでいないので、どこまで本当なのかわからないが。
     たしかに、晩年の作品には途中からの展開が微妙なものが多くなるとの評もある。
     しかしながら、駄作だからといって読む価値もないとは言い切れない。ファンにとっては、駄作・怪作もまた愛すべき作品なのだから。
     本作は、その欠点も含めたうえで充分楽しめる作品だったと思う。

    (追記:電子版として1~4作が徳間書店から出ているほか、5~9作が講談社から出ていることが確認できたが、やはり第10作だけは見つけられなかった。)

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    投稿日:2023.02.14

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