【感想】路傍の石(新潮文庫)

山本有三 / 新潮文庫
(31件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
10
10
6
1
0
  • 昔話として読むのもいいが

    素直に読めば「ひたむきに努力すればいつかは報われる というサクセスストーリー 立志伝として読める。中途パンパな終わり方になってしまっているのは、軍からの圧力とのこと。軍にとって都合悪い話がどこにあるのだろうか?吾一少年がそのまま成人したら出征したのだろうか.などど色々考えさせられる作品である。続きを読む

    投稿日:2023.10.29

ブクログレビュー

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  • フレフレ

    フレフレ

    このレビューはネタバレを含みます

    もし自分が、このお話の主人公だったとしたら、
    果たして今のように自分自身を保っていられるだろうか?

    この本は何十年も前に読書感想文の為に選び、いちど読んでいますが、
    改めて読み終わった今、真っ先にそう感じてます。

    主人公、愛川吾一は道ばたの蹴られる石。タイトルの通り
    彼は話のいたるところで理不尽な扱いを受け、ほんのささいな希望すら
    踏みにじられては、それでもそのたび起き上がって生きていく
    雑草魂を幼少期の頃から否応なしに求められます。

    彼の生まれるすこし前の日本では、明治維新が起こり、
    歴史的大転換期をうまく変化できた者と、そうでなかった者で真っ二つに割れ、
    この吾一の父親、愛川庄吾の育った環境は後者である『古いお侍』の思想を
    色濃く受け継ぐ条件が揃っていました。

    幕府が倒れたといえ、人間の意識は一朝一夕には変わりません。
    黙っていても懐にお金が転がり込むのが当たり前と思う父親と、
    幼少時から家にお金がなく、たった一銭の焼きいもを買いに
    使いにいかされるその息子。
    働かない父親の代わりに袋張りの内職で家計を支える母親。
    路傍の石のこういうシーンは、ひょっとして当時の没落士族の
    家族にまで及んだ、時代とのマインドのギャップと貧困の織りなす悪影響を、
    最大公約数として捉えているのかもしれないですね。

    福沢諭吉の学問のすゝめを読んでインスパイアを受けた吾一は、
    時をほぼ同じくして人の厚意でせっかくまとまりかけた中学進学への道を
    むざむざ断ってしまう父、愛川庄吾からのお説教を受けます。
    庄吾には『今』の時代がまったく見えていず、過去に家がお侍であった
    ことだけを笠に着て、自らを正当化することばかりに躍起になる。
    ここには天と地ほどのギャップが存在しています。

    過去に自分がこの本を読んでなぜ強烈な印象として残っているのか、
    理由としてこのパートでの『対比』が挙げられると思います。
    直前に偉人を引き合いに出して、その後、愚かな者の思い込みを
    語らせる。プロボクサーが職業的にやるパンチみたいに、
    うごきに無駄がなく威力は最大限というあんばいの計算された演出なように思いました。
    何十年経って読んでも、これはとびっきり最高に胸くそ悪い(笑)

    路傍の石全編を通して、山本有三が伝えたかったのは恐らくここだろうと。
    少年期、青年期にたびたびすさまじい重しとなる『父の存在』が
    話の大きな潮目を作っていて、過去と現在の狭間にある罪を精算する為に
    否応なしに対応を迫られた、若い世代の心の叫びがここにはぎっしりと詰まっていると思います。


    吾一に救いがあるとすれば、彼は周囲の雑音に負けず、
    様々な本から有益なことを学び自らの行動に反映させていく姿勢を
    決して忘れなかったことです。
    知識の蓄積と実践行動の両輪を回して取り組み、メキメキと結果を出し、
    出世していく姿がこれから拝めるか、そんな所でこの話は終わります。

    出来ればこの続きを知りたい気持ちもしますが、きっと吾一のことですから、
    青さ・若さから、成功の友を立ち上げて軌道に乗りかかったこの先も、
    出た芽を外圧からつぶされてしまったり、失敗は尽きないでしょう。
    でもそのたびに、立ち上がり奮起しては次のステージに進む。
    吾一はそういうタフな男です。

    いまは一見して、全てのものが満たされ豊かな暮らしをしている
    そんな時代なようにも見えますが、
    もしも山本有三が現世に居て同じような運命を辿ったとしたら、
    きっといまも同じように、児童の心の機微を捉えて影に隠れた貧困や、
    社会問題に踏みこんだ物語を書かれることと思います。

    そんな彼の意志を、ほんの少しでも改めて受け取ることができて
    良かったと思っています。
    路傍の石は自分の読書生活最初の1ページとして、
    これからも人生の節目節目で意識して手にとってみたいですね。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.08

  • 正木 伸城

    正木 伸城

    メモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1762427403257958663?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw

    投稿日:2024.02.27

  • 坊一郎

    坊一郎

    逆境におかれながらも経済的、精神的に自立した人間になろうと、ひたむきに努力する吾一少年の姿に心が震えた。
    自分はいかにして生きるかという本質的な問いに対する答え、戦略を持つことの大切さを改めて感じた。
    すごく面白かったけど、検閲の網に引っかかって未完なのが残念。
    続きを読む

    投稿日:2021.08.15

  • まる

    まる

    一気に読んだ。ここで終わんの!!!て感じ。
    今でも十分やのに速記を覚えたり、手を繋ぎ合わないとという話を自分なりに解釈して味方にしたり、素直さと貪欲さに痺れた。
    少年が頑張る話、いつまでも好きやわ…

    投稿日:2021.06.13

  • heresince

    heresince

    働かないで家にも滅多に帰ってこず、吾一の貯めたわずかばかりの貯金さえ使い込んでしまうような父。生活のために内職をして体をこわし早くに亡くなってしまう母。吾一は奉公先を飛び出し東京で一人なんとか生きていく。子供ながらにその強さには感心する。次野先生の「吾一」とは「われひとり」この世にたった一人の大切な存在なのだと言うことばを胸にひたすらに努力して自力で学校にも通い、勉強を重ねる。だが再び父親に独立しようと貯めておいたお金を使い込まれる。彼は何度も何度も蹴られる路傍の石であった。続きを読む

    投稿日:2021.02.13

  • koujun

    koujun

    小川洋子さんのラジオで紹介されていて、今更ながら読んでみたが、とてもよかった。
    昭和15年、制裁を受け、未完にせざるを得なかったことは「ペンを折る」に書かれている。
    吾一の志が素晴らしい。

    投稿日:2020.02.29

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