【感想】日本人の身体

安田登 / ちくま新書
(12件のレビュー)

総合評価:

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2
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  • 身体を対象化しない日本人の身体観

    日本人の身体は、元々“身体”という言葉はなく、心も体も魂も合わせて“身”という概念しかなかった。

    “体を鍛える”というのは、“刀を鍛える”と同じように、“鍛える”とは外部のものを鍛えることを指し、
    “体を鍛える”と使えば、すでに体を対象化している。

    もし古来の日本人のように心体魂が一体化していたら、対象化して見ることはできない。

    600年以上受け継がれてきた身体操法である能を経由した著者は、
    そうした日本的な身体観の方が人生を楽にするのではないかと考え、古今東西の文献や文学を探り始める。

    広く環境に溢れだしたり、自然と人間すらも一体になるのが日本人的な身体性を取り戻すためのきっかけとして。
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    投稿日:2015.05.08

ブクログレビュー

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  • honmusubi

    honmusubi

    からだというと、昔は死体を意味し、生きている体は、み(身)と呼ばれ、体と魂が一体化して捉えていたが、現代では体をモノとして扱うようになったという。
    能をベースとして、古典から日本人の体の感覚を説明している。

    はっきりとした境界線を引くのではなく、体の感覚や、建物の構造だったり、あいまいな部分を持っているのが日本の考え方なのだなと実感した。

    印象に残ったのは、以下の部分。
    和して同ぜず 
     和の関係は持つが同の関係は持たないという意味だが、今では和=みんなで同じことをすることと、同じにさせたがる。

    老いについて、醜いものと感じている人が多いが、そもそも、若い=幼い、未成熟な状態を指しており、老いは生いに通じ、老いてこそ、芸の真髄を発揮できるという。

    アンチエイジングに走るのではなく、老いても「花」を保って生きる=過去の栄光にしがみつかないことだという。
    若い頃は、勢いに任せることができるが、老いてからは生き方が問われるということだと解釈した。

    老いの部分について、唐突に語られる感じがして、著者は、この部分を強調したかったのではないかと感じた。
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    投稿日:2023.08.15

  • キじばと。。

    キじばと。。

    能楽師である著者が、日本の伝統的な身体観についての考察をおこなっている本です。

    われわれが、西洋の科学的で分析的な身体のとらえかたになじんだ結果、自分自身の身体についてのもっとも直接的な知をうしなってしまっているのではないかという問題提起から、議論がはじめられています。そのうえで、著者自身がその伝統の一翼を担っている能についての例などを引きながら、分析的な身体についての知識によっては見えてこない、生きられた身体知のありかたが論じられています。

    「生きられた身体」というテーマについては、市川浩や中村雄二郎、竹内敏晴といった論者たちが考察をおこない、近年では鷲田清一や内田樹などの思想家たちも関心を示してきました。本書の議論も、そうしたすでに長い議論の蓄積のある身体論と響きあう内容をもっていますが、日本神話から中国や古代ギリシアなどにおけるさまざまな事例をかなり自由に参照しながら、現代に生きる人びとが身体知のほんらいの豊かさにふたたび目を向けるようにうながしています。

    「あとがき」で著者自身、「話は留まるところを知らなくなり、ほとんどもう一冊の本ができるくらいのものを書いてしまい、いつまでたってもまとまらなくなってしまった」と述べているように、やや奔放な議論の展開がなされているようにも思えますが、伝統的な身体知について考えるうえで興味深い切り口がいくつも示されているように感じました。
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    投稿日:2023.05.28

  • 茶山

    茶山

    日本人(東洋人?)らしいステキな枯れ方のススメ。
    です・ます調で講演をまんま収録したような体裁。
    なので、著者の興味が赴くままに、とりとめもなく話が展開する感じ。
    「能」を解説している部分が大変興味深いのに比べて、それに関連した事項は、ほとんど古典からの我田引水のような、どうとでもとれるような解釈ばかりで、まぁふんわりとした読後感でした。それも日本人らしいのかしら...。続きを読む

    投稿日:2023.04.11

  • ほんのむし100

    ほんのむし100

    言葉と身体の結びつき
    古典はやっぱり面白い奥が深い
    もっと知識を深めたい
    大誠堂書店(一宮)にて購入

    投稿日:2022.04.01

  • 小野不一

    小野不一

    日本人が心身二元論になったのは近代以降であるとの指摘だ。ただし仏教では色心(しきしん)二法が説かれていた。色法(しきほう)が物質で心法(しんぽう)が性質である。続いて西洋と日本の体に対する見方の違いが示される。
    https://sessendo.blogspot.com/2021/11/blog-post_40.html
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    投稿日:2021.11.30

  • Minmo

    Minmo

    人間は言葉で世界を認識して分割する。本書は徹底的に言葉にこだわって、日本人の身体観を見つめ直す労作。こちらにもある程度の教養が必要な一冊かも(^_^;)

    投稿日:2019.03.13

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