【感想】ルワンダ中央銀行総裁日記 [増補版]

服部正也 / 中公新書
(159件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
62
57
22
3
0
  • 単なる開発援助の経験談を超えて、国家経済運営において中央銀行のあり方を示した名著

    著者の服部氏は、約50年前に、それまで何の縁もなかったルワンダで中央銀行総裁を務めた方である。本書は、そのときの服部氏自らの経験を記したものであり、発展途上国における技術援助の経験談として十分面白く読める。ただ、本書の神髄は、ルワンダ人の生活の向上、ひいてはルワンダ人の幸福の実現を目指して、国家の経済運営全体を構想し、それを実行に移していくところにある。氏は、外国人の不当な搾取を怒りつつ、それに対して直接的な懲罰を加えるのではなく、公平な競争環境を整え、ルワンダ人の経済活動を活発にすることで、必然的に不当な搾取が出来なくなるように仕組んでいく。その中で、倉庫業やバス事業など、一般的には中央銀行の役割とは考えられない活動にまで積極的に関わっていく辺りは痛快である。氏が実現した国家経済運営は、現場の経済事業を緻密に把握しつつ、政府の財政政策と、中央銀行の金融政策を一体的に運用していくことで目的を達成しようとするもので、財金分離といった原則に囚われるあまり、国家経済の浮揚に関心を失ったかにも見える現代の中央銀行が見失っているものが本書にはあるように感じた。その意味で全く古さを感じない普遍性をもった名著である。続きを読む

    投稿日:2015.06.08

  • 人は、宝。人を育て、中央銀行という組織を作った。

     中央銀行と言えば、銀行の銀行・金融政策、財政政策ぐらいのイメージしか持っていませんでしたが、興味深く本書を読むことができました。敗戦後20年で服部氏のような国際貢献をした日本人がいたことを誇りに思います。
     利に聡い現地の商人や、植民地時代の感覚で商売する白人達の様子など、当時の世情がよく分かります。思い込みなしでルワンダの人々と付き合い、地に足のついた政策を進めたやり方は、本当の援助だと思いました。
     巻末に、ルワンダの悲劇について増補されています。その中にルワンダの難民支援についても書かれているのですが、シリアの難民支援にも繋がる内容だと思いました。
    続きを読む

    投稿日:2015.10.16

ブクログレビュー

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  • shosho

    shosho

    非常に面白かった。立派な人がいたんだなぁ、と思う。人を、現場を、大切にする人。大統領との対話で作られた信頼関係があってルワンダのため、ルワンダ人のための仕事をしているのは最高のモチベーションになっていると思う。仕事というのはかくあるべし、と思う。続きを読む

    投稿日:2024.02.06

  • aewshyae

    aewshyae

    服部氏の日銀総裁や世界銀行での経験からすれば端から可能なことだったかもしれないが、アフリカ内陸にあり経済的条件も良くない土地で、通貨改革や中央銀行、金融の組織化をやりきった姿を、仕事人として尊敬する。

    投稿日:2024.01.29

  • ちむさーちょい

    ちむさーちょい

    敗戦の記憶がまだ新しかったと思われる1968年にIMFからの要請によって、当時独立して間もないルワンダ中央銀行の総裁として赴任した日本人の著者による記録。著者自身も日銀職員であり、金融政策や実務についてはかなりの知見があることは書中にたくさん書かれている問題とそれに対する対応策に関する考察で読み取れる。

    本書を手に取ったきっかけは、いわゆる発展途上国とのビジネスにおいて常に悩まされる、現地人の責任意識の低さや、スピードの遅さなどについて、何かヒントはないかと思ったことである。

    ルワンダは、独立前には隣国のブルンジと併せてベルギーの植民地であったため、ベルギーとの貿易が多く、かつそれに伴うベルギー企業やそれを支援するベルギーの民間銀行によるルワンダ経済への影響力が極めて大きかった事を著者は赴任した際に目の辺りにする。ルワンダの政治・経済における問題の多くはこれによるものが多く、実質的に同国の運営はベルギーからきているアドバイザー達によって行われていたということである。更に問題だったのは、ルワンダ人の政治家や役人達の経済製作や実務に対する知識が乏しく、更には意欲と責任感を欠いてる中、ベルギー人達の言いなりになっていたという事だった。

    結局、こうしたアフリカ諸国が現在に至っても先進国や国連からの援助に依存しているという構図は変わっておらず、そもそもだからこそ植民地という立場に甘んじた歴史を持っているとも言える。

    著者はそのような状況の中、ルワンダ中央銀行と、それにとどまらずルワンダ経済の改革を行う事となるのである。結果的に改革は成功する事になるが、その最大の理由は著者が私利私欲や出身国の日本の利害を一切排除し、ルワンダのため、ルワンダ国民のための政策を実行した事によるものである。植民地の宗主国体質が抜けないベルギーの企業や銀行では到底出来ない事であり、日本人だからこそ出来たのではないかとも言える。
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    投稿日:2023.11.16

  • 餼羊軒

    餼羊軒

    ■細目次
    https://gyazo.com/f1745d6dd3a9c7e03866087e1b330c08
    https://gyazo.com/882863113c24fec244e3d3d5b6a73bdd続きを読む

    投稿日:2023.11.13

  • dridaw

    dridaw

    子どもが面白いから絶対読んだ方がいいと薦めてくれて読みました。めちゃくちゃ面白かった。

    Noblesse obligeとしか言いようがない。
    こんなにすごい日本人がいたなんて感動しました。

    そしてもっと経済について勉強しないと、とも思いました。続きを読む

    投稿日:2023.10.29

  • つき

    つき

    先日初めて喜多川泰さんの講演会に行きました。
    講演の中で必読の一冊と紹介があったので読みました。

    日本は今、太平洋戦争以来の国家危機を迎えているのだと思います。
    2度も国の存続が不可能と思われたところから立ち直り、発展を遂げてきた私たちの国の未来はどうなるのでしょうか。

    喜多川さんはとても良い国の良い時代に生まれてきたと思うこと、伝えることの大切さを語っていました。
    私には何ができるのだろう。


    Although the barrier to preventing from country’s development is people, the main reason for development is people too.
    続きを読む

    投稿日:2023.10.13

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