【感想】エンディミオン(上)

ダン・シモンズ, 酒井昭伸 / ハヤカワ文庫SF
(13件のレビュー)

総合評価:

平均 4.8
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  • 読まないのはもったいない!

    ハイペリオン四部作の中では一番好きかも。前二作のように複数視点でもなく複雑に絡んだ背景や謀略はあるものの「男の子(青年)が女の子を助けて逃げる」という至ってシンプルな話が良い。

    「連邦崩壊」から300年後、死者の復活を可能とする聖十字架を擁するカトリック教会〈パクス〉が神権政治によって人類を支配する世界。そんな時代の惑星ハイペリオンで死刑宣告を言い渡された主人公のロール・エンディミオンを前作の登場人物<詩人>のサイリーナスが助けたことからこの冒険譚の幕は開きます。
    サイリーナスは助けたロール君に〈パクス〉3千の軍隊を出し抜いてこれから〈時間の墓標〉に現われるアイネイアーという少女を助け出し、<テクノコア>が隠した「地球」を探し出して逃げ込めという大変な依頼をします。普通引き受けないだろう的な超難題にOK出したロール君は助けたアイネイアーとともにテテュス河(各惑星を転移ゲートを使って繋げた河)を使って逃げるのですが、この一行を〈パクス〉のデ・ソヤ神父大佐が追いかけます。

    「連邦崩壊」後、使用不能になっている転移ゲートはアイネイアーのみ起動できるので、毎回この「どこでもドア」で辛くも脱出しうるのですが、通常空間を移動するしかないデ・ソヤ神父さんは教会から宇宙で3番目に殺人的に速いスピードが出る〈大天使級急使船〉を使って文字通り毎回死にならがら追いかけます。この人間が死んでしまう無茶な加速で目的地に着き聖十字架の力を借りて復活する航法?(方法)でエンディミオンたちを追い詰めるのですが、デ・ソヤ神父さんが鉄の意志を持った敵ながらあっぱれないい漢なのですよ。そこへ相変わらずわけのわからない殺戮の神シュライクとさらにネメスという羅刹も登場して追いつ追われつの逃避行が展開します。

    この逃避行がめちゃくちゃ面白い。エンディミオンたちを通して描かれる「連邦崩壊」の世界と各惑星の生態系や追跡途中に見つけたデ・ソヤ神父による惑星政府不正の追求や<テクノコア>が隠した「地球」やアイネイアー本人の謎、そしてそのアイネイアーを巡ってのシュライクとネメスの争いなどなど山盛りの謎を解明しながら話は進んでいくのでかなりの分量である本作ですが面白いくてグイグイ読めちゃいます。

    前二作は結構読みにくいので本作「エンディミオン」までたどり着けない人も多いかと思いますが、こんな面白いSF読まないのはホントもったいない。前作途中挫折の方も本作から再度トライするのもありかと。
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    投稿日:2014.04.16

ブクログレビュー

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  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』に続くシリーズ第三弾。前作から約300年、青年と少女の冒険が始まる。

    ズバリ前作より読みやすい。親しみやすい若き主人公と、秘密を持った少女、従順で優秀なアンドロイド、有能だがおちゃめなしゃべる宇宙船など、魅力あるメンバーで繰り広げられる冒険活劇。

    さらに、彼らを追跡するデ・ソヤ神父大佐とその部下たちも敵ながら好感がもてる上、その心熱き闘いの様子が主人公たちの冒険と交互に描かれていく。文章量的にもダブル主人公制といっていいだろう。

    両者の距離が次第に縮まっていく逃亡劇と追跡劇のなかで、前作までの濃密な世界観が掘り下げられていき、新たな謎が浮かび上がる。もちろん前作の人物やその痕跡が登場したりもする。本作のストーリー自体は一本道で読みやすいが、過去作で積み上げられてきた土台がさらにその面白さを増し深めているため、ここまで読んできてよかったと心底思った。

    絶望的な危機を間一髪で乗り越え続ける主人公たち。果たしてその行方はいかに。そしてヒロインにまつわる謎とは……?先が気になりすぎるSFアドベンチャー。
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    投稿日:2023.03.01

  • paraparayomu

    paraparayomu

    新刊の単行本でも買いたくなる面白さ
    表紙   7点生籟 範義   酒井 昭伸訳
    展開   8点1996年著作
    文章   8点
    内容 810点
    合計 833点

    投稿日:2017.05.17

  • 0u0v

    0u0v

    エンディミオンシリーズの感想として。ハイぺリオンシリーズより宗教/思想の色が濃い。完結はしたけれど、微妙だと思ってしまった。物語にでてくる沢山の惑星の設定、描写は面白い。
    ※1は素数じゃない。

    投稿日:2014.05.06

  • massy

    massy

    「エンディミオン」ダン・シモンズ/酒井昭伸 訳
    SF叙事詩。赤銅色。
    ハイペリオンシリーズ第3作。

    前2作から300年余を経過した人類社会。
    <ウェブ>の崩壊と共に自由社会が放棄され、往時の没落から一転、キリスト教会パクスが人類を統べている。
    かつての最後の巡礼たちの物語は、禁書『詩篇』として読み継がれ、旧<ウェブ>の諸惑星は恒星間距離を隔てて生き延びていた。

    シリーズ後半戦は、3人(と1人)の冒険譚として幕を開けます。
    新たな世界の萌芽となる少女;アイネイアー、床屋で髪を切るヒーロー;ロール・エンディミオン、素晴らしき友人;アンドロイド・ベティック、小憎らしい独立A.I.;「宇宙船」。これを追うのがパクスの鉄の意志;フェデリコ・デ・ソヤ神父大佐。
    もう、これだけでいかにもワクワクしてくる痛快無比のSFアドベンチャーの予感ですが、さらに前2作で明らかになった秘密を下敷きに敷き広げられる謎、惑星世界、宇宙の行く末が、ページを繰る手を止まらせません。
    『ハイペリオン』の6つの巡礼の物語が多ジャンルにわたる映画を見ているようなものだったとしたら、『エンディミオン』の惑星巡りの物語は古今東西のSFを選りすぐって読んでいるようなもの。
    そして要所に織り込まれる不穏な伏線…。
    『エンディミオンの覚醒』の怒濤のエンディングまで一気読みです。

    再読。(5)
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    投稿日:2013.07.31

  • mh1989

    mh1989

    久しぶりに再読。古いのではないかと危惧していたが、時間を経て尚、輝きは失っていない。また通巻で読みなおしたくなった。

    投稿日:2013.04.29

  • gaji2000

    gaji2000

    「ハイペリオンの没落」後の世界を描いています。数百年経っているので、登場人物はほぼ一新されています。

    でも小説世界の奥深さ、思想の深さはハイペリオンから引き続きで、ダンシモンズの才能に舌を巻きました

    下巻途中まで読んで分かったのですが、この物語は「カラマーゾフの兄弟」で、物語の物語として出てくる、「キリストが再度現れたときの、聖職者達の振る舞い」をモチーフにしています。
    それをSFにまで昇華させた技量はすばらしい。下巻の半分ぐらい読んで、やっと気づきました。
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    投稿日:2011.03.06

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