【感想】野火

大岡昇平 / 新潮社
(219件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
65
74
47
4
2
  • 野火

    戦争の悲惨さを伝える文学は沢山あるが、敗戦国側の一兵士の目から見たこの作品は国産では最高傑作だろう。
    戦艦大和やゼロ戦にビルマの竪琴などの物語が甘い夢物語だと、戦争を経験していない自分にも理解できる気がする。
    ちなみに市川崑監督が映画化した傑作は原作と結末は違っている。
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    投稿日:2015.01.18

  • 戦争の悲劇◎ でも、ちょっと哲学的な文章が多い

    戦争の悲惨さは十分に伝わってくるけど、主人公が時折つぶやく哲学的な表現は、ちょっと頭が疲れる。極限状態の日本兵、戦争経験のない私でも安易に想像していたことが、一般文庫の活字で遂に公になったのかな。虫が食べてた跡のある草を食べるところなんか、ちょっとした一文だけど、鳥肌立ちます。
    しかし、よく、この哲学的なつぶやきの多い話を映画化したなと思いましたが、予告を見る限り、映画の方が悲惨さをわかりやすく伝えてそうな印象です。
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    投稿日:2015.09.11

  • 平和な今からは想像もできない極限

    作者の実際の戦争経験を基にしているとのことなので、極限において私たちは殺人でも人食いでも、何でもしてしまう。
    平和な現代に生きる自分には、想像を超えた世界であるし、その状態を形容することもできない。
    読みやすい文章ではないが、戦争とは何であるか、私たちは知っておかなければならない。
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    投稿日:2017.09.18

ブクログレビュー

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  • jun55

    jun55

    太平洋戦争、フィリピン戦線でサバイバルする日本軍兵士を主人公とした小説。(大岡昇平の体験に基づき書かれているが、この小説はフィクション)
    戦争文学の代表作品と評されるだけあり、特に主人公の生死を彷徨う状況の中での深層心理の描写が印象に残る。(時には哲学的な表現もあり)

    このような戦争小説を読むにつけ、戦争の愚かさに気づかされ、「平和ボケ」、風化させないためにも読んでいかなければいけないと思う。

    国家のために極限状況に追い詰められた人々に対してやるせない気持ちで一杯になる。

    以下引用~
    ・もし私の現在の偶然を必然と変える術ありとすれば、それはあの権力のために偶然を強制された生活と、現在の生活とを繋げることであろう。だから私はこの手記を書いているのである。
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    投稿日:2024.04.06

  • のぶ

    のぶ

    じっくり読みきれなかった気がするので再読したい。主人公の眼からみた景色、風景は美しく思えるが、描写を読み込み想像することが難しかった。再読の際には一文一文を噛み砕いていく作業が要る。舞台を離れた主人公が伍長と出会うまでの心理描写もなかなか難しく読み込めていない。鬱屈した雰囲気もあり苦手かも。後半は残酷なことが起きてはいるものの他人との関わりが生じるからか何故かそれまでより、明度が上がった気がした。戦争体験記かと思って読んだが、心理描写、キリスト教、命を食べることへの疑問など、精神的な描写が多くて、思考するヒントをもらえた気がする。続きを読む

    投稿日:2024.03.07

  • ますお

    ますお

    文体が独特に感じた。戦争という狂気的な環境の中、極限の状態から生じる人生観を追体験した気がする。
    面白く読めたかはさておき、人生観を考え直させるような純文学純文学した作品は好きだ。

    投稿日:2024.03.07

  • sambo0217

    sambo0217

    もろに文学だった。

    極限状態に陥った人間が、生き残るためにカニバリズムに走る、もしくはそれを抑制するさまがありありと記されている。

    娯楽の一つとして小説を読んでいる自分にはかなり重いが、戦争における個人の極限状態が見事に描かれた読むべき作品。続きを読む

    投稿日:2024.01.23

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    「敗北が決定的となったフィリピン戦線で結核に冒され、わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。野火の燃えひろがる原野を彷徨う田村は、極度の飢えに襲われ、自分の血を吸った蛭まで食べたあげく、友軍の屍体に目を向ける…。平凡な一人の中年男の異常な戦争体験をもとにして、彼がなぜ人肉嗜食に踏み切れなかったかをたどる戦争文学の代表的作品である。]

    「たじろがない人はいないだろう。飢えと孤独の極限状態で人間がどうなるかをみきわめようとした戦争文学の傑作である。が、手ばなしにすすめるわけにはいかない。ー圧倒的な描写力にぐいぐい引き込まれ、読者は異常な状況に放り出される。安易な救いや癒しはない。しかし、そこには戦争の一つの断面がある。ひとりの人間が生々しく存在している。覚悟して見届けてほしい。」
    (『いつか君に出会ってほしい本』田村文著 の紹介より)

    大岡昇平 1944年に召集されてフィリピン・ミンドロ島の戦線に行った。米軍の上陸によって山中に逃げ、翌45年1月に捕虜となりレイテ島の収容所に王られた。戦後、戦場の経験を書き始め、すぐれた戦争文学を残した。

    ーーーーーーーーー
    加賀乙彦(作家、犯罪心理学者)・選 大岡昇平
    ①『野火』(新潮文庫)
    ②『レイテ戦記 上・中・下』(中公文庫)
    ③『花影』(講談社文芸文庫)
    「大岡昇平といえば『野火』だ。これは間違いない。老兵が敗残の身になって逃げまわるが姿が、彫刻のように硬く彫り込まれた文体で書いている。『不慮記』の事実性がそげ落ちてしまい、完全な小説に昇華した。事実の描写ではなく、文章が事実を突きつけてくる。書かれたことは、事実よりももっと現実味を帯びてきて、読者の頭から去っていかない。それほど文体が力強かった。つまり、事実は消えても文体はそっくり残って古びて行かない。」
    (『作家が選ぶ名著名作 わたしのベスト3』毎日新聞出版 p94より)
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    投稿日:2023.11.01

  • ノンストップヒデキ

    ノンストップヒデキ

     味方に見捨てられた。戦地にあって病に斃れ戦えない以上、軍隊の論理からすれば、当たり前なのだろう。見捨てる側もされる側も人間。そこに、人間らしさというものは、互いにもうない。
     屍体の描写が淡々となされているのが、余計に不気味さを感じさせる。自分の足についた山蛭を食べる場面には、気持ち悪くなった。そして、ついに人肉を…という場面。読むのが辛い。
     この小説にも、最後には希望が待っているのだろうか。
     生きて帰れたことが希望なのか。書いたことなのか。この小説が、この惨禍が繰り返されることの歯止めとなることか。そもそも、希望そのものを期待してはいけない話なのだろうか。
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    投稿日:2023.10.24

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