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あなたのための物語
あなたのための物語
長谷敏司/早川書房
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総合評価

77件)
3.9
21
25
16
6
0
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    このレビューはネタバレを含みます。

    死についてのお話。 死に近づいていく主人公の肉体的な苦しみ、精神的な葛藤が克明に描かれていて、考えさせられた。 読むのに1週間かかった。いい読書体験だった。

    0
    投稿日: 2025.11.04
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    実はこの本をはじめて読んだのは2年以上前なのだけど、あまりにも考えを迫られる衝撃が大きくて、何度もくりかえし思考を引き戻してしまうような本だった。おそらく、この本をどう受け止めるかは、身近な人の死や病によって、人間というものの限界に直面させられたことがあるかどうかによって、とても左右されるのではないだろうか。 小説の舞台である近未来では、革新的技術によって、失われた脳神経が復元可能になっているだけでなく、同じ技術を使って社会に蓄積されたデータベースを利用することが可能になり、人の能力の飛躍的な拡大が可能になろうとしている。だがそれは、個々の人間の神聖さがはぎとられて、他と置き換え可能な・また編集可能なひとつのテキスト、データベースの一部になるということをも示唆している。 その可能性をすでにはっきりと見てとっている存在にとって、ひとつのテキストにすぎない己の死をどう受け止めうるのか、ままならぬ肉体の苦しみに意味など見出しうるのか? これは、ただひたすらにこの問いをめぐって格闘する小説だ。そしてこのおそるべき可能性を示されてしまった読者もまた、この問いを自らの問題として考えることから逃れられなくなる。なぜなら主人公と同じように、ままならぬ世界への抵抗を糧に生きる者も、主人公の母と同じように信仰に生きる者も、いずれも自己のための物語を紡ぐテキストであることに変わりはないということも、またこの小説は突きつけるからだ。 だからこそ、他者のために物語を紡ぐべく生み出された人工人格の存在が、驚くべき結論にたどり着くことを、主人公の格闘とともに、読み終わった後も何度もくりかえし考えずにはいられなくなる。 読むのは難しくないが、楽な小説でもない。にもかかわらずこれは、読む人にとっては、忘れられない本になる。誰のものでもあり、あなたのためだけのものでも物語に。

    0
    投稿日: 2025.11.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    人間の人格や脳に触れ、それを改変することができるというのは、人間の神聖さを犯すことであり、その価値を著しく下げるだろう。今、実際にこのような技術が開発されているのかどうかわからないが、もしやするとこの世界はすぐそこまで迫っているかもしれない。 人工知能的な「wanna be」に小説を書かせる。現在のAIに人間がやらせていることとほぼ同じだが、「wanna be」が違うのは人工ではあるものの、知能だけではないことだ。体は立体映像で実態はないが、感覚センサーで見たり触れたりすることができる。サマンサのために役立てることはないか常に尋ね、あくまでも道具としてしか接しない彼女にいつのまにか愛情を持つようにもなる。そして、彼女ですら想像のつかない自死を選び、その目的もまた彼女であるという。簡単に愛とはいうものの、そこには人間の真理を追求するかのような思いが込められていた。 あなたのための物語。サマンサのために彼が書き上げる物語であり、彼自身のための物語でもある。

    0
    投稿日: 2025.08.21
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    AIが実用化されてきたので、自分の声を残して生きているフリができるとラジオパーソナリティが言っていた。 本作でSFの世界足らしめているITP(Image Transfer Protocol)も、脳内の神経の動きをそのまま伝えることができるというもので、知識や感情が可視化され、伝達可能になるというもの。 その開発者が死に直面して、人間とは何かを考え、ITPで出来ることできない事を考える。 難解だったが、現在だからこそ考えさせられる話だった。

    0
    投稿日: 2024.10.20
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    SF作品としては派手で分かりやすい展開がなく、地味である。 でもこの物語から目が離せない。 テクノロジーの進歩と決して逃れられない一人の人間の「死」。それを見つめるように物語は進んでいく。死に向かう者の肉体や精神が苛まれていく様は悲しく、息が詰まりそうだがどうしてかこの物語からはそんな風に見えない。文体のなせる技だろうか。 仮想人格である《wanna be》との絆には切なさがあるし、静かな物語なのに迸る感情がある。

    2
    投稿日: 2024.07.28
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    ナノマシンに神経の代役をさせる技術を流用したITP(イメージ トランスファ プロトコル)。 脳の中で擬似神経を操りあらゆる経験/感情をダイレクトに伝達できる。 不治の病に侵されたサマンサの肉体的苦痛の描写。 ITPで作られ人間の感情を与えられた仮想人格。 その人格が創造性を示す為に書かれ続ける物語。 悲劇それ自体と美しいものを一緒くたにしていない。 読んでいる間、世界が精確に描かれているんじゃないかという実感が確かにあった。 設定や世界観のユニークさだけじゃない、文章自体にSFのおもしろさが詰まってた。 ずっと読んでいて、今月はもう一つ分、人生に触れた気分。 『彼女の仕事にも、経済活動以上の意味などない。ITPも、新しい可能性を与えるものではない。新しいサービスの代価を払える人間と、そうでない貧しい人間とを振りわけただけだ。大学の学費をパートタイムで稼いでいたかつての彼女自身のような経済弱者が、これからはITPを買えない不利を背負うのだ。』 『それが伝統だから?人間にとって、死ぬことが伝統だから、死ななければいけないの』 『ひとつひとつのできごとに、つながりはないわ。シークエンスを作っているから“物語”性を感じるだけよ』 『未来を、現在の人間たちがゴミ箱にするのは、それでも公平じゃないわ。形而上学のつもりで二十年後の未来へ希望を託したら、二十年後には現実になった問題を受け取らないといけないのよ。年数を曖味にして“未来”って呼び続けたって、いつか現実になるってことは変わらない。今の世界だって、過去の誤答を、自分たちの身を守るために修正してるじゃない。“未来”に余計な期待をすることは、理性的だと思わないわ』

    1
    投稿日: 2024.05.26
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    #あなたのための物語 #読了 今日、AIが生活を便利にしているけれど、人間の感情と肉体をAIが真に理解する日はこないだろうなと思った。 だからこそ人間は人間らしく生きることが大事だ。 #長谷敏司 #早川書房 #読書

    0
    投稿日: 2023.02.25
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    うーん、面白いは面白いのだけれど、どうしても理屈が先に立つというか、その理屈がややくどくて物語に入り込めない

    0
    投稿日: 2022.12.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    仮想人格である《彼》が健気で健気すぎて、スキィ!!ですが、読み終えて頭に浮かんできたのは人間のことばかりでした。 病と死の容赦なさが疑似体験したかのように迫ってきた本でした。親しい人間の闘病や死に立ち会ったこともないわたしには、死はまだ身近に感じられない現象で。入院手術の経験があっても、それは死病じゃなかったから、小説に描かれるサマンサの身体の痛みも、死の予感と恐怖も、健康な人間と社会への嫉妬や疎外感も、本当にリアルな意味では受け取れてはいないはず。だけれど、サマンサのすぐ隣で彼女を見て体験したような気分がしたのです。 サマンサは、科学は不満足への抵抗だとし、信仰を否定し、仮想人格を道具として扱え、傲慢でエゴイストで、孤独だけど強い人。 死ぬときはひとり。そうなの?そうかも。サマンサはひとりきりで苦しい死を迎える。ほんとうに容赦がない。 仮想人格の《wanna be》は脳神経の網を言語化するITPという技術の実験とパフォーマンスのために創られた。用が済んだら削除される存在だった《彼》は、そうはされずに、サマンサの研究室に残され、彼女のために物語を創作し続け、ただひとりの読者である彼女へ無私の好意を向けるようになる。 《彼》の「私は何かのお役に立てますか?」は、そのように創られたから出る言葉なのだと知っていても、なぜか暖かく沁みるし、次第に成長していく様子は、健気だな、崇高だな、と思わせてくれる。そんな風に声をかけられて、優しくされたら、わたしはサマンサほど冷静でいられないかもしれないなぁ… 「死」について《彼》が出した答えは、古くから擦り切れるくらい作られてきた物語を思い起こさせるドラマチックさで、《彼》の成り立ちが《物語》であることをよく表しているように思う。 サマンサはそれを受け止める事で、《彼》のリアルに描き込まれた登場人物になり《彼》はきっと満足していったのだろう。だから、《彼》の遺作をサマンサが読む箇所は、当然のように感情を揺さぶられた。救済と断罪が同時に描かれていて、心の中が嵐のようだった。 恋とか愛とかそんなので表せない、存在そのものを向けられるというのは、最高の幸せなのでは? だけど多分、真のクライマックスは、ITP人工人格として書き出された《サマンサ》と死にゆくサマンサとの会話なのかも。全てを曝け出す自分自身との対話。人格とは、肉体と死とは、物語とリアルとは。読後はしばらく放心したようになっていて、わたしはきっと「言葉を奪われる」良い読書体験をしていたんだろうなぁ… この本と出会えてよかった。

    0
    投稿日: 2022.05.28
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    死と向き合い、人間が尊厳を凌辱され続け 最期に全てを失ってしまう物語 サマンサ程何かを成してはいないが境遇として重ねてしまう人は現代社会には多いんじゃないだろうか

    0
    投稿日: 2022.05.27
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    文章中に出てくる表現が詩的というか、比喩表現がいっぱいあって、あんまり目にしないものだけど、どれも素敵だなと思える。 人間って、なにか他の生物とは違うものを感じてしまうけど、この本を読めばそんなに大したもんじゃないってサマンサ同様思えてくる。

    0
    投稿日: 2022.03.09
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    死の物語です。 死に直面し、呪い、足掻き、目を逸らし、誤魔化し、悪罵を撒き散らし、孤立して、苦しむ。 そして力尽き尊厳を奪われ動物のように死ぬ。 そんな物語を単行本1冊費やして描いたSF小説。 強力なAIや脳の編集技術の登場で個性や人格から聖性が奪われ相対化されゆく未来が舞台。 テクノロジーの発達を配置することで可能になった人の死の意味への純化した問いかけを徹底的に突き詰め、残酷なほどに端的に、結論を差し出し作者は言う。 これは「あなたのための物語」だよ、と。 私の、そして君にも、いつか必ず訪れる最期の物語。 心の弱ってる人は読んだらダメな物語。

    6
    投稿日: 2022.01.26
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    面白かった。SF苦手だけど楽しく読めた。 死についてふわっとしか考えられてなかったのかも、と思った。

    2
    投稿日: 2021.07.01
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    読了するまで、海外作家作品の翻訳本かと思ってしまった。それだけ設定が近未来的(SF久しぶりだからそう感じただけの可能性もある)で、さっぱりとした語り口だった印象がある。 それだけにラストが切ない。

    5
    投稿日: 2021.05.06
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    SF的な展開と人間的な描写と、そのレベルが双方高く、それでいてちょうど良い塩梅になっている。 ITPという人工的に作られた人格が、この小説のSF的な核。他には、未来社会のテクノロジーとして登場する紙状端末や全自動車、羊水ベッドなどのパーツがもよかった。さらに、SFの名作たちが引用されるのはこれまたSFファンの心をくすぐる。しかも、未来世界での、著作権が切れたフリー蔵書というのがまたメタSF的。 人間描写も良い。ITPというテクノロジーを媒介として、人間とは何かを再発見するような作品。そこでは多面的にテーマが描かれる。信仰と科学。死と生。肉体と精神あるいは知性。人間と人工知能。都会と田舎。科学的真理と世論。死と愛。変わるものと変わらないもの…等。複合的なテーマを多軸で扱う、力量がある作家と見た。 それからシンプルに、文章の醸し出す雰囲気がよい。日本人作家が書いているのに、どこか海外ドラマチック。映像的で、海外的。だけど日本語で書かれたのだから、失敗した翻訳にありがちな読みにくさはもちろんない。 物語の終盤には驚くほど没頭した。広げた世界の収斂のさせ方が巧すぎる。 サマンサは wanna be が解き放たれた様に救われた。そして「過去の自分」に物語を与えることで、自分自身も救った。と読んだ。また、そこでは「人間性の境界」が規定された。それはとても分かりやすく、結末として収まりが良かった。 それにしても、最後まで「物語」で貫いてみせるのは、上手いねぇ。読者もまた「物語」られているというメタ構造。 面白かった。これまで読んできた国内SFの中でも、ベスト5に入るんじゃないかってくらいの傑作。再読必至。数年後にまた読み返したい。 (書評ブログもよろしくお願いします) https://www.everyday-book-reviews.com/entry/2021/02/11/%E3%80%90%E6%AD%BB%E3%81%AE%E8%81%96%E6%80%A7%E3%82%92%E5%89%A5%E3%81%90%E3%80%91%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E_-_%E9%95%B7%E8%B0%B7%E6%95%8F

    19
    投稿日: 2021.02.11
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    SF。AI。 愛と死の物語。 ここまで主人公の内面をリアルに描写した作品を読むのは初めてかも。 はじめの7ページの描写が、いきなりインパクト強い。 内容はなかなか難しいが、心に響くシーンも多い。

    0
    投稿日: 2020.06.20
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    サマンサ・ウォーカーは死んだ。 サマンサ・ウォーカーがひとり、病気療養中の自宅でこの世を去ったのは、35歳の誕生日まぢかの寒い朝だった。 それが、彼女という物語の結末だった。 という書き出しで始まる、長谷敏司の近未来SF。 序章で7ページに渡って死の瞬間を描写し、本編はそこに至るまでの、長い、死への物語です。 人間の脳の状態を再現できる、つまり人間の感情や、人間の人格そのものを再現できる、 ITPという言語がメインのSFガジェットです。 感情を人工的に操作したり、コンピュータ上に1から作り出した人間と区別のつかない人格が出てきたり、 イーガン的というか、昨今のSFの最先端テーマと言える1冊。 内容も描写も濃い、重い。 長谷敏司の独特の文体もどうにも読んでて疲れるのですが、それでもぐいぐいと引っ張っていく力はさすが。

    0
    投稿日: 2019.09.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    尊敬もへったくれも無い、生々しくて痛々しい「死」の描写から始まる。 主人公のサマンサの周囲や社会、死に対する抵抗《プロテスト》な生き様が、余計に読んでいて精神にハードパンチしてくる。 『小説を書くためだけに開発された仮想人格』の「ワナビー」はサマンサのために、彼女を喜ばせるために、膨大なサンプルを吸収して小説を書く。 では、人類は誰のために、何のために太古から小説を書いて来たのか? 別に小説でなくても良い。漫画でもイラストでも彫刻でもアニメーションでもクリエイトするものなら何でも良い。 需要と供給のあるビジネスだから?それだけでは無いはずだ。 作中の言葉を借りれば「自己愛」なのかも知れない。 サマンサに「恋」したワナビーは、たった一人の読者の彼女のために愛を込めて、小説を書く。 コンピュータのお決まり文句の「何かお役に立てることはありますか?」が《彼》の愛の言葉であった。 サマンサの死に対する抵抗と怒りの狭間で、仮想人格のワナビーの愛の言葉が紡がれる。それが余計に痛々しい。人工物であるが故に。 そして、サマンサとは対照的に《彼》の死は儚くも美しい。 では一体、そもそもこの作品は誰のための物語なのだろうか?

    1
    投稿日: 2019.05.17
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    人工知能にハリー・ポッター全巻を読ませ、続きを書かせてみる実験が昨年行われたが、ロンがハーマイオニーの家族を食べたりハリーが7ヶ月間階段から転げ落ち続けたりとパンチの効いた内容になったようだ。 この実験結果を聞いて笑いが込み上げてくる反面、どこかホッとした人も多いのではないだろうか。人間は「生身の肉体がある」ことと「感情を持っている」点では機械を超越した存在であると信じている人は特に。 本書では義肢の一環として人工神経が生み出された近未来が舞台となり、実験の一環として機械に小説を書かせるのがテーマ。死が間近に迫った科学者が、死に対する恐怖と自己愛、小説の存在意義について思いを馳せる展開は読んでいて納得させられる考察が多い。人間と機械はどこまで近づけてどこまで理解し合えるのだろうか。

    0
    投稿日: 2019.01.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    死に直面しているとはいえ、主人公が理系の技術屋で割と幼少のころから人生を達観してる風なのに感情的すぎる。 合理主義な思考が次第に乱れて、ってんなら分かるが、最初からめちゃくちゃ更年期障害みたいな悲観的死の記述がずーっとずーっとずーーーーーっと変わりなく続く。変わってるのかもしれないが伝わってこない。そこが長すぎるし冗長だという書評もよく見られる。 シミズ的には開発業務に従事してる人は、職業柄トライ&エラーを繰り返しながら抜け道を見つけるなどの思考的前進が欲しいし、そこが主人公に全然なく、ぶっちゃけステレオタイプな女性像なのに世界的天才!すごい!みたいな描かれ方をされるのでギャップを感じて物語に入り込めなかったんだよなー。 でもwanna beには激萌えです。

    0
    投稿日: 2018.09.29
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    短編集『My Humanity』を読んで、長編も読んでみようかなと思い購入。 若くして成功者となった科学者、サマンサ・ウォーカーを中心に描かれる物語。 成功者だった彼女が『余命半年』と判明してからは、SFとしての話が一転、どちらかといえば『死』をテーマにした哲学的な話が混ざっていく物語となる。 『余命半年』からわかるように、明るい物語にはなりえない。なので、精神的に元気なときに読むことをオススメする。 つまらないということはなかったが、個人的には短編集の方が好き。

    0
    投稿日: 2018.09.03
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    初敏司。ネットにて面白そうだったので、購入。第30回日本SF大賞候補。人間とは何か。死。テーマが深遠過ぎて…作者ホント凄いなぁ。《wanna be》のサマンサへの想い——。最後は辛かった。作中“何故、物語を読むのか?”という考察がなされているが、これからじっくりと考えたい。 最後に、何より自分の健康が一番大事なんだと改めて感じた。素晴らしい作品でした^^ 星五つ。

    1
    投稿日: 2018.08.15
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    ちょっとずつ主人公とAI?が 打ち解けていく展開を無意識に期待してたので拍子抜け、全然違うところに重きを置いていて しかもちょっと長く感じて読むのが苦痛になってきてたので二つ星

    0
    投稿日: 2018.03.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    洋書の翻訳?と初めは思ったくらいに、なんだか文体と相性が合わず、入り込めるまで興味を持てなかったけど、ラストの方は引き込まれました。理系の会話というか、喋り方についていくのは難しかった。

    0
    投稿日: 2018.02.07
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    http://hinbeee.blog31.fc2.com/blog-entry-2786.html

    0
    投稿日: 2017.02.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ラノベ出身こんな筆力とは驚いた!死に物語はそれなりに読んできたのだが、本作みたいな最初から最後まで「死」を全うしたような作品は実に珍し体験だった。死の粉飾もせず、生の執着もせず、どことなく穏便で冷酷で鉄錆な匂いがする。

    0
    投稿日: 2016.12.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

     科学者であるサマンサと機械であるwanna beの対話から、生や死について考えさせられた。  いくら御託を並べようとも、意味を考えても、ずっと昔から死とは変わらないものであるし、定義できないものだと思った。  

    0
    投稿日: 2016.10.30
  • 難しい!と思いました

    死にゆく科学者が自分の作ったシステムを通して自己を振り返る。 彼女の発明は人間の人格をhtml言語のように書き出せること。これを別の人が自分にコピーすることで知を共有できる。そんな画期的な発明であった。 その検証のために作られた人工人格は彼女のために物語を書くために作られた。 そんな人工人格との会話の中で自分の死を見つめ直す… そんな話なのですけど、難しかった~ 残っているイメージがトイレに座っているゲリのおばさん… 主人公のキャラが強くてなかなか入り込めなかった。 非常に難しい。素直な感想です。

    0
    投稿日: 2016.04.27
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     人はいつだって孤独だ。いつだって一人で死ぬ。  それは分かりきったことで、でも人間はそのさみしさには簡単には耐えられない。  なんでも機械がしてくれる世界。ホログラムで服装が自由にできる世界。誰よりも何よりも自由であったはずが、結局はがんじがらめになっていた。

    0
    投稿日: 2016.04.06
  • (ファミチキください)こいつ直接脳内に・・・!

    ITPはこんなんしたいプロトコル 1984年から百年後 神経の発火と電子信号 人は道具か道具は何か 過去に対するプロテスト 未来に向ける物語 私と《私》 《あなた》とあなた 〈《私》はお役に立てましたか?〉

    1
    投稿日: 2016.03.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

     人間が死ぬということ。  SFってカテゴリ作ってないからその他エンタメで登録しておくわ。ちょっと気になったので読んでみた。ミステリじゃないSFを読む機会って、今までなかったかもしれない。  森ミステリを読んできたから、こう、科学者が人間くさいことが新鮮でした。科学者だろうがやっぱり死ぬのは怖いんだなぁ。  こう、脳の信号を言語化する、人間の脳をそこまで分解してきたのであれば、もう少し自分に対して冷静であってもいい気はしたんだけどな。そこまで割り切って考えることができなかったから、だから彼女は「ここまで」だったのかもしれない、って今思った。  哲学における同一性の問題の思考実験みたいだなって。頭の中身をそっくりうつすことができたら、そのPCにも人権を認めるべきか否か、みたいな。マトリックスにも似てる。水槽のなかの脳。  結局「肉体」を持つことが、「人間」であることの条件の一つ、みたいな結論だったと理解しました。や、まあ、そこに異論は唱えないけどね。  ただこう、まあ、読んでてすっごい胃に来るというか、腹が立つというか、苛々するというか。書き方が上手いんだろうなぁとは思いました。結局なんだろうねぇ、自分は「唯一」であり「特別」であるということを知りたかったのかなぁ。要は「自己愛」だよな。肉体を持つ人間はどこかそういう面がある。肉体を持たない神様とかデータベースだとそういう面がない、だから「死」ってものをあっさり受け入れることができるのかな。主人公がどこまでも傲慢で、人間くさい話でした。  一番ぞっとしたのは物語中盤、「空白の三秒」「灰色」のくだり。ここはつまり、「死」というものをデータ上で理解した、ってことなのかなって。こうなる、という具体的な状態、自らが経験したことにより付随する感情を目の前に突き付けられたら、冷静ではいられないよなぁ。  正直もうちょっと酷い終わり方をいろいろ考えていたんだけど、どこまでも現実に即した絶望がありました。  最後の最後で《wanna be》が「死」を選んだ、という進め方はとても好き。  抜粋。《wanna be》の言葉より。 〈生きていることを特別視しすぎではありませんか。すべてはデータなのだから、終わったら終わったでいいのではありませんか〉  肉体を持たないテキストだからこその考え方。  ちょっと追記。六ページから抜粋。 百人の他人に見守られようと、人は孤独に死ぬ。そして、外界は人格の基盤だから、それをうしなう断末魔は、自然に動物的なものとなる。  ここにすべてが詰まってたような気がした。

    2
    投稿日: 2016.01.30
  • 人工知能の恋

    開発した人工知能(的なもの?)とのラブストーリーとして読みました。SFをそれほど読み慣れていないので、近未来的な設定を味わうには私には力不足で、雰囲気として浸るくらいしかできませんでした。 それでも、ひとりの研究者が避けられない病による死を前にした恐怖はとてもリアリティがあり、そこで差し出される人工知能(的なもの。でももっと機械に近いので余計愛おしく感じられる)からの、純粋にみえる親愛の感情は、読者である私自身も救われるようでした。 ままならないことばかりで、自分のせいで孤独である主人公の生活はモノクロで、人工知能とのやり取りが徐々に色づきカラーになっていくように感じます。 泣けました。

    3
    投稿日: 2015.12.04
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     物語について考えた事が有るだろうか。  なぜ物語が好まれ、読まれるのか、何の意味があるのか。  これは、1人の女性のために人工知能(厳密には違う)が物語を描くお話である。  あー。ダメだ上手いこと言葉が出てこない。  SF嫌いじゃなくて、本を読むのが好きならオススメです。

    0
    投稿日: 2015.09.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    若くして成功者となったサマンサは、病によって死ぬ。死の前には誰もが平等だった。我々はけっして「死」からは逃れられないからだ。では、長くはないその瞬間までに、人はなにをしたいと考えるだろう。そうして、どう死にたいと思うだろう。 これは、サマンサがうみだした人工神経制御言語・ITPにて記述された仮想人格《wanna be》との対話のなかで、彼女自身の「死」と向き合っていく物語だ。《wanna be》は、広義のAI人格であり、プログラムされた人工的な人格でしかなかった彼もまた、サマンサや人間たちとの関わりのなかで成長してゆく。「恥ずかしい」とはなにか。「恋」とはなにか。「恐怖」とはなにか。ひとつずつ人間的な感情を習得する《wanna be》は、やがて彼女のための物語を紡ぐようになる。 病の苦しみや、衰えていく肉体、サマンサの人間性が剥離していく描写にはいっさいの容赦がない。けれども、彼女が「死」を受け入れ、「死を受け入れていなかった自分」を赦すシーンはとてもやさしいと思う。 これは、「わたしのための物語」であり、「あなたのための物語」でもある。 ――《wanna be》の意志は、目覚めた第一声から変わらない。〈お役に立てますか〉、それが出発点だ。それは彼女が組み込んだ命令であって、《彼》が機械であり道具である証明だ。 けれども、その言葉に本物の感情が籠もるのなら、そのひとことは彼女へ向けての切実な愛の告白でもあるのだと、わたしは思う。

    0
    投稿日: 2015.08.29
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    図書館で。ものすごいユニークな恋愛物語なんだろうな。肉体という殻に閉じ込められた女性と造られた演算機の中でのみ意思を表現できる知性との。 肉体が耐えられない痛みを緩和させるために脳内では脳内物質を作り出したり、信号をシャットアウトすると聞いたことがあるので死に至る際はもう少し安らかな眠りだとありがたいなあとは思います。が、癌の終末期なども痛がる方がいると聞き空恐ろしいなあ… とはいえ彼女も脳内に埋め込んだ機器に感覚を遮断させるとかそういう利用方法を使えばよかったのになあとか思ったり思わなかったり。だったら話は変わっちゃうけど。そして物というものが基本的に特定の目的をもって作られたものであり、奉仕することがその役割である、というのが救いになっていいのだろうか、という疑問は残るけれども。面白かったです。が、ちょっと体調を崩したときに読んだので少し落ち込みました。

    0
    投稿日: 2015.03.13
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    早川書房の『四半世紀のベストSFフェア』で購入。 テーマ自体は割と昔から扱われているものだが、ストーリー自体はこぢんまりしていてスケールの大きさは感じられない。その反面、余命を宣告された主人公の葛藤や焦燥感、思うように動かない身体に対する苛立ちと苦しみ、そして人工知能との交流など、心の機微が丁寧に描き出されていると感じた。主人公の弱さと強さの間で揺れ動く様子が生々しい。 SF的ガジェットは盛り込まれているが、主題としては文学・一般文芸に属しているように思う。

    0
    投稿日: 2015.02.21
  • 絶望的だけどじわじわと心に響く

    痛くて辛くて絶望的な物語。 人工知能を通して理性と感情と肉体(死)を,人間の本質を,突きつけられる。

    2
    投稿日: 2014.12.31
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    一回読んだだけでは理解できないように思う。 私は図書館で借りたため、返却期限が迫っていたのもあり、一回読んだだけで返してしまった。 もう一度借りて読み込んでみたい。 物語を読み進めていく毎にタイトルの意味がじわじわと分かり始め、ページをめくる手が止まらなかった。 wanna beが書いていた物語の意味は何であったのか、もう一度読み直したい。

    0
    投稿日: 2014.12.09
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    死をめぐる葛藤。 酷薄で粘着質な天才に、人工知能という鏡を与えて、深く死の淵を覗かせる。優しい気持ちに逃げずに、死の苦味を味わえる。

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    投稿日: 2014.11.02
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    未来設定のSF。SFは頭に余裕がないと設定についていけそうにないような気がして、仕事にバタバタしている間ずっと積んだままになってたのですが。仕事にバタバタしてるのは引き続きにもかかわらず、読みたくなって読んでみました。 面白かったー。予想に反して全編にわたっていろいろな葛藤や、絶望や、エゴイズムに溢れてて、でも読み進めるのがいやにはならなかった。綺麗事にはならないんだけど、自我の芽生え方には心を打つ描写があって、それがなかなか主人公の思い通りにはいかず、わざとらしくなさすぎてよかったです。

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    投稿日: 2014.11.01
  • 少し玄人向けのSF作品です

    ITPと呼ばれる人工知能(人工知能としましたが、的確な表現が思いつきませんでした)の開発責任者となったものの、開発中に、ただ死を待つだけの身に突如なってしまったサマンサ。彼女が死に直面し、そして死にどう対処していくのかというストーリーとなっています。 ひたすら死について考えさせられる作品なので、重い内容ですが、wanna beとの会話や彼女自身が取る行動や決心には、深く考えさせられました。そして非生命であるwanna beとサマンサの死に関する会話が、この作品の大きな盛り上がりであり、そのあとに続く「とあるもの」との会話も、生命や人工的な知能について、問題提起していると感じました。 ただ文章が分かりづらく、そして長すぎると感じ、その為★は3つにしました。しかしSF作品の読書としては、十分に楽しめました。 日頃読書をしない方や、初めて読むSF作品としては、ちょっとオススメはできませんが、内容自体は素晴らしい作品です。

    4
    投稿日: 2014.08.24
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    人工知能と生命、生と死、物語の意味、科学と職業、など、沢山のテーマを重層的に語るSFか。とにかく重いという印象だけど、面白いし、色々考える。ストーリーとしては一直線なのに、盛り込まれた要素は多彩。 でも実際のところ、いくつかの要素をエクストラボレーションして、ボトムアップ的に作り上げた物語という感じもする。シミュレーションのレベルが高いだけに、沢山の要素が入り込むし、それぞれが掘り下げられる。 予備知識なしに読んだけど、この作品は伊藤計劃の死がきっかけに書かれたのだろうか? だとしたらちょっと読み方が変わるかも知れない。一人称で書かれた病気の描写のリアルさなど。 <サマンサ>の最後の質問が秀逸。ある意味、物語の意味、を端的に言いあててるかも。

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    投稿日: 2014.03.29
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    2083年。人工神経制御言語ITPが開発され人工知能はより発展しようとしていた。仮想人格「wanna be」に小説を書かせ、その創造性を確認していた。 あり得そうな近未来であり技術だと思った。人間を肉体と人格に分けることが出来るITP。人格をコピーする事も出来る。そうなったら肉体なんていらないと思える。この物語では主人公のサマンサが死病に侵され、その禁忌に触れていく様と仮想人格とのディスカッションも描かれる。「人間なんて情報集積体」私もそう思う。

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    投稿日: 2014.03.23
  • 意外な面白さだった

    人の感情、知識、経験を取り出すことのできるナノマシン(すいません、理解が追い付かずざっくり自己流です)を開発中の女性が主人公。 装丁からハードSFかと思ったら、舞台設定が近近未来なせいか道具立ては驚くほど身近。 いかにもありそうだし、すぐにこういう世の中になるんだろうというシチュエーションがたくさんあって、今私たちはSFの世界に生きてるんだなぁと思わせられた。 しばらく読んでから気づいたが、話は主人公をピンポイントで追っていていつまでたっても登場人物は増えないし、舞台となる場所も限られてる。なのに全く飽きずに読み進められる、というのは作者の力量のおかでだろうか。 主人公がちょっとぐるぐるしちゃうのが気になったけど、死にまつわる話なのでわざとそうしたのか作者もぐるぐるしちゃってるのか・・・。 このテーマでこの設定でただ主人公を追うだけでこの量を書ききったのはすごいと思う。 ロボットも宇宙も未知の生命体も出てこなくてもSFが好きという人は楽しめるでしょう。

    5
    投稿日: 2014.02.18
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    死に直面した主人公が生々しい。久しぶりに出会った気がする、濃密な人物描写に。そしてそれと対局にあるかのような<wanna be>。<彼>の成長と最期の選択がせつない。

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    投稿日: 2013.11.25
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    長い割にストーリーはあまり動かず、単調と言えば単調だが、ただ「死」に向かう一人の女性の心境の揺れ、葛藤がこれでもかと書き殴られている。何となくお洒落な小説のタイトルは、読んでる途中で得心がいき、読み終わると悲しくて胸詰まる。また本筋とそこまで関わりはないが、「小説は読み手に言葉を与えるものではなくて、読み手から言葉を奪うものだ」という表現が途中にあり、これについてはもう一回改めて考えてみたい。

    0
    投稿日: 2013.11.10
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    医療分野において発展途上であった未来SF?小説。何度も時が経っても、誰にでも死はやってくるという、逃れられない生命の終着点を一人の女性サマンサ・ウォーカーの病気発覚から死ぬ間際までを描いている。じわじわと彼女の体が灰になっていく描写は読んでいて、妙に臨場感があった。 生きることへの思いを描いた作品が多い中、死を描いた作品としては考えさせる作品としてとても面白かったなと思う。

    0
    投稿日: 2013.10.16
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    宗教を否定し、科学の力を持って「生」「死」に抗う主人公・サマンサの人生を、死に至るまで克明に綴った小説。SFというカテゴライズじゃ収まらない気がします。あちこちに鏤められた言葉を拾い始めると、読み手も哲学的にならずには居られません。 「地には豊穣」を読んで興味を持った作家さんです。 情景描写も心理描写も緻密でくどい程にキッチリ描き切る筆力が如何無く発揮されていました。正直、此処まで書かなければ半分の頁数で済むんじゃないかと思う程。その緻密さあってこその、最後の一文の重さ。 読んでいる間はまさに「言葉を奪われ」ている状態でした。 スタンディングオベーション。

    2
    投稿日: 2013.05.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    生と死、デジタルとアナログ、生身と機械、過去と未来、信仰と科学等、様々なものが比較して描かれていて面白かった。最も大きなテーマである「生と死」について深く考えさせられ、自分の「死」が不可避であることを自覚させられる内容だった。個人的には、サマンサがオレゴンの実家に戻って過ごす部分が、とても好きです。

    0
    投稿日: 2013.01.04
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    死に向かう人の意識をここまで描写した作品を読んだのは初めて。 著者は一回死んだ経験を持っているのかと思ってしまった。 誰でも平等に訪れるただ一つのもの。その事について、真剣に考える時間をくれたこの作品に感謝。

    0
    投稿日: 2012.11.13
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    開いて3分で寝てしまう。そんなことが何度もあった。 でも、読むのをやめられなかった。 決定している「死」に向かうなかで、「生」を見つめていくサマンサ。 決して器用ではない彼女の生き方と、仮想人格《wanna be》の生き方が 重なる物語。淡々とした言葉に、こんなに心を揺さぶられるとは思わなかった。

    0
    投稿日: 2012.10.21
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    ”伊藤計劃以後”という宣伝文句にひかれて読んだけど、難しい。 苦痛にいともたやすく支配される、肉体と繋がった精神と、言語で構築される理性としての精神のせめぎあい、のように読み取りました。

    0
    投稿日: 2012.10.18
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     プログラムされた人口知能は、その開発者であるサマンサと心を通わせるというお話である。サマンサは病魔に冒され余命1年と宣告され、自分が死を受け入れるまでの過程を人口知能プログラム(wanna be)に述懐する。西暦2083年を舞台に、その世界観を感じられる小道具はいろいろ描かれている。残念なのはストーリーのつまらなさに尽きる、感動するまでには至らない。

    0
    投稿日: 2012.09.08
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    短編などで気になっていた作家の本。デビュー作のラノベを読んでいるとやはり同じ作家なのだなと痛感した作品。 本のメインテーマは、「死」 どうもこの作家はデビュー前に大病をして死というものを意識してきたとのこと。当然のごとくこの本は非常に重い。 エンターテイメントとしては、地味極まりない。アクションシーンなどはない。「死」ということを中心に、内省や対話をくり返すばかり。どうも意図的にこんな構成をとっているようだ。ほかのテーマとして、人間の身体論や物語論などに興味がないと挫折するだろう。特に、ある程度、人生を振り返るようになった自分にとっては、唸る箇所が多かった。 若くして成功した女性研究者が、不治の病に侵され、余命半年と判明する。ITPという人間神経の制御システムを開発しており、実験で作られた人工人格に小説を書かせていた。ヒロインとその人格との対話、ヒロインの死に接しての心情の変化と結末。 ヒロインの人生や彼女の感情、論理展開が切実に感じた。結局、人間たらしめるのは死ぬことなのかと。いろいろ考えることが多かった本。SF的アイデアや哲学的論議がスリリングだった。ここまで読後感が重いのは久しぶりだった。

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    投稿日: 2012.08.12
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    SF的な要素はほとんど舞台装置に過ぎなくても、病に苛まれる主人公の心理が主題になってる。それだけにセンスオブワンダーのような楽しみはなくて、でも、憂鬱な気持ちを楽しめる(?)作品だった。表紙もタイトルも小説本体にぴったりでとてもよくできてると思った。

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    投稿日: 2012.07.28
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    ちょっと離れて見ると 喀血したようなこの装丁が気に入って買ってみた 珍しく古本じゃナイ!(でも姉へのプレゼント・・・) スゴク怖くなる序章で これはおもしろいかもしれない!と期待しつつ読み始めたが わりと知能が低いのでなかなかアタマがついていかなかった 痛みと不安が降り積もりつつ進む話でした 擬似神経とか人格とか(個人的には)ややこしくて 正直、途中で何度も寝てしまったけど 目が覚めると続きが気になるという 読みたいんだけど寝ちゃうジレンマ 後半はまったく寝なかったですが ひたすら胸苦しかった 途中、あれ、これって恋愛もんだっけ?!な部分で 鼻がスーンとなったりしたけど・・・ とにかく登場人物に容赦ない作家だなと思った 死んじゃうということの書き方が 容赦なくてそこがイイ つっこむところはあるだろうけど 非常に印象深い本なので 限りなく星5つに近い星4つ 星4つにしていたけど 日数たっても鮮烈に内容を覚えているので 星5つに変更します

    1
    投稿日: 2012.07.22
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    どうしようもなく人が死ぬ物語。 帯の文句通り、容赦も妥協もなく読者に「死」を叩きつけてきます。 そんなわけで読んでいてこれほど気分が沈んでゆく本もないなと感じました。 結構のめりこんで読めてしまったので、翻って自分の「死」があまりにも怖くなり涙が止まりませんでした。 私自身のメンタリティがサマンサと遠からずな部分もあるので、余計に叩きのめされた感じはあります。 サマンサの心の内も分析的に詳細に述べられているので、自分の醜い部分が丸裸にされた気分でした。 テーマも文体も相まって、読みにくくはありますが、もしかするとあなたの心を揺さぶる物語かもしれませんよ?

    0
    投稿日: 2012.06.30
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    重苦しい雰囲気の一冊。 叙述が回りくどいので(西尾維新的ではない悪い意味での)読むのが大変だった。 読了後も「何がテーマなのか?」がよくわからずもやっとした感触が残る。 絶賛されているが、僕は然程面白くはなかった。 SFではあるが、冗長すぎて。 伊藤計劃や円城塔のような面白さを期待していたのだが…。

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    投稿日: 2012.05.25
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    「日本人の書くSFは読みづらい(小松左京を除く)」と、最近つくづく思います。何故かというと、細かい心理描写をしたいが故の説明調なト書きが延々と続くから。さらに、そのト書きの過剰な美文調に辟易してしまうから。クドい文章に込められた想いもネイティブとしてわかってしまうから、すんごくナルシスティックな印象を受けちゃうんですよね。英語圏の人が英語で書かれたSFを読むときも、同じ印象を受けることがあるんでしょうかね? そんなわけで、この作品から受けた印象も基本的には上記の通りなんですが、以前に読んだ伊藤計劃氏の作品よりは読みやすかったです。ご都合主義の展開がそれほどなく、淡々とストーリーが進んで行くタイプの作品だからかもしれません。思ったよりも興味深く読めました。

    0
    投稿日: 2012.05.19
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    暗く重い物語です。読んでいて決して楽しくなるようなことはありませんが、ぐいぐい引き込まれてしまいます。 この小説を読んでいると、あと1ヶ月しか生きられないとしたら自分はどうするだろうと考えずにはいられません。 SF小説では、肉体は無くなって脳だけで活動している人間の描写がよくありますが、この小説では肉体こそが人間を人間たらしめているという思想で貫かれているように思います。 楽しい時間を過ごすための小説ではありませんが、死と生について深く考えさせられる濃い物語だと思います。

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    投稿日: 2012.05.05
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    「死」について意識する。これはある程度の年齢になると否応無しに直面してくる事になる。これまで数多の小説が扱ってきた題材だけれど、あくまでSFとして向き合った本作は個人的に斬新であった。 内容は、まさに主人公サマンサが、突然告げられた死に対して「足掻く」物語だ。先端のテクノロジーとパワーエリートの財力の全てを注ぎ込んでサマンサは死に抗っていく。淡々と語られていく「避けられない死」に向かう物語はまさに「容赦ない」 消えていくものとして社会からフェードアウトしていく中でAIと人生について向き合っていく。でも最終的に彼女は達観もしないし死を受け入れる事もない。極めてデジタルな物語だと思う。人工人格と語られていく「生」とは「心」は何なのか?と言う問題。 とても客観的に語られる物語でエモーショナルな話ではないですが、紛れも無く「とてもSF」です。

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    投稿日: 2012.04.26
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    深読みしようと思えば、いろんなテーマのガンボになることができる小説。それゆえ、面白い。 でも、風邪気味で、頭痛と悪寒と凭れた内蔵で体がしんどい時に読んだので、ほんとに救いがない気分になった。 明るい気分になるために読む本ではない。

    0
    投稿日: 2012.03.18
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    病気で具合が悪いという状況では、読まない方がいいでしょうね。ある程度、そういうものを客観視できる時じゃないと。でも、本当にどうしようもなかったら、その時は読んでも良いのかも知れません。

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    投稿日: 2012.02.24
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    死に直面した女性の心理状態が延々書いてある。 wanna beや周りの人とのふれあいで心理状態が変化していくところが書かれているかとおもいきや、あまり会話からそういう変化は見られず、説明文のように心理変化が書かれていて、感情移入がしにくかった。なのでのめり込んで読むこともできず。読むのがキツかった。 死に直面した人間の状態はよくかけてるんではないかとは思う。

    1
    投稿日: 2012.01.18
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    SFとしては異色だと思った。もちろん名作だ。死は技術が進歩しても止まらない。だれもが襲われる病気だ。それに焦点を当てたサイエンスフィクションである。死には感情が伴う。悲しさ、切なさ、懐かしさ、もしくは嬉しさなんてあるのかもしれない。――それはいつの世にも時代にもあって、それが当然だ。人間が人間であるかぎり――。

    0
    投稿日: 2011.12.10
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    人工知能というか擬似神経による人格との対話や死という不可避な現象との隣接による、人間の尊厳性や身体性、権利などを考察する作品。 基本的にロボットと心を扱ったテーマは好きなジャンルなので良かった。 以前、短編で読んだ言語や文化を扱ったものの方が個人的には好きだった。主人公の性別も多分にありそう。

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    投稿日: 2011.12.10
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    単に伊藤 計劃の文字が帯にあったのと表紙に惹かれて買っただけだったが、買って良かったと思える作品であった。 成功の絶頂にあったサマンサが唐突に不死の病であると告げられ、残された時間を死から逃れるために必死に抵抗する物語。 もっといかにもなSFチックな展開を予想しながら読んでいたのだが、SF要素よりもサマンサの極限状態に置かれた心理描写が主であった。読み進めていくに連れて、自分の考えていた展開とあまりにもかけ離れて行くので、先が全く読めなくなり逆におもしろかったかな?

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    投稿日: 2011.11.05
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    久々に凄い作品でした。 長谷さんはフリーダの頃からこう人間の深い感情の描写が物凄い方でしたが、これはその集大成のように思えました。 ここまでリアルに描けるものなんですね。 死から始まってwanna beが出て来た時に最期はサマンサもITPとなり・・・といった展開は予想出来たのですが、自分が考えた物語はもっとチープな物でした。 人工知能と人間というテーマの作品はたくさんありますが、今まで出会った中では一番リアルな設定で、一番リアルな終わり方でした。 今の社会では間違いなく受け入れられないと思いますし。 舞台設定の近未来でもやはり難しい問題だと思います。

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    投稿日: 2011.10.11
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    重かった。ひたすらに重かった。 電脳化、人格の情報化の1歩手前くらいの未来を舞台に、ひたすらに逃れられない死について描かれた物語です。病に体を蝕まれ少しずつ死に向かっていく主人公の姿と、その怒り、いらだち、そして恐怖が赤裸々に描かれていく。 本当に容赦のない物語で、読むには相応の覚悟が必要です。

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    投稿日: 2011.09.27
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    容赦の無い、救いの無い、そんな売り文句が言葉倒れでは無い圧倒的な死とSFと物語のための物語。 普通なら綺麗にまとまった、と思った後に続く最終章が凄い。最後の電源が切られるような終幕も。

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    投稿日: 2011.09.23
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    無機質でいて、生々しい物語。 「物語」って何なんだろう。 この物語のキーワード「平板化」の概念が270ページ位まで実体的に掴めなかった。。そこからは夢中に読み進められた(機械に泣かせられるなんて、不覚・・・!)。 一般読者が共感しづらい所まで無機的観念的に話が進んでしまったような。 この登場人物達(wanna be含む)に苛立ちを覚えるのは、あまりに彼らが人間的でいて人間の根幹を見つめているからだと思う。というかなぜかやたらイラつく^^ 女性としては、1ヶ月のこの日に読んでしまったので余計リアルな話(笑)

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    投稿日: 2011.09.02
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    主人公が死ぬ瞬間の壮絶で克明な描写から始まる小説。仮想人格とのやりとり、自己を攻撃する免疫疾患、経験・感情を記述する言語。人間、さらに「自分」とそれ以外を分けるものとは何か、考えずにはいられない。

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    投稿日: 2011.08.20
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     とっっても重厚で容赦なく妥協なく面白かったんですが、そんな物語でこんな感想で申し訳ないんですが、えー、自分に正直に煩悩全開で語らせていただきます。wanna beに萌えました。なあにこの良質な人外素敵! 人語を解せる人外の人と異なる精神構造が私的ストライクゾーンなのでとってもヒットでした。っていうか直球で求愛宣言がくるとは思わなかったよやったね!  徹底してサマンサを物語の主軸と中心に据えているので、SFよりもヒューマンドラマの印象が強かったり。サマンサがいなくなった後の、別の誰かの物語、というのも読んでみたいな。  サマンサの最期はああだったけど、救いは人生の結末じゃなくてその途中でもたらされていた。だからそれでいいと思う。もっと楽で幸福な結末もあっただろうけど、彼女が「なりたい」のはそんな自分じゃなかったんだから。

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    投稿日: 2011.08.14
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    ところどころ面白かったけど、文系の私にとってSFは理論で説明する部分が滑っていってしまうのがネック。 伊藤計劃の2長編はそれもなくてのめりこめてしまったけど、今回は駄目だった…

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    投稿日: 2011.08.14
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    憎しみが原動力のサマンサ、自分と似てるなあと思いながら読み進めました。ちょっと可哀想だな、もうちょい素直にならないとなわ。わたしも死に直面したらこんな感じなんだろか。 帯の煽りはちょっち大袈裟な気がする。でも、読後に表紙見て、やっとこの表紙が何を表してるのかがわかって、ドキッとしました。

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    投稿日: 2011.08.12
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    これは「あなた」のための物語である.ひとりの人間の死の物語.その死はただ残酷で,そこには苦痛と絶望しか存在せず,尊厳も何も無い動物的なものである.それまでの人生で得た感傷や経験も彼女の死には何も成さず,なんの救いにもならない.救いを得るとすれば,死にゆく彼女の物語を知る存在である読者であるように思う.

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    投稿日: 2011.07.21
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    タイトルからは、テッド・チャン傑作SF短編集である所の「あなたの人生の物語」を想起される所でありますが、中身を読んで思い出したのは「バーチャルガール」「銀色の恋人」「流れよ我が涙、と警官は言った」でした。 何かグチャグチャですかね? 自分では大体あってると思うのですが。 伊藤計劃以後、ってのは煽り過ぎかと思いましたが、この文庫版の表紙のデザインは非常に秀逸。

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    投稿日: 2011.06.13