【感想】カルニヴィア1 禁忌

ジョナサン・ホルト, 奥村章子 / ハヤカワ・ミステリ
(24件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
5
8
7
0
1
  • 処女作にして、成功が運命づけられた三部作の第一作。

    『チャイルド44』でデビューしたトム・ロブ・スミスもオックス・ブリッジの英文科卒だが、こちらも処女作とは思えない出来。
    魅力的な人物造形、複雑で秘められた歴史的背景を巧みに配したプロット、クライマックスに向けてさらに勢いがつくストーリーテリング。
    「この国で統制が取れているのは犯罪組織だけ」など、イタリア人にとっては恥部とも思われる暗部も包み隠さず描かれるが、この国への熱い思いは揺るがない。
    ヴェネツィアっ子の主人公は、検死の時も食事の時も足を濡らしながら平然としていられるし、ゴンドラの上でも決して転ばない。

    舞台となったヴェネツッアに関連した、気に入った文章をいくつか。
    「頽廃の上に築かれた美しいこの街にはイタリア文明の栄光と殺人集団が同居していて、都合の悪いことは、香水を振りかけて覆い隠しているのだ」
    「あの水も引いて、ヴェネツィアはまたきれいな街に戻るはずだ。潮が秘密を洗い流してくれて」

    解説では、『ダ・ヴィンチ・コード』や『ミレニアム』を彷彿とさせると書かれているが、後半の逃亡劇では、TVドラマの『24』のバウアーとクレアの関係を彷彿とさせるほどスリリング。
    とにかくダニエーレのキャラクターが凄すぎる。
    誘拐によって鼻と耳をそがれ、極度の人間不信から古い館に引きこもる。
    数学をこよなく愛し、ヴェネツィアの街を正確に再現した電脳空間を作り匿名で集える交流サイトを立ち上げる天才プログラマー。
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    投稿日:2014.04.29

ブクログレビュー

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  • 小野不一

    小野不一

    奥村章子の翻訳が悪い。
    https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2023/10/06/094041

    投稿日:2023.10.06

  • fattycatlover

    fattycatlover

    このレビューはネタバレを含みます

    ネットで見かけて。

    ヴェネツィアが舞台というだけで、華やかな印象を受ける。
    強力な建築規制があり、許可を得るには強力なコネが必要だとか、
    憲兵隊はレストランで店主が代金を請求しないとか、
    マフィアのことは誰もしゃべらないとか、
    負の側面もちりばめられているが、その華やかさは失われない。

    それは、世界的な観光地が登場するからなのか、
    バスではなくヴァポレットに乗っているからなのか、
    カソリック教会の強大な力が見え隠れするからなのか。

    それだけではなく、
    ヴァーチャルなヴェネツィアである「カルニヴィア」や、
    オカルトのシンボルかと思われたクロアチアのタトゥー、
    人身売買にユーゴスラヴィアでの虐殺、誘導砲弾による爆撃と
    これでもかというぐらい詰め込まれている。

    それでいて、
    憲兵隊の大尉と米軍の少尉の女性二人と、
    幼少期に誘拐事件に遭ったハッカーの活躍も光を放っている。

    色とりどりに輝くきらめきの流れに溺れそうになりながら、
    最大の証拠は人の中のDNAなのではと、
    気が付いた自分をほめてあげたい。

    要するに、面白かった。

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    投稿日:2023.04.15

  • nekotaro

    nekotaro

    著者はロンドン在住で本作はデビュー作になります。
    ポケミスは文庫本より少し背が高く本棚での納まりが悪いので購入は敬遠しがちだったのですが小説の舞台がヴェネチアとの事でなかなかこの地を描いた小説が少ない事とつい最近出張で現地を訪れて事もあって衝動買いしました。

     物語は運河で流されたと思われる女性司祭の死体をきっかけに殺人が次々と発生し現地の憲兵と駐アメリカ軍少尉が事件の真相を明らかにするという単純なストーリーですが、舞台のヴェネチアの静かで優雅な雰囲気や事件の背景には国際的な紛争やネット上のバーチャル世界が絡んでおり主人公である二人の女性が陰謀に迫る様は欧州を舞台とした”ダビンチコード”や”ミレニアム”を彷彿とさせ大変に面白い出来で処女作とは思えない仕上がりです。

     尚、本作は3部作シーリズとの事で既に後続2作品の英文での題名も発表されて居り早く2作目の刊行が待たれる所です。
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    投稿日:2021.04.17

  • kozakura

    kozakura

    このレビューはネタバレを含みます

    いろんな要素てんこ盛り系ですね。ディティールが書き込まれていて切れ味もよい。イタリア・クロアチアという地理感覚は今まであまりありませんでした。3部作ですが1作目は切りがいいところで一旦終わってます。2部以降で1部の登場人物がどう関わっていくのかは楽しみ。

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    投稿日:2018.07.23

  • sana

    sana

    イタリアが舞台の、読み応えある怒涛のミステリ。
    三部作の一作目です☆

    ヴェネツィアのとある教会前で、司祭の格好で倒れていたのは実は女性。
    それはカトリックの教会では今もあり得ないことだった。
    捜査に当たるのは、憲兵隊の大佐ピオーラと、女性の大尉カテリーナ。
    イタリアの警察というのは複雑で、憲兵隊と別な組織が張り合っているんですね。

    米軍基地に赴任したばかりのアメリカ女性のホリー少尉も、捜査に関わってきます。
    イタリアの基地育ちのホリーは、故郷に帰ったかのようなくつろぎを感じていたのですが‥?

    ヴェネツィアっ子のカテリーナはすごい美人で奔放だが、野心家で何より大事なのは仕事。
    ホリーはもっと親しみやすそうな若い娘でおだやかな性格だけど、陸軍少尉ですから訓練で身につけた勇ましい所も。
    この二人に加えて、異色な人物が加わります。

    SNSで本物のヴェネツィアそっくりというカルニヴィアを作り上げた天才、ダニエーレ・バルボ。
    彼は幼いときに誘拐されて犯人に鼻と耳をそがれ、トラウマで自閉症になっていた壮絶な過去がある。
    豪華な古い館から出ることもなく過ごしていましたが‥

    イタリアにある米軍基地がそれほど大きいとは知りませんでした。
    ヴェネツィアというだけでも魅力がありますが、戦争犯罪、マフィア、米軍基地への反対運動、秘密組織の暗躍、カトリック内部や警察内部の葛藤、さらに男女の問題など、思わぬ要素がてんこ盛りで濃い!

    「ミレニアム」と比較されてしまうと、う~ん、どうだろ‥ていう気にもなりますが。
    読み応えは十分です!
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    投稿日:2017.01.14

  • yuyuchi84

    yuyuchi84

    米軍に駐屯されている国はどこも似たような悩みを抱えているな。戦争犯罪をここまで女性への性的犯罪に特化してるのも珍しい。戦争それ自体が人体実験なのか。

    投稿日:2016.11.04

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