【感想】韓国のイメージ 戦後日本人の隣国観 [増補版]

鄭大均 / 中公新書
(4件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
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  • 「他者へのまなざし」について考える

    歴史を考える上で「事実」が大事なのは間違いないが、
    実際のところ、人を動かしているのは思い込みや勘違いであることも多い。

    「イスラム教徒は野蛮で残虐である」というイメージが十字軍遠征にどのように作用したか。
    いや、十字軍のみならず、今現在もどのように作用しているか。
    そのようなことを考えると、歴史学においても、社会学においても、政治学においても、
    必ずしも現実とは一致するとは限らない「イメージ」に向き合うことは非常に重要である。

    本書初版も、そういった意味での「イメージ」を扱うもので、
    対象は1945年から1995年(本書初版刊行時)までの
    「日本人の韓国イメージ」であった。
    非常に興味深いものであったので、2010年までの考察を加えた
    この増補版も読んでみた。

    当然、その「イメージ」が現実と合っているかを検証したり、
    違っていることを非難したりすることは本書の目的ではない。

    この類の書の評価としては、そのサンプリングが適切な幅と量を備えているかという点になるだろう。
    私は、本書は新書という紙面の制約の中、なかなかにうまくまとめていると思う。

    本書初版(1995年)では韓国への眺めを
    「無関心・避関心の時期」(第一期)
    「政治的関心の時期」(第二期)
    「文化的関心の時期」(第三期)
    への変遷の過程ととらえ、増補版ではさらに
    「韓流の時代」(第四期)を加えている。

    それぞれの類型について、具体的な言説(当然差別的なものも含む)が引用されており、
    当時の日本の韓国に対する「雰囲気」を感じることができる。
    扱っているものは政治家の発言あり、小説家の紀行文あり、旅行ガイドあり、左翼活動家のアジテーションあり、なかなかの幅がある。
    当然、それらは現実の韓国とは異なるものであるし、
    その言説同士に大きな矛盾がある。
    また、北朝鮮の存在をどのように捉えるか、という点で大きく異なる。

    いろいろと興味深い言説が上げられていたが、少しだけ紹介すると、
    小倉紀蔵の「アルタイ・コンプレックス」を共有する者の相互蔑視の問題の紹介など、面白かった。
    小倉氏によると日本人が「韓国人の顔」としてイメージする顔は、必ず目が細い。
    そして、韓国人が「日本人の顔」としてイメージする顔も、必ず目が細い。
    さらに、日本でも韓国でも映画やドラマでは自国の主人公は西洋的な顔立ちである、と。
    つまり、両国とも欧米に対してコンプレックスを持っており、自国の方がより西洋に近いとする言説/映像が「イメージ」として流布しているのだ。
    これは、1992年に書かれた文章によるものだが、当時の日本や韓国の西洋コンプレックスの屈折した表出として印象的だった。
    (今でも「より西洋に近い=進んでいる」という認識を持つ人は日韓共に多いだろう)

    増補部分の「韓流ブーム」についても、それまでの韓国イメージとの断絶・変化よりも
    連続性・類似性に焦点を当てており、「他者」に何を投影するかという本質について、
    改めて考えさせられるものであった。
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    投稿日:2015.01.29

ブクログレビュー

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  • bax

    bax

    このレビューはネタバレを含みます

    [ 内容 ]
    今日の日本人の韓国像は、一方に文化相対主義的理解があれば、他方に伝統的蔑視があり、イデオロギー的立場から賞賛や沈黙の一方に、若い文化的関心層があって一様ではない。
    それでは、戦後日本の韓国像はどのように変化してきたのか。
    日本の新聞・雑誌・書籍に現われた韓国に関する言説を集め、植民地体験型、贖罪型、イデオロギー型、古代史型、異文化型という五つの関心型に分類して、そのアンビヴァレントな性格の意味を考える。

    [ 目次 ]
    第1章 変化するイメージ
    第2章 関心型
    第3章 戦後イメージの原型
    第4章 独裁国家の行方
    第5章 似て非なる国
    第6章 共存するイメージ

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

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    [ 関連図書 ]


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    投稿日:2011.04.01

  • tatsuyaito

    tatsuyaito

    日本人の韓国や北朝鮮について言及を引用しながら、それらに対してどのようなイメージを持つ傾向があったのかについて、時代や思想的なカテゴライズをしながら語っている。
    引用がメインなので、著者のフィールドワークや意見などはほとんど無かった。
    韓国と北朝鮮について、日本人がどのように語ってきたかという全体像だけを把握するには良いと思う。
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    投稿日:2010.10.26

  • H.Sato

    H.Sato

    日本人は1980年代まで、韓国、朝鮮に対してはネガティブなイメージばかり持っていた。
    戦前の日本は朝鮮人は好きな方だったが、戦後には朝鮮人が嫌いになった。
    韓国は近代以降、日本gあその軍事・政治的影響力を最も旺盛に発揮した地域であるというう意味でも特別な存在である。隣国は日本の侵略主義の対象とされた唯一の地域というわけではないが、その影響を最も強く受けた地域であり、またそのことがルサンチマンの環状として日本でも強く息続きている地域である。
    1957年まで北朝鮮の方が韓国よりも発展していた。日本も抜かれるくらいの勢いだった。
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    投稿日:2010.10.16

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