【感想】スワロウテイル人工少女販売処

籘真千歳 / ハヤカワ文庫JA
(62件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
17
20
9
2
0
  • 普通のラノベに飽き足らない人におくる骨太サイバーパンク

     イラストを『文学少女シリーズ』で知られる竹岡美穂氏が描いているので、それに惹かれた方も多いのではないでしょうか。
     内容は、男性と女性が隔離されて暮らす近未来の日本を舞台としたサイバーパンクアクションで、 『文学少女』とはかけ離れていますが、普通のラノベでは物足りないと感じる方にとってはかなりおすすめです。
     狂った人工妖精(人造生命やサイボーグに近い存在)を殺すことを仕事とする人工妖精の少女・揚羽が、都市を揺るがす陰謀に巻き込まれていくあらすじや、巨大メカや狂った妖精とのバトルシーン、口の悪い開発者との漫才じみた掛け合いはラノベっぽい。
     しかし、親と子との関係や家族問題、性差といったテーマが盛り込まれており、ただ面白いだけでなく、深く考えさせられるような部分も多く存在します。
     『マルドゥック・スクランブル』や『BEATLESS』といった美少女×サイバーパンクものが好きなら、是非読んでみてください。
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    投稿日:2013.10.25

  • 思考系のSF

    旧東京に浮かぶ外界と隔離され、さらに男女別にも隔離された人工島で起こる連続殺人事件に
    あたる男性自警団の見たものは?。アシモフの鋼鉄都市を連想させるシチュエーションから始まる物語は、二転三転して、人工島の真実に迫っていく。
    ヒロインである女性型人工妖精揚羽と上司兼同居人?の鏡子の掛け合い漫才だったり、揚羽の裏稼業の悲しい話だったり、軽いのも重いのも次々来るので最後まで気が抜けません。
    SF的な仕掛けもマイクロマシン等色々詰め込まれてますが、最近の脳科学をベースにした思考実験で心とは人とは何か?っといった思考は面白く読ませてもらいました。

    最後の伏線回収がちょっと唐突感があったのでマイナス1点。
    やっと読み終わったのでレビューしてみました。
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    投稿日:2013.11.06

  • 苛烈な恋愛小説

    人が自らの伴侶として生み出した「人工妖精」。人を愛し、人に愛されるために生まれてきた彼女たちとの不器用な愛の話である。主人公の揚羽は出来損ないとして社会から疎まれる人工妖精であるが、人と人工妖精の共存のために尽くす健気な少女である。人工妖精はヒトなのか、モノなのか、当事者にも分からない葛藤が彼ら・彼女らを激情にも似た愛へと駆り立てていく様は、一読の価値がある。

    この作品は少々不思議な作品である。
    ライトノベルと呼ぶにはいささか表紙が質素であり、並ぶのはあまり人通りのないSFや海外小説のコーナーである。が、SFと呼ぶにはポップなキャラクターが幅をきかせ、軟派な印象を受ける。
    しかしながら、超科学によって支えられる社会の在り方、人間の認識能力、人とモノの境界など、平易な文体ながらも扱う話題は意外と硬派であり、何よりも随所に感じられる先人達への敬意はまさしくSF小説のそれである。
    本作の魅力は、読み方に合わせて姿を変える事である。すなわち、純粋なエンターテイメントとして楽しめる「華」がありながら、深く掘り下げていけばいくらでも沈んでいける奥深さも併せ持つ、その二面性がたまらない。
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    投稿日:2016.09.09

ブクログレビュー

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  • planets13

    planets13

    自らの依って立つ由縁、あるいは人間の人間たらしめるところの何か。そんな重たいテーマの絡まる揚羽に F.S.S. のファティマがダブる。

    投稿日:2023.12.24

  • タカリ

    タカリ

    ラノベのようなスタイルをとりながら、重厚なテーマと複数の読み方を持つ、何度でも再読したい一冊です。
    「限りなく人間に近い機械」というありがちな設定に、男女隔離を余儀なくされた世界に第三の性として作られたという存在理由を加えたことで、テーマに大きな深みが生まれた気がします。
    特に印象的なのは洋一と置名草の美しくも残酷な物語です。精緻なSF的要素に見える置名草の体質や背景は、単なる無味乾燥なSFガジェットではない、人間の思いが届くものとして描かれています。このあたりに全編を通じて暗示される人工妖精と人間双方の悲哀が詰まっている気がします。
    何より、結びは冒頭の一節だけでなく主人公への解答として機能しており、物語が終わったのではなく彼女が旅立ったに過ぎないことを雄弁に語っています。
    続きを読む

    投稿日:2023.06.13

  • blueberry27

    blueberry27

    男性向けファンタジーと弁えて読めば設定は面白いし哲学もいい。
    ただどうしても片側世界、特に女ではなく男性の為に存在する少女だけなので感情が哀しく薄っぺらい。
    中身と無関係に、男の料理に対する作者の言葉があまりに的確で大笑いしたが、実際は傍迷惑な男の料理かなw 女だって料理下手はいくらでもいるがそこに料理皆伝レベルの蘊蓄はついてこない。この差がでかい。続きを読む

    投稿日:2023.03.20

  • 椿

    椿

    人工生命、男女の分断、病人を隔離した豊かな自治区……と、要素盛り盛りなところがとても良いですね。全部乗せで贅沢だけど世界観にのめり込んでどんどん先を読みたくなっちゃう。
    ヒロインの揚羽がいちいち感情重い子で可愛い。
    水先案内人の置名草や「クラスメイトの女の子」として作られた人工妖精の在り方も切なくて……でもきっと、彼女たちは不幸せではないんだろうな。複雑。
    続きを読む

    投稿日:2021.07.15

  • Takeru.K

    Takeru.K

    人間を維持するために作られた人工妖精たちの、自意識からの苦悩と、絶望と、
    そこからの解放。

    技術が発展しようと、SFな設定が横たわろうとも、
    そこで息づくのが人間(あるいはそれに似せた何か)である以上、感情と、それに基づくドラマは生まれる。続きを読む

    投稿日:2019.09.23

  • hekcho

    hekcho

    表紙とタイトルからラノベの香りを感じていたが、思っていたよりずっと早川書房=SF寄りの話で面白かった。むしろ、中途半端にあるラノベの香り(たとえばヒロインが変な声で鳴く)は必要だったのか??
    この先の展開でその話も出てくるもしれないが、是非女性鎖国サイドの描写も読んでみたい。続きを読む

    投稿日:2018.12.05

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