【感想】チャイルド・オブ・ゴッド

コーマック・マッカーシー, 黒原敏行 / 単行本
(18件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
4
9
4
1
0
  • 異常犯罪者の生態

     銃の扱いに長けているが、暴力的で人との交流を隔絶しているレスター・バラードが、どのような犯罪をおこない、生活はどのようなものであったのかをドキュメンタリーみたいにまとめ上げた作品です。

     物語の舞台となる町や自然の描写が上手いと思ったのと、あまり具体的に書かず、あくまでまとめ上げた風に書いてあるのが印象的でした。レスターの心理や行動を自分なりに考え、どのようなことからそのような行動に至ったのか考えさせられました。トマス・ハリスの「羊たちの沈黙」のような具体的な殺人描写は無いものの、殺人というグロテスクさや異常さがひしひしと感じました。続きを読む

    投稿日:2015.05.16

ブクログレビュー

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  • kotonami

    kotonami

    コーマック・マッカーシー 

    「チャイルド・オブ・ゴッド」(1973)
    「Suttree」   (1974)  初期三部作
    「ブラッド・メデリアン」 (1979)


    「すての美しい馬」 映画化
    「血と暴力に国」  映画化「ノーカントリー」として、アカデミー賞作品賞ほか4部門 21世紀からの三部作
    「ザ・ロード」   映画化 
      

    「チャイルド・オブ・ゴッド」は初期作品だか映画化によって2013年邦訳


    アメリカ、アパラチア山脈に住む貧困部落で、母は男と逃げ、父は自殺した。身寄りのないまま育ち、レスター・バラードが育った小屋を含め周りの土地まで、税金滞納で競売にかけられるところから始まる。
    住処をなくした彼は、敗れ小屋を見つけ、孤独な自給自走の生活が始まる。それが7~10歳のころ。粗野で粗暴なので村人にも馴染まなかったが、車で森に入った若者のカップルを見つけて殺し、それから連続殺人が始まる。
    以前妹に対する近親相姦から、殺した女を屋根裏に隠した死姦を繰り返し、ついには放火。孤独ゆえか、殺した女を屋根裏に上げて同居をするようになる。火事を起こし家がなくなった後は複雑な地形の洞窟にすみ。まれな大洪水が起こり犯行が現れて逮捕。弱りきった体で逃げ迷い、病院に来て自供し死ぬ。

    広いアメリカの社会では、こういった山間部の貧困部落があり小説の題材になっている。この犯人レスター・バラードもそうした社会で人と交わらず教育を受けないで育つ。ライフルの腕を頼りにいつも持ち歩いて食べ物を獲る事もある。、無知と、生きるために食べ物を見つけては食べるようなその日暮らし。しかしそれに慣れ。そういった生活を続けるとなどは、殆ど本能によって生きている。危険から身を守ることを(独白で)言葉にすることが出来ても、自分自身を振り返ってみることなどまったく思いつかない。

    陰惨な、犯人に関して言えば社会に見捨てられた悲惨な人生ではあったが、コーマック・マッカーシーが書く文章は、四季の風のそよぎであれ、雪すさぶ吹雪に揺れる木であれ、レスターが徘徊する足のしたの霜柱や、落ち葉にた無数の不透明なガラスのような光など、澄み切った自然の風物が、透明感を持って心に訴えてくる。
    そういった青く青い高い空、澄み切った流れ、野草に吹く風の音。鳥や獣の鳴き声や羽根が風を切る音。、雪の上に残していく足跡。作者の筆致は独特の情感を持っている。
    またこの作品は、ショートストーリーろ積み上げることで、シーンが違っても実に気の効いた形で、回りに雰囲気や、中でもレスターの生い立ちが徐々に判明するように話しに汲み込まれている。
    会話は括弧で囲まず詩のような箇条書きで雰囲気がいい、それも大きな特徴で、こうした構成が酷薄な事件を和らげているようにも思える。

    現実に起きた事件を基にしているとも言われるが、前面の露悪的な事件の周りが,こうした別世界に思えるような世界なので、殺されて無残な姿を晒す遺体の姿まで、大きな自然の中では、最後は静かに土に返るように思える。

    前に方用に、非常な世界を書いて名前が出てそれが映画化され作家として安定したした。今ではノーベ文学賞候補ともささやかれているという。

    今年になってマッカーシー原作の「悪の法則」を見た。豪華キャストの競演だったが主題が弱く、原作を読んでいないのでわからないが、★3位の出来だった。
    続きを読む

    投稿日:2019.12.28

  • longirostris

    longirostris

    国境三部作以降しか読んでなかったので、かなり驚いた。そこで主人公たちは、ひたすら謙虚に慎ましく生きるものとして描かれていたからだ。レスター・バラードは怖れ、毒付き、卑小な欲望に流され、涙を流し、生にしがみつく。ある意味、それらの主人公たちよりも人間らしいと言えるかもしれない。これはコーマック・マッカーシーが絶対悪を描き始める前に、人間の卑小な悪、それこそが本質だとでも言うように描いたものだ。ただ、やはり精緻な日々の営みや、自然の描写は詩的、神秘的で美しい。氏の作としては短く、読みやすい。っても、子どもにオススメできるような内容じゃないけど笑続きを読む

    投稿日:2017.08.02

  • pyonko

    pyonko

    どちらかといえば初期のころの作品だが、
    独特の文体、表現はすでにこの時点で固まっていたのだと思う。
    猟奇殺人ではなく、
    それを取り巻く世界を描いたという訳者の解説はなるほどと思った。

    投稿日:2015.09.30

  • 美希

    美希

    とある連続殺人犯のお話。内面は描かず、動機は問わず、ただたんたんと田舎のうらさみしい土地にたったひとり小屋に住み着き(無断)、狩をし、まきを割って暖をとる、そして気ままに暴力を振るい、動揺やためらいもなく人を殺す。彼は結局彼自身が送った人生に相応するような無機質な最後を迎える。読み終わって後を引くのは疑問や同情じゃなく、単純な淋しさ。続きを読む

    投稿日:2015.01.10

  • くろうま

    くろうま

    2章の途中で読むのを断念しました。

    「文学」として、どれほどの価値があって
    傑作と評されているのかわかりませんが、
    「小説」としては、面白くありませんでした。
    少なくとも私には。

    独特の文体とリズムがあって、原文がそうなのか
    翻訳特有の文章感になっているのかわかりませんが
    たぶん両方なんだろうと思います。

    それに馴染める人は苦にならないと思いますが
    殺伐とした内容に加えて、淡々とした地の文と
    やさぐれた会話文を読んでいると
    いやーな気分になってきて、どこに面白さを
    見出していいのかわかりませんでした。
    続きを読む

    投稿日:2014.11.09

  • エピス

    エピス

    数年前から読みかけの『ブラッド・メリディアン』を一旦置いて手に取った。連続殺人犯の物語である。起伏も抑揚もない会話にまっすぐに胸を突かれる。絶対的な孤独のうちに世界のなかを彷徨うとき、世界はどのように立ち現れ、人間はどのような本性をあらわにするのか。 
    凄惨さをきっちりと描き出しつつ、文章の美しさと立ち上がってくる情景、におい、湿度にはただただ驚かされる。それがどこか痛快な読み応えというのも、とてもいいと思った。小説として、素敵なことだと。どこか人間の素晴らしさというか、人間を肯定している印象を受けることも また。

    巻末のカポーティ『冷血』との比較がなされているけれど、個人的にはこちらのほうがより胸に迫るものがあった。
    鋭利な“生”という芯が現れるまで削られて、ひりひりした世界に一時つかり、その世界から戻ってきたときのなんとも言えない透明感。
    続きを読む

    投稿日:2014.02.08

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