【感想】太陽の黄金の林檎

レイ・ブラッドベリ, 小笠原豊樹 / ハヤカワ文庫NV
(29件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
7
11
6
1
0
  • 太陽の黄金の林檎

    散文詩のように美しい「山のあなたに」、極上のメルヘン「四月の魔女」、正統派SFの表題作と色々なスタイルの短編が楽しめる。

    投稿日:2014.01.02

  • 60年後の未来を映す鏡

     個人的に好きな作品が多々ある 22編の短編集で
    表題にもなっている 「太陽の黄金の林檎」 は
    最後に収録されています。

     その炎の1杯を手に入れるため
    太陽に向かった宇宙船...
    冷えゆく地球の危機を救うために選ばれた隊長が
    その任務に際して抱く思いが特徴的です。
     文中各所にも古典文学の引用が見られ
    危険な任務や状況の緊迫感とは 裏腹な
    静寂さ、穏やかさすら感じられます。
    タイトルは、W.B. イェーツの詩の1節からとっています。

    また、「「何のために ? その答えはすでに出ていた。
    地球上でわれわれが動かす原子が貧弱だからだ。」
    という言葉からは、原作から約60年後の未来を生きる
    現代世界の現状が詰まされます。
    次の60年後は、どうなっているのか? と思わずにはいられません。
    続きを読む

    投稿日:2014.04.30

ブクログレビュー

"powered by"

  • ゆん

    ゆん

    このレビューはネタバレを含みます

    ブラッドベリは『華氏451度』に続き二冊目。華氏~の方は大好きだったし、SFの抒情詩人なんて謳い文句も見ていたので楽しみにしていた。火星年代記も読まねば、なんて思って開いた。最初の一篇「霧笛」これにまたしびれる。最初に解説を読んじゃおうとそのまま後ろに飛ぶ。これが間違いだった、失敗でした。最後に解説読めばまだよかった…。
    解説でブラッドベリ本人について紹介されているんだけれど、その「ザ・アメリカ人」の反応が、あまりに微妙すぎて、そのあと本編に戻っても、頭にチラつくブラッドベリ本人の言動…涙。余韻に浸りきれないという悲しい事象が発生しました。。最後の方に行くにつれそれも薄れてきた気もするけれど、ブラッドベリ自身のことを知らずに読めたら、どれだけ作品に酔えただろうと思う分、中身如何ではなく、かなしみです。。。
    記憶を時間によって風化させる必要がありますね。

    その中でも好きだった作品についていくつか。
    ★「霧笛」世界にたった一人のあいつの悲哀がしんみりくる一篇。「それが人生というもんだ…決して帰らぬ者の帰りをいつも待っているということ。愛されている以上にいつも何かを愛するということ。そしてしばらく経つとその愛する相手をほろぼしたくなる。ほろぼしてしまえば、自分が二度と傷つかなくてすむからな」

    「歩行者」ディストピアン~~~

    ★「二度とみえない」ラミレス氏…I see you never

    ★「サウンド・オブ・サンダー」よくある設定の、ザSFという感じの一話。面白かったし好きなんだけど、普通に「いやそういうことに絶対なるし、それはエッケルスのせいではなくないか…?」とも思いました。

    「山のあなたに」読了感の寂しさが、ブラッドベリの感想でよく見るブラッドベリ感なのだなとだんだんわかってくる

    ★「発電所」好きだったなあ

    「草地」ハッピーエンド?で、え?ってなった

    ★「ごみ屋」うーん好きでした。正常なことを正常ではないと捉えられている今辞めないと絶対にダメなのに、慣性の法則に人間は縛られがち。。ディストピアンでした。

    「歓迎と別離」これもなんともいえぬ悲しさの後味が残る一篇…

    ★「太陽と黄金の林檎」幻想的な美しい一篇。好きだった

    一冊読み通して思ったことは、ブラッドベリは明確な「男女」「黒白」「アメリカと○○(途上国)」などといった境界線を持ち、現代的な感覚でいうと、うーんそれはどうかな?というところもありつつ、一方でだからこそ正は正だと理想を語るところもあったのかな、なんて。ちょっと私はそれに対しては怖いなとも思ってしまったけど(「草地」単体ならいいんだけどね…)目につく形ではないが、根底にはそういう二分法があって、例えば無意識にアジアを見下しているんだろうなーとかそういう風に思ってしまう時点で結構ダメなのかもしれない。今回は特にSF短編集といいながら、ヒューマニズム色が強いものも多かったので、余計にそう思ってしまっただけなのだと信じたいです。とりあえず『火星年代記』の方も読みます

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.12.25

  • 火星

    火星

    このレビューはネタバレを含みます

    感想 『太陽の黄金のリンゴ』

    ・船の名前がイカロスとかプロメテウスだから、破滅エンドなのではないかとハラハラさせる

    ・焼死ではなく、凍死するのはウィットに富んでて、いかにもSFっぽい

    ・とにかく詩的で文章が美しい(少なくとも個人的には)

    ・温度の記述が大袈裟に思った。でも、それはSFだからできること。大袈裟な表現は、ある意味SFの醍醐味なのかも

    ・死と隣り合わせの状況が、読んでてスリリング
     宇宙空間が、死の世界であることを再認識
    「人類史上最もすみやかな死」が印象的

    ・エネルギー問題と絡めているのもリアルな感じ。 太陽光発電をある意味予言してるかも

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.10.16

  • kemukemu

    kemukemu

    ブラッドベリ的とは

    SF小説は、未来や宇宙世界に対するワクワク感をもたらすものが多いが、この短編集はちょっと異質。
    グリムやアンデルセンが動物を擬人化したように、SF小説においては舞台を未来や宇宙に置いて、時には異星人をモチーフにして、かえって人間の愚かさや面白さを浮き出させている。
    収録作品には、宇宙も未来も何も出ず、ただ村人の話なんてものもあるが、まったく違和感がない。
    そう考えると、「ブラッドベリ的」ということもあながち「独特な」という意味ではなくなってくる。
    特にこの(初期)短編集は、カテゴリーによる「SF」というレッテル貼りが無意味に感じるほど「独特」でありながら、「普通」に面白い。

    お気に入りは
    「霧笛」「ぬいとり」「発電所」「草地」「歓迎と離別」「太陽の黄金の林檎」……とあげていくと、選びきれなくなっていく。

    収録作品すべてに「ブラッドベリ的」な余韻がある。
    続きを読む

    投稿日:2022.07.14

  • ななこ

    ななこ

    ブラッドベリの作品を読むと、どこかノスタルジックな気持ちにさせられます。寒い夜に深海からやってくる何かを描いた「霧笛」はラヴクラフトを彷彿とさせる面白さ。二つの町が競い合うように城壁の形を変えていく「金の凧、銀の風」は童話風で楽しい。少年の外見のまま年を取らなくなってしまった男の話「歓迎と別離」は、萩尾望都さんでぜひ漫画化して欲しい。特筆すべきはやはり表題作「太陽の黄金の林檎」で、冷え切った地球を温めるために太陽から火を持って帰るなんて発想が素晴らしすぎる!解説が中島梓(栗本薫)さんだったのも嬉しかった。続きを読む

    投稿日:2021.01.23

  • bookaholic

    bookaholic

    レイ・ブラッドベリはSF作家なんだと勝手に思っていたけど、実際この短編集の半分以上はSFじゃなかった。ファンタジーであったりヒューマンドラマであったり、ホラーやディストピアや故事のような話もあったり…本当によりどりみどり。SFに特化してた訳ではなかったんだな。
    いくつかは面白かったけど、律儀に全部を読まなくても良かったかな、と正直感じた。
    訳語が古いせいかかなりとっつきにくかったのもある。文章が読みづらい…でも原文によるところも大きいと思う。すごく詩的な文章。情景描写の分かりやすさよりも文章のリズムや美しさを重視している気がする。
    内容自体も、うーんそこで話終わっちゃうのか、、、と感じられる作品がしばしば。
    表題作の「太陽の黄金の林檎」「雷の音」「霧笛」あたりは良かった。
    続きを読む

    投稿日:2020.10.23

  • マッピー

    マッピー

    目次
    ・霧笛
    ・歩行者
    ・四月の魔女
    ・荒野
    ・鉢の底の果物
    ・目に見えぬ少年
    ・空飛ぶ機械
    ・人殺し
    ・金の凧、銀の風
    ・二度とみえない
    ・ぬいとり
    ・黒白対抗戦
    ・サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)
    ・山のあなたに
    ・発電所
    ・夜の出来事
    ・日と影
    ・草地
    ・ごみ屋
    ・大火事
    ・歓迎と別離
    ・太陽の黄金の林檎

    レイ・ブラッドベリと言えば、SF作家でありながら抒情的、ノスタルジックでメランコリーな作風というのがイメージだったし、そういう作品が多いのはもちろんなんだけど、それだけではないことに気づく。

    ただ後ろ向きのノスタルジーではない。
    かなりはっきりと、行き過ぎた科学至上主義などを批判している。

    ”無線車で外出していると、連絡は、ひっきりなしです。ああ、連絡か!実に体裁のいい言葉じゃありませんか。連絡とはつまり、いつも摑まえられているってことです。抑えられていると言うべきかな。”(人殺し)
    似たようなことは森博嗣も作品の中で「携帯電話は使われている人が持つものでしょう。私は持ちません」と西之園萌絵に言わせていたなあ。
    主人公はラジオ、電話、しゃべる家電を壊して回り、刑務所の独房で静かに過ごす。

    黒人対白人の野球の試合。
    特に記述はないけれど、1960年代のアメリカ南部が舞台でしょうか。
    日々体を使った生活をし身体能力の高い黒人と、普段体を動かすことのない白人の試合。
    けれども大人はみんな、当然白人が勝つと思っている。
    審判はアイルランド人。
    案の定白人は審判にも食ってかかる。
    試合は黒人が勝ち、観客はそそくさと家に帰る。
    「お家に帰りましょう。黒人はカミソリを持ってるかもしれないわ!おお、こわい!」

    元の皇帝は、空飛ぶ機械を発明した男を殺す。
    その男に悪意がないことはわかっているが、いつか誰かがその機械を大量殺人のための兵器として悪用するかもしれないので、その芽を摘むために。

    ごみ屋は仕事をやめようかと妻に相談する。
    原爆が落ちたらごみ収集よりも死体の回収を優先するようにと市長に言われて、そんなことはできないと思った。
    しかし妻は言う。「家族のこと、生活のことを考えて」と。

    ただ時流に流されていけば、何も考えなければ、楽に生きられるのかもしれない。
    けれども、その後に悪夢のような日々が来るかもしれないことを、そのツケを子孫に残していくことを想像できないのなら、人間という生き物は何なのだ?

    そんなブラッドベリの怒りを過剰に感じてしまったのは、過日に観た映画『マイ・ブックショップ』の影響かもしれない。
    続きを読む

    投稿日:2019.04.21

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。