【感想】スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編

ティモシー・テイラー, 池上彰, 高橋璃子 / かんき出版
(63件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
11
23
17
0
0
  • すべてのトレードオフを考慮に入れようとする姿勢を学ぶ

    これから経済学を学ぼうとする人たちだけでなく、ごく一部に過ぎないグループや個人にスポットを当てた毎日の経済ニュースに一喜一憂し、顔の見えない統計上の人びとにも想像を広げるセンスを欠いた人たちにとっても、貴重な気づきを与えてくれる本。
    学問としての難しさよりも、その舵取りの慎重さや繊細さに思いが至る。

    通底しているのは、
    「ものごとにはトレードオフがある」こと、
    「誰かを助けようとすれば、別の誰かが傷つく」こと、
    「何かを選ぶことは、何かを捨てること」だという考えで、
    「あらゆるものを完璧に満たす社会はない」のだから、より不断の判断や調整が求められていることがよくわかる。

    「経済学は、貧しい人びとの敵ではありません。自由市場を絶対視して、あらゆる介入を否定するものでもありません。
     どのような介入が望ましいかについては、経済学者のあいだでもさまざまな意見があります。しかし、意見の対立を超えて共通しているのは、あらゆる政策について、すべてのトレードオフを考慮に入れようとする姿勢です」

    取り上げられるトピックは豊富な事例に富み、対立する論点を手際よく整理し、政策にかかるあらゆるコストを明示する。
    セーフティネットの必要性の議論では、貧困対策につきまとう葛藤に触れ、求められるのは「入りにくく抜けだしにくい」ハンモックのようなネットではなく、空中ブランコのような「落下を広く受け止めてくれるけれど、すぐに跳ね上がれるような弾力性のある」安全ネットであると指摘している箇所が印象に残った。

    レビュー時点(2015年4月)のニュースを見てると、フランスで見習い従業員に支払われる給料を国が1年間肩代わりすることを決定したという。
    これまで見習いの数は年々減少していたが、中小の経営者は「タダなら雇う」と、増加に転じる見込みらしい。
    直接の賃金対策ではなく、労働者の教育訓練に投資するというやり方は、悪影響の少ない支援のあり方ではないか?
    本書を読みながらこれまでより深くニュースが理解できるようになった気がする。
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    投稿日:2015.04.23

  • 「スタンフォード大学で一番人気・・・」なのですよね?

    40代、主婦です。
    商業高校卒で、「経済学」などという学問には触れてこなかった私。
    有名大学の知識もなく、スタンフォード大学の良し悪しも分かりません。
    それでも・・・。
    いま、日本だけでなく、世界中で経済政策が立ち行かない状況にあると感じています。
    私がバタバタしたところで、現状が変わるとは思えませんが、私なりに経済について考えを深めたい。
    という理由で、経済学の本を読みたかったのです。

    読んでみて、私としては、特に得るものはありませんでした。
    「・・・存じております。」という項目ばかり。
    ただ、この「ミクロ編」は、経済活動をする個人や会社、政府に注目した内容ですので、私が望んでいた内容は、「マクロ編」にあるのかもしれません。

    私は、社会人として働いてきましたし、商業高校出身ですので知っていただけかもしれません。
    学生さんに分かりやすいと人気なんですよね。私、その方達より20年は長く社会人やってるんですよね・・・。

    「マクロ編」、気になるのですが、購入に使えるポイントが貯まったら購入してみようかな、と考えています。
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    投稿日:2015.09.04

ブクログレビュー

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  • ごうごう

    ごうごう

    ミクロマクロ共通して、初版が2010年代前半のため、各種データが古い点はあるものの、instant economistという観点では、色褪せていない。

    例えが平易で非常にわかりやすい。
    自分の場合、恥ずかしながら大学でも経済を学ばず、診断士試験で初めて学んだレベル。

    合格のための知識ということで、偏ったインプットを解消すべく読んでみたが、幅広に、かつ小難しくなく書かれている。タイトル通り入門書。

    ---------
    ・経済は、トレードオフ。報道の裏にいる報道されていない人にも想像を広げるセンスが大事。

    ・福利厚生は一方的なプレゼントに感じるが、会社の行為ではなく、労働者が生み出すものの価格である。
    →出井さんの住宅補助不要論

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    投稿日:2023.08.13

  • テクノグリーン

    テクノグリーン

    ティモシー・テイラー著、池上彰監訳『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編』(かんき出版)
    2013.2発行

    2017.12.23読了
     経済学の本だけど、グラフの曲線を右に左に動かしたりせずに、分かりやすく言葉で解説している。池上彰が監訳しているだけのことはある。アメリカの経済学者が書いた本なので、本書に掲載されている事例もアメリカの話が多かったが、これはこれでアメリカ経済の考え方が分かってよかった。次は池上彰が書いた経済学の本を読んでみようか。

    URL:https://id.ndl.go.jp/bib/024254437
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    投稿日:2023.01.10

  • tanukitune1031

    tanukitune1031

     アメリカの経済を中心にしているからか、知らない用語が多いためか気軽に読むのには向かないと思った。ただ、普通に生活していれば経済学の大まかな概念を知ることは無いので、読んで損はない。

     本書では、需要と供給、貧困や福祉、情報の非対称性が経済にどのように影響をもたらすのかを事実を基に述べている。

     経済学は、何をどうやって社会が生み出し、誰が消費するのかを軸に考えることが大事である。さらに、物事にはトレードオフがあるので、全てを一方向のみに進めることはできない。コストがどこにかかるかを順を追って考えることが大切だと思う。
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    投稿日:2022.11.27

  • がらがら

    がらがら

    自分も経済知識がある方では無いけれど、それでもなんとなく元々知っていることが多かった。広く浅く取り扱っている感じで、大学生くらいが読むにはちょうどいいかも。

    投稿日:2022.11.03

  • 708

    708

    マクロ編と合わせて読みました。
    ミクロはマクロのような大きな枠組みよりも視点を個人に近づけたもので、政策やそれを受けた公共事業・福祉(とそれにまつわる補助金)など。

    良くニュースの感想等でよく聞く「もっと困っている人に金を使え」的なコメントが、実は的外れだったりすることがなんとなく分かった。
    仮にそうしたら補助金・給付金をもらった人は努力することをやめてしまうのでは?それに、政府がばら撒いた金はスピード感を持って市場で回されなければ意味がない。貯金に回されたら循環が止まり誰の利益も生まなくなってしまう。

    世の中を豊かにするには、ビジネス上(技術であったりサービスであったり)の進化はさせ続けなければいけない。そのためには教育が大事。企業だって目標のために専門の知識を持つ人がほしいので募集をかけるしより高い給料を払う、そうしなければ他社に取られてしまうし、国がそういう人材が育つような教育の仕組みを作れなければ海外からの優秀な人材であったり、逆に競争力を失った日本企業に愛想を尽かし海外へ人材が流出してしまうかも知らない。

    意外と色々なことがつながって最終的に自分達の身に降りかかってくるのだということが改めて分かりました。
    政府でも個人でも何か行動を起こすために金を使う、それが巡り巡って誰かの利益になるわけだけどあんまり実感がないのが悲しいところ…
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    投稿日:2022.10.02

  • 最機能2

    最機能2

    ミクロ経済学の要素を簡潔に示してくれている。経済学の理屈、世界の背景を大まかに学べた。実践的かというと微妙だが、大枠を知っていることに意味があると思う。
    内容は簡潔なゆえ、スラスラ読める。

    投稿日:2022.02.26

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