【感想】眠れる美女

川端康成 / 新潮社
(190件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
43
64
44
7
4
  • 深い眠りに落ちた若い女の横で、ただ眠る

    変わらぬ若い美への憧憬と恐れ、そしてフェティシズム溢れる
    川端後期の傑作といわれる本書。

    年をとり“男の能力”を失った老人たちが、
    薬で深く眠らされた若い女のとなりで、
    “秘仏と寝るようだ”と例えられる平安な夜を過ごす。

    老人は裸で横たわる女たちのなめらかな肌や張りのある胸、
    無心な寝顔を眺め、触れては、かつての女や古い記憶を思い出していく。

    本来であれば生命力に溢れた若い体は、薬で死んだように眠っている。

    老人にとって生の象徴であると同時に、どこにも行き着かない官能/性は死も連想させる。
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    投稿日:2016.03.04

ブクログレビュー

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  • 青葉

    青葉

    初めて読んだ川端康成の小説が、この『眠れる美女』だったのか『山の音』だったのかが定かではない。ただ、好きな小説だった。一緒に収録されている「片腕」もよかった。

    投稿日:2024.02.17

  • 本郷 無花果

    本郷 無花果

    低俗な卑猥さは一切感じられなかった。川端は本当に〝女性の美しさ〟を知っている。傍らの眠れる美女の体温、匂いに主人公の過去と現在が悲哀さを誘う。
    『山の音』もそうだが、本作も再読に値する。購入して良かった。
    読了は2023.12.22。
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    投稿日:2024.02.12

  • マッピー

    マッピー

    目次
    ・眠れる美女
    ・片腕
    ・散りぬるを

    読む前に耳にした話では「気持ち悪い」というような話を聞いていたのだけど、実際に読んでみたらちょっと違った。
    確かに気持ち悪くは、ある。
    全裸で眠っているうら若い美女に添い寝するだけの高齢男性。

    金にあかせて、若い美女を貸し切って添い寝するだけっていうのは。確かに気持ち悪い。
    相手は意識がないのに、こちらだけ冷静に観察できる。
    それは気持ち悪いというよりも、生理的に無理。

    しかし、江口老人なる語り手は、まだ67歳なのだ。
    たった67歳で老人扱いされる江口。
    たった67歳で老人の自覚を持つ江口。
    これは一体どういうことなのか。

    性的にままならないのが67歳ということらしいが、そのほかに社会的存在であるとか、精神的な円熟味とか、何かポジティブな感触がなかったのだろうか。
    けれども『眠れる美女』しかり、『片腕』しかり、老いていく自分と若い娘たちとの対比が、この時期の川端康成のテーマだったのかもしれない。

    今から50年ほど昔の話。
    今なら67歳で人生の終わりと考える人はあまりいないのではないかと思われる。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.26

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    「波の音高い海辺の宿は、すでに男ではなくなった老人たちのための逸楽の館であった。真紅のビロードのカーテンをめぐらせた一室に、前後不覚に眠らされた裸形の若い女-その傍らで一夜を過す老人の眠は、みずみずしい娘の肉体を透して、訪れつつある死の相を凝視している。熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の名作『眠れる美女』のほか二編。」続きを読む

    投稿日:2023.09.26

  • yumi.。.:✽・゚

    yumi.。.:✽・゚

    「生」も「正」も「性」も超越してしまった。生命も正義も道徳も美も、すべては尊いのだろう。それでも、全てを取り払いむき出しにされた、性(さが)は、ヒトと言わずケモノと言わず、老人も赤子も男も女も等しい気がする。愚かでちっぽけでおぞましくも美しい。行き着く先は全て平等で、白骨をみても、男か女かくらいしかわからないだろう。それでも命や生活の動きは細やかで尊い。細やかに人の外観を描き内面を見透かすような、川端康成の眼力はすごい。解説の三島由紀夫の読み方が高尚で、同じ小説を読んだのだろうかと、訝しんでしまった。続きを読む

    投稿日:2023.08.27

  • ゲチョオキックス

    ゲチョオキックス

    隣を気にする感じとか、おかみのふとさ、じいさんのあわてぶり、宿での二人の陰影がなんともいえない。つまり寝息のみを感じるという一つの小世界への小旅行。

    投稿日:2023.08.17

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