【感想】楽園の泉

アーサー・C・クラーク, 山高昭 / ハヤカワ文庫SF
(37件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
12
11
6
2
0
  • 幼年期の終わりにと似たストーリーラインですが

    信仰と科学の進展の興味深い表現を追体験すると、往時のSFが持つ勢いと可能性を追体験できます。
    もちろん、架空の設定にのめり込めずに技術的な不可能性に目をつぶれずに楽しめないこともあるでしょう。
    でもSFというのはそういうものではないような気がするのです。
    クラーク先生が見なかったインターネットとメディア環境の激変は信仰に対する二極化を見事に見せています。信仰とは、科学万能主義による迷信として嘲笑されるべきものか、あるいは科学は信仰にもともと予言されているという立場か。
    この作品では、理解可能な宇宙人が登場することにより、クラーク先生のそういった未来に対する一種の予見も見て取れます。
    科学は魔法ではないのです。我々は知らねばならず、我々は知るのです。
    クラーク先生ほどの知的裏づけも無いにも関わらずSFを敬遠していませんか?
    確かにSFは明らかな虚構です。その構成は魔法によって成り立っているともいえるでしょう。
    ですが、今の社会の科学技術を魔法としての側面を持たずに理解している人間がどれほどいるでしょうか?
    そう思う時、SFの無限の創造性に誘惑されてしまうことがあります。
    珠玉の黄金時代の作家の一作に!
    星5つ。
    続きを読む

    投稿日:2016.12.03

  • とても壮大な話

    リアリティー溢れる軌道エレベーター建設に関する描写はそれだけでも十分に楽しいのですが、それだけにはとどまらず、話は時間的・空間的に大変な広がりを見せていきます。ただ硬質なだけではない、優れたハードSFです。続きを読む

    投稿日:2013.10.22

  • 読後感よし

    大雑把に言えば、赤道上にある島から大気圏外に至る巨大なエレベーターを建造するお話ですが
    単純に波瀾万丈があるだけでなく、遙か古代の物語とも平行に話が進み、飽きさせない展開となっています。
    そして、名著幼年期の終わりを思わせるエピローグもクラークファンを唸らせます。
    地味ではありますが、私はアーサー・C・クラーク作品の中でも最も好きな一作です。
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    投稿日:2014.10.04

ブクログレビュー

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  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    宇宙エレベーター(軌道エレベーター)建設の実現を目指す技術者の壮大なSFロマン。
    21世紀に入って実現の可能性が高まっているらしい、軌道エレベーター建設を1979年に描いた小説。全体の構成としては「プロジェクトX」風とどなたかが書いていた通りの感じ。不可能を可能にしていく建設への積み重ねと、現地スリランカの架空歴史ロマンや、地球外知的生命体との接触もからめて物語は進んでいく。ハードSFとして技術的な話も多く、中盤まで起伏がやや緩やかな展開に感じたが、未知の事象に向かっていくセンス・オブ・ワンダーは健在。アクシデントが続く終盤のスリルと緊張感には映画のような迫力があってのめり込んだ。圧巻の結末にクラークの偉大さを再度思い知らされた。やっぱすげえ。続きを読む

    投稿日:2021.08.06

  • 沙都

    沙都

    宇宙エレベーター建設をめぐるハードSFでありながらも、宗教や異星人とのファーストコンタクト、架空歴史ものの要素も盛り込まれた作品。

    宇宙エレベーターの建設への理想的な場所が、3000年の歴史を持つ寺院が建つ霊山の山頂。ここで描かれる宗教と科学の対立。思索的な部分や抽象的な話が多くて、前半はかなり苦戦しました。なんとなく読み進めていたらいつの間にか、具体的な建設の話に移ってしまっていた印象で、自分の読み込みが追い付けなかったのがもったいない……

    一方で宇宙エレベーターの描写や、異星人とのファーストコンタクトの歴史が語られる場面の壮大さがよかった。人間の技術では測れない異星人との出会いが人類にもたらした、宇宙への夢や憧れ、そして野望。また超技術を持った異星人が存在するとわかった時、人は宗教を、そして神をどうとらえ直すのか。壮大な思考実験を小説という形で、読者である自分にも突きつけられるような気がします。

    そして徐々に実現が近づいてくる宇宙エレベーター。しかし、完成直前に大きなトラブルが起こり……
    科学が進んだ世界での宗教の立ち位置や在り方が前半のテーマなら、後半は打って変わって極限の困難に挑む、科学とそして人間の可能性を信じるドラマの部分がより強く打ち出されます。ここも理論がしっかりとしていたり、宇宙エレベーターを頭に描くSF的な想像力は必要とされますが、老齢の技術者がたった一人で困難に挑む姿と、宇宙の描写は分からないながらも壮大かつ、心躍らせ胸熱くするものがありました。

    そしてエピローグで物語はさらなる時代を、宇宙を超えて紡がれる。科学と宗教、そして宇宙エレベーターという壮大なテーマを締めくくる、しみじみと残るものでした。

    自分の理解が足りず読み逃しているポイントも多々あるとは思うのですが、それを補ってあまりある魅力のある作品だったと思います。
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    投稿日:2021.04.18

  • まつぼっくり

    まつぼっくり

    大林組が宇宙エレベーター構想なんてものを掲示したりしているけど,実際に宇宙エレベーターが建設されるのはあとどのくらいかかるのだろうか。

    投稿日:2021.02.17

  • yoshidamasakazu

    yoshidamasakazu


    アーサーCクラーク 「楽園の泉」

    地球と宇宙空間を結ぶエレベーター建設をめぐるハードSF。一人称だが2千年を行ったり来たりするので、意外と読みにくい

    テーマは 政治と宗教の時代から、科学と精神の時代への変化であり

    タイトル 楽園の泉は 精神的な慰め、永遠の生命 を意味しており、精神性の象徴なのだと思う

    宇宙エレベーターは 科学の象徴であり、物語の中で 科学と宗教、科学と自然の共生を描くことで、時代の変化を明らかにしているのでは?


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    投稿日:2020.11.08

  • k-masahiro9

    k-masahiro9

    このレビューはネタバレを含みます

    「ユーリ・ガガーリンが、もっと100キロも高いところで感じたほどには、寂しくないわ。ヴァン、あなたはいままでにない新しいものを世界に持ちこんだのね。空はそれでも無慈悲かもしれない――でも、あなたはそれを服従させたのよ。こういう旅をする勇気のない人たちが、少し入るかもしれないわね。その人たちを心からお気の毒に思うわ」(p.248)

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    投稿日:2020.04.28

  • kto1906

    kto1906

    軌道エレベータの完成を目指すエンジニアの奮闘記。
    宗教と科学の対決、というハインライン先生お得意の重厚なテーマが一貫するのかと思いきや、中盤であっさり決着がついてしまう。
    後半はハリウッド映画ばりの緊張感あるレスキュー劇。急に軽い話。
    2,000年前の古代のエピソードに始まり、エンディングでは遥か遠い未来に飛ぶスケールの大きさはさすがです。
    続きを読む

    投稿日:2020.02.01

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