【感想】悲しみの歌(新潮文庫)

遠藤周作 / 新潮文庫
(79件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
41
19
8
1
0
  • 現代にも同じような虚無感が・・・

    「海と毒薬」に引き続き読んでみた。日々の暗さ、希望のない生活、疲労、もうどうにでもなれという虚無感。単なる利己主義での追従と違うからこそ悔いも大きかったのだろうか。そもそも生体解剖事件の関係者すべてが無反省な人間だったならこの事件は闇に葬られたはずだ。過去の出来事から学んで来たはずなのに、豊かで平和である現代にも同じような虚無感があるように思う。後半で先輩記者の野口が語っている内容が深い・・・どんな正しい考えも限界を超えると悪になる。一人の人間が半生苦しんだことを半時間そこそこで話せるはずはない・・・続きを読む

    投稿日:2017.01.25

ブクログレビュー

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  • 絵馬nuel

    絵馬nuel

    このレビューはネタバレを含みます

     生体解剖という医学の暴力と無反省を糾弾する折戸が、記事の暴力により人を殺し、その現実を受け入れようとしていないという構造が、冒頭の「泥棒が泥棒をつかまえ」たことに似て滑稽に思えた。

     遠藤が、彼を含めた若い世代の人間に「距離を置いて対している」[427頁]ことも相まって、私は彼らに対して愛着を持って接することができず、正直に言えば「救いようのない」と思えてならなかった。

     ただ、幸運なことに、折戸には野口という気づきの種となる人物がいる。勝呂に後日談があったように折戸にも後日談があるならば、野口は「救い主」になれたのだろうかと想像した。

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    投稿日:2024.04.02

  • 安美

    安美

    2024.2.17 読了。
    「海と毒薬」の続編であろう作品。
    新宿でひっそりと開業している医者・勝呂は戦時中、外国人捕虜の人体実験に関わったことがある元戦犯であり、現在も色々な事情を持つ女性たちの堕胎手術も行っていた。
    ある時、新聞記事の折戸から「戦犯について」の取材を受ける。
    そして謎の外国人ガストンは末期の癌患者の老人を助けようと勝呂の元を訪れた。
    落第しそうな学生がなんとか教授から単位をもらおうと悪巧みをしたり、いつの日かの夢のため夜の街で男たちを騙して食費を浮かせる女……様々な人間が行き交う新宿で生きる人々たちの物語。

    読んでいて重く辛く、そして考えさせられる作品だった。「海と毒薬」も相当に重いテーマを扱っているが大河に飲み込まれるように逆らえぬ戦時中のことが尾を引いて人々の人生を狂わせていくツライ物語だった。
    「神を信じていない」という勝呂の前に見返りを求めず目の前にいる悲しみを抱えた人をなんとか笑顔にしようとしているガストンの姿は最初は健気に見えたが、読んでいくと悲しみも苦しみも包んでくれそうな光を放つ人物で、神というものが存在するのであれば苦悩や苦痛、様々な困難を与える者よりも慈悲深いガストンが神であれば良かったのに…などと思えてしまった。
    ガストンが傍にいて助けを求める人々もいるのに自分で自分の首をどんどん締め付け追い詰めてしまう勝呂の姿が苦しかった。

    40年程前に書かれた作品なのに、生と死の問題や正義と悪の関係、誹謗中傷がどれほどの刃になるのかなど様々な問題が描かれ、しかしそれらの問題が現在も何も変わらず解決していると言えない世の中だと感じて気持ちが沈む。人が人を救うことはかなり困難であり、また人が人を裁くということも困難であると突き付けてくる作品だった。読んでいて辛く苦しい作品だったが読んで良かったと思う。

    みんながガストンのように生きることが可能であったら「神がいる」といえるのかもしれないとも考えてしまうがガストンのような人が利用され傷付き、哀しみを背負う世界が現実なんだと思うとやりきれない気持ちになる。

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    投稿日:2024.02.17

  • よすけ

    よすけ

    人が人を裁く資格なんてない。40年経った今も、当然それは変わらない。
    追い求める正義は、果たして誰にとっても正義なのか。自分がその立場に立った時、絶対に起こらないと断言できるのか。
    生きることに付随する悲しみが、あまりに多すぎる。もう苦しまなくていい、もう辛いことはない。誰もが死に向かう中で、死を求めることが「良くない」ことだと断言ができなくなる。
    人間の悲しみを知らないように振る舞う人間は、眩しい。し、暴力的だ。
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    投稿日:2024.02.04

  • コルレア

    コルレア

    大晦日に読破。良かった。もう一度読みたい。
    人間はやがて死ぬ。早いか遅いか。今していることは、だからなんなん、と自問するとに戸惑うことばかり。どう生きようか。

    投稿日:2023.12.31

  • tweety

    tweety

    このレビューはネタバレを含みます

    一貫して哀しみの歌がこの小説には流れている。

    奉仕の心が大切なのは間違いないが、それが実際に他人への救いとなることがいかに困難かを知らされる。

    救われることへの諦念に僕は息を止めたくなった。

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    投稿日:2023.11.22

  • やっふー

    やっふー

    このレビューはネタバレを含みます

    中学生の時に読んだときの衝撃が忘れられない。
    悲しさとは違う哀しさを知った本。
    やるせなくて、悔しくて、でもその感情をぶつける矛先が無くて、哀しい。
    海と毒薬でも沈黙でもなくこの本を教室に置いたあの国語の先生はたくさん本を読む人だったんだなあと思う。
    今年の夏に読み返したい。

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    投稿日:2023.07.29

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