【感想】死ぬという大仕事

上坂冬子 / 小学館
(2件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
1
1
0
0
0
  • 最期ぐらい自分で決めたいと前向きに思える本

    親が逝き、パートナーが逝き、次は自分の番だという年齢になった今日この頃、可能ならば身内には知らせることなく一人で逝きたいと願ってやまない。身内(子供たち)に面倒をかけるのも申し訳なく、また面倒だと思われるのも苦しく。
    とはいえ、病に臥せってしまって医師の手を借りるような状況に陥った場合、やはり心ある医療を欲するのが人のつねかと。
    医師や治療に携わってくださる方々との信頼関係(高額な医療費の支払いが前提の"信頼もどき"であっても)があれば、薬漬けの治験のような状態でもいいような気がします。
    この本は、人生の最期の仕事である死を目前に、その過程を表現したり問題提起をすることでいきいきと生き抜かれた著者の筆への情熱が手に取るように伝わってきます。
    と同時に、現在の日本の医療現場の実情を知ると、治療を受ける際には医療分野の素人であっても相当な医療知識は必要なのだと思い知らされます。
    行きつけの料理店であれば「お任せで」と頼むと、美味しい一品を提供してもらえますが、病院の場合はたとえかかりつけであっても「お任せで」は通用しないようです。

    人生の最期が来るその時に対して抗う為に生きるのではなく、自分が望む最期の選択をする為に生きるという、そしてその為に不可欠な人と人との関わりがそこにはあるのだと気付かされました。
    続きを読む

    投稿日:2016.06.05

ブクログレビュー

"powered by"

  • kazzash

    kazzash

    作家上坂冬子さんが、がんでなくなられたのは2009年4月14日。

    本書は「緩和ケア」にふれた筆者が自身の体験として、そしてジャーナリストの視点から緩和ケアを綴った遺作となる。
    2009年6月に刊行されたものの文庫版で、編集者からの追記が加えられている。

    上坂冬子さんの希望が綴られているとともに、当時(ほんの数年前)のがん医療、緩和ケア、終末期医療の課題が浮き彫りにされている。

    上坂冬子さんらしい語り口と、それに対する慈恵医大病院の医師、理事長の率直な意見がお茶を濁すことなく記されている。

    ユーモアあり、ストレートな問題提起ありと満足できる内容となっている。

    がん患者の立場から、また、医療を行う立場からの視点と、深く味わうことが出来た。

    患者の立場からという点では、上坂冬子さんのようなある種達観した状態で入れるのはまれだと思うけども、だからこそ展開できた話題は大変貴重だと思える。また、医療者の視点から、特に慈恵医大の建学の精神「病気を診ずして病人を診よ」という根底にある精神が貫かれていることに胸を打たれた。

    緩和医療実践のためにとる行動にはどのようなものがあるのかはっきりとは分からないけども、現状をしっかりと見つめるという点で非常に勉強になった。

    ----------------
    【内容紹介】
    女流作家の話題の遺作がついに文庫化
    2009年4月14日に死去した作家・上坂冬子氏の遺作が文庫化。08年秋にがん再発が見つかり、手遅れと言える状態から、「緩和ケア」医療を選択することで残された時間を有意義に生きた記録。それは同時に、自らの病状を受け入れて、「いかに自分らしく死ぬか」を徹底して追求した時間でもあった。
    また上坂氏は、望む治療が受けられない「がん難民」が多発する医療制度に疑問を抱き、自らの闘病を詳細に明かすとともに、病室で医師らにインタビューして原稿にまとめた。かつてない赤裸々な筆致で末期がん患者の本音と真実が語られた「最後の傑作」である。
    発売当初から大反響が起きて原書は版を重ね、「死」をテーマとしたノンフィクションとしては異例のベストセラーとなった。
    今回、文庫化に当たって当時の主治医ほか医療スタッフに再取材し、この3年間で医療現場、緩和ケア体制がどのように変わったかを追補した。
    ----------------
    【目次】
    追悼 最期の日まで作家として
    
第1章 がんは治すな、付き合うべし
    ・終末期医療と緩和医療はどこが違うか
    
・「高齢者は進行が遅い」は迷信
    
・「悶絶死」でなければ本望です

    ・もう住んでいた家も売り払ってしまった

    第2章 医者と患者をつなぐ「命を懸けた信頼関係」
    ・女性は枯れ木が朽ちるように、男性はバキッと折れるように

    ・命をあずけたからには担当医の人生観に従います
    
・「散る桜」に美しさを感じる日本人の死生観

    第3章 自分らしく生きるために
    ・「がん難民」を生む医療は許せない

    ・死期は自分でわかりますか?

    ・できることなら誰にも知られずに死にたい

    第4章 すべての患者に全人的医療を
    ・慈恵医大病院長が語る「医療制度の大きな課題」

    ・受け継がれた「病人を診る」精神と、日本人が失ったもの
    ----------------
    続きを読む

    投稿日:2013.01.16

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。