【感想】奇岩城

モーリス・ルブラン, 平岡敦 / ハヤカワ・ミステリ文庫
(9件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
3
1
2
2
0
  • 懐かしいです。

    子供の時に夢中になって読みました。
    アルセーヌ・ルパンのシリーズもたくさんありますが、この作品は、何とも切ない感じが心にしみて、忘れられない本になっています。

    投稿日:2013.11.08

ブクログレビュー

"powered by"

  • らじヲ

    らじヲ

    幼い頃から『ルパン』は面白いものだという擦りこみがあったのだけど、何度読んでもアルセーヌ・ルパンという人物に魅力を感じない。

    俗物な世俗小説でご都合主義だし、実在の人物や他の小説の人気者を勝手に使って貶めるし、かなり大味なおじさん向けスポーツ誌に連載されているような大衆小説って感じ。

    本作も舞台は大きく設定されていたけれど、最初から最後まで面白いとは感じませんでした。
    自分はルパンよりもホームズのほうが好きなんだと思いました。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.29

  • 沙都

    沙都

    思い出補正が入っていない、といえば嘘になる。それでも面白いものは面白い! 
    小学生の時、『奇岩城』を含むポプラ社版ルパン全集を、何度も繰り返し読んでいました。そして十数年ぶりのこの『奇岩城』

    消えた強盗犯、謎の暗号、天下の大怪盗対高校生探偵の追走劇、歴史に隠された秘密の城とお宝たちと、ワクワクする要素は盛りだくさん。昔繰り返し読んでいたため、話の筋はほとんど覚えてはいたものの、それでもテンポの良さでどんどん読まされます。

    ルパンと高校生探偵のイジドールの関係性も良かったなあ。怪盗と探偵という敵同士でありながらも、ルパンはイジドールの実力を認め、時によっては対等の友人、あるいはライバルに語りかけるように、また時には人質を取ってイジドールを事件から遠ざけようとしたり、親や師匠のようにイジドールを褒め称えたり。

    まさにルパンらしい掴みようの無さなのですが、根底にあるのは実力があり、なおかつ爽やかな少年へのルパンなりの好意であり、そして敬意でもあるような気がします。

    そしてルパンに対するイジドールのキャラも良かったなあ。マンガの影響か、高校生の名探偵ってだいたいひねてたり、生意気だったりというイメージが強いのですが(笑)このイジドールに関しては、ちゃんと警察官にも礼儀正しく謙虚だし、父親思いだし、純粋にルパンとの戦いを楽しんでる感じがみずみずしく、好感が持てます。
    それに、ちゃんと授業も受けに帰ろうとするのも、真面目な高校生らしい。他の高校生探偵なんて、だいたい授業ほったらかすし……

    フランスの壮大な歴史を辿りつつ、徐々にルパンの隠れ家に迫っていくイジドール。迎えるルパンとの対峙、そして二人が最後に見る光景は……

    ルパンは「ジュテーム」のエンタメだと個人的に思っています。ポプラ社版を読んでいたときは、ルパンの恋愛やロマンスに関わる部分はカット・改変も多く、女性や弱者に優しいルパンというイメージでした。なのでたまにこうした完訳版ルパンを読むと、ルパンは愛に正直な怪盗なんだな、と思います。(たまに正直すぎて、笑ってしまうようなものもありますが)

    結末もなんとなく覚えていたものの、ルパンの決意の重さも、ラストの余韻も当時は半分も理解してはいなかったでしょう。フランスの歴史の中の謎解きという壮大な趣向があったことに気づき、それなりに人の心や物語の酸いも甘いも知るようになり、そして、子どもの頃からルパンに親しんでいたこと。それらが合わさってこの『奇岩城』の物語の意味は、今回読んで自分の中で大きく変わったように思います。

    当時はルパン一冊読むのに1週間以上はかかっていた気がしますが、今では二日で読めるようになっていました。それでも童心に帰るように、ルパンを読めたことは変わりません。これからもルパンは、自分の読書人生の礎として、あり続けるのだろうと、改めて思いました。

    余談ですが、作中に出てくるシャーロック・ホームズは、コナン・ドイルとは何の関係もない、ということだけ一応言及しておきます。ルパンシリーズにおけるホームズの扱いは「ルブランも若かったんだなあ」と自分は理解しています(笑)
    続きを読む

    投稿日:2020.04.26

  • Στέφανος

    Στέφανος

    訳:平岡敦、解説:長谷部史親、原書名:L'AIGUILLE CREUSE(Leblanc,Maurice)

    投稿日:2019.02.08

  • koba-book2011

    koba-book2011

    「奇岩城」モーリス・ルブラン。

    とても有名な、アルセーヌ・ルパン物語の長編。

    なンだけど、改めて読むとこれ、ルパンのほぼ一方的な敗北の物語でした。

    #

    ルパン・シリーズは、どうやら、1907年の短編集「怪盗紳士ルパン」から始まります。

    そのあと、中編集、とでも言うべき「ルパン対ホームズ」1908。

    そして戯曲の小説化である「ルパンの冒険」1909。

    そして同年1909に長編「奇岩城」。

    なので、簡単に言うと、「初のルパン物の長編」として構想された、と想像できます。

    想像なんですけど、短編中編ではなくて長編になると、「ルパンすごいぞ勝ちました」では、もたなくなった。むしろ、「ルパンという人の背景を描く」。そのためにはルパンの秘密が暴かれなくてはいけない。

    というわけで、小説「奇岩城」は、初の長編にして同時に、はやばやとスピンオフの趣(笑)。

    ぶっちゃけ、主人公はルパンぢゃなくて、名探偵役のイジドール・ボートルレ君。

    #

    ルパン一味による謎の殺人事件。
    イジドール君が解明、ルパンとの丁々発止。買勝った負けたの攻防戦。
    全てイジドールくんサイドからの視点で描かれます。

    ルパンは、やんごとなき女性を愛し、妻にして、まんまとハッピー…かと思いきや。
    そうはさせじと、イジドール君。
    「謎に包まれたルパンの、ルパン一味の本拠地。ルパンの巨万の富の秘密」に迫っていきます。

    このあたりはいわば、読者としては。「ヒーロー・ルパンが追い詰められていくのを愉しむ」、というねじれ構造。
    なんですが、小説「奇岩城」としては前半でユニークかつ冒険小説らしい夢のある「名探偵イジドールくん」に感情移入できているので、問題なし。イジドールくんと一緒に、「あのルパンの秘密が遂に分かるのか!」というわくわくですね。

    つまりルパンは、中世以降、歴代権力者が富を隠してきた、海岸沿いの奇岩の城(中身が空洞になっている)を手に入れている。蓄積された富ごと。
    その奇岩城をうまく使って、ここまでの一味の活動を展開してきた。

    その奇岩城の入り口を、面倒くさく書き記した暗号がうまく使われて、ダレずに筋が運ばれます。このあたり、フランス史に詳しければよりより楽しめるんでしょうけれど。
    日本に置き換えると、「天智天皇も源義経も織田信長も、みんなが奇岩城を手に入れたことで力を持ったのだ」みたいなロマンチックなお話です。胃もたれしなくて愉しい読書です。

    イジドール君が、ホームズもガニマールも呼び寄せた。
    御用御用!と奇岩城に打ち入ってみると。
    ルパンは「ふっふっふ待っていたよ」と余裕なんです。
    なんだけど、ともあれ奇岩城の機能はもう放棄せざるを得ない。

    このあたりから急激に物語の主人公としてルパンが帰り咲く。というか初めて描かれる。

    スリルを愉しむように間一髪で脱出。
    ところがその後、ホームズに追い詰められて。
    流れ弾?に愛しい奥さんが撃たれて死んでしまう。怒涛の展開。

    悲嘆にくれて去っていく、愛の怪盗ルパン1世。
    終わり。

    #

    だからつまり、ルパンが本拠地を暴かれ、手放し、結婚したばかりの愛しい妻を失って、泣きの涙で去っていく。
    つまりそういうお話なんです。ルパンが負けちゃう。

    #

    よく考えたらスピンオフの構造だなあ、と思いながらも。

    イジドール君のロマンチックな若さの謳歌、のびのびとした(瑣末なリアリズムとかブンガク性をふっとばすような)ロマンの味わいが、いかにもルパン・シリーズな食べ心地。

    序盤、なかなかルパンが出てこない(というか、ほぼ奇岩城のラスト山場まで出てこない)ので、乗りにくいところがありましたが、イジドール君が活躍を始めると一気にエンターテイメントが走りだす。

    #

    多分小学校とか以来の再読。
    大人になっても、いや、大人になってからだからよりより、罪なく楽しめました。

    この新訳シリーズで「813」を再読したいなあ、と。
    (まだ出てないんですよね。このシリーズでは)
    続きを読む

    投稿日:2017.03.03

  • atsuwo3

    atsuwo3

    まさかシャーロック・ホームズが出るとは思わなかった。
    アニメのルパンをイメージするとよろしくないが、
    話としては面白かった。

    投稿日:2016.01.28

  • ashisas

    ashisas

    このレビューはネタバレを含みます

    モーリス・ルブランのルパンものとしては代表作のうちの一つなんだと思うんだけど、なんか「うーん」という感が否めないままラストまで行ってしまい、しかもオチの後味が結構悪い。なんともポジティブな評価がしにくいな、という印象。

    まず、ミステリーとしての謎解きの要素がちょっと中途半端な感じ。確かに謎解きのポイントはあるんだけど、それがストーリーの中で一つのエッセンスに過ぎない感じなので、「この謎はそういうことだったのか!スッキリ!!」という流れには、自分の中ではならなかった。

    それと、恐らくこの小説が世に出てから今に至るまで、きっとマニアの方々の間では様々な議論がなされているんだろうけど、コナン・ドイルの生んだ名探偵、シャーロック・ホームズが当たり前のようにさらっと出てきて、しかもかなり適当な扱いを受けており、かつ人格的に本家本元のホームズとは随分と異なる残忍で卑劣なキャラクターとして描かれているところから、この作品を前向きに好い作品として捉えることができなくなった。
    後書きによると、ドイルの許可を得ずに勝手に登場させてるらしい。その点だけを考えるなら、ルブランが自分の生んだキャラクターであるアルセーヌ・ルパンという強盗に対峙できる、強力なライバルとしての探偵を作り出す手間を省いた、あるいはそういった探偵を生み出すだけの能力に欠けていた、と見做されても仕方ないかと思う。それか、ただ単純にフランス人だからイギリス人を何とかして見下したかったのかぁ、とか邪推してみたり。

    実はルブランのルパンものの中には、これ以外にもホームズが敵役として出てくる作品がちょいちょいあるんだけど、いずれもホームズが見事なまでに卑怯で真っ黒な悪役ぶりを披露。
    海外推理小説の入り口としてホームズやポワロを読んでいた身としては、このルブランの仕打ちを看過して、素直にルパンを楽しむことはできないな、というイメージです。

    ま、海外の古典ミステリーをだいたい読んだな、というタイミングで、ルパンⅢ世の方じゃなくて本家本元のルパンについても知りたいな、ぐらいのノリで読むには好いかもしれません。俺は好きにはなれなかったけど。

    しかし、ルパンってⅠ世もⅢ世も、女運は悪いんだなぁという感想だけはくっきりと抱くことができました(笑)

    レビューの続きを読む

    投稿日:2012.05.28

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。