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パオロ・バチガルピ, 田中一江, 金子浩 / ハヤカワ文庫SF (82件のレビュー)
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総合評価:
bookkeeper
1
バンコクの蒸し暑さを感じるSF
初長編で大きな賞を獲ったということで「『ニューロマンサー』以来の衝撃」が売り文句になっていますが、さらに言うと雰囲気・手法もギブスンを意識しているみたいで、テクノロジーの世界観への組み込み方とか変な日…本人とかセリフ使いとか多視点とか、もろに似ています。 普通は人造人間(ねじまき)の自意識が人間と同じホンモノなのかがテーマになりそうですが、そこはねじまき本人が語り手になっていることもあって「当然ホンモノですよ」という感じでスルー。遺伝子をいじっているとは言え立派な生物だからでしょうか。可愛そうにまだ社会的にはモノ扱いではありますが、電気羊なんかと比べると、世界観的には人造人間の人権確立が進んでいる気がします。 惜しむらくは、終盤にかけて筋の運びがぞんざいでアラッと思うところが少々あります。トントンとテンポがよろしいという評価もあるかもしれませんが。 また、バイオを道具仕立てにしていますが、世界観への組み込みはうまくても発想自体にはさほど新しさは感じません。そういうタイプのSF小説ではないと思います。続きを読む
投稿日:2013.10.13
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アジア理解SF
バンコクを舞台とした「アジアという地獄」の物語。前半がやや退屈かつ冗長だったが、中盤以降はイッキ読み。著者はアメリカ人だそうだが、タイや日本やマレー華僑や、アジアのことを皮膚感覚レベルで理解しているよ…うに思う。「日本人以上に日本人的なねじまき人間」なんざ、日本人以外の誰が作るってんだい(笑)続きを読む
投稿日:2013.09.25
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imemuy
「カロリー企業」「ねじまき」突然乱雑なタイの雑踏に落とし込まれたようで、物語の設定を理解するのに時間がかかった。ネットで誰かの用語解説サイトでやっと状況と対立軸を把握。 誰もがカロリーを摂取してエネル…ギーを確保するのに必死な世界で、白シャツの暴力に怯えながら、どのように生き残るのか思考を巡らせる、泥に塗れた汚くも弱肉強食の世界観。続きを読む
投稿日:2022.08.19
tikuo
複数巻を平行に読破月間。 遺伝子改変とハックが当たり前になり、他国の作物をジーンハックゾウムシによって壊すことで、エネルギー機器に陥らせる時代。独自の種子バンクを持つタイでは西洋由来のカロリー(エネ…ルギー)企業に負けない食文化を構築した。そこで藻類を研究するアンダーソン、通産省で闇カロリーを駆逐するジェイディー、日本製の遺伝子改変"ねじまき"少女のエミコの人生が交錯していく…。 クールなアンダーソン、自分がうまく制御できないエミコ、熱く衝動的なジェイディーに、得体のしれないホク・センと、サイバーパンクというか、アニメ的な登場人物の視点でそれぞれ進む序盤。状況の説明と、やや支離滅裂なストーリー展開がほとんどのため、上巻前半はなかなか読みすすめるのが難しい。 裏表紙に書かれているストーリーも、何となく全体にずれていたり、表現が誤っていたりするような感じで、出版社も上巻だけでなんともならないように思える。 そういう滅裂感が、上巻の後半にやや動き出してくる。的だと思っていたジェイディーが事件に巻き込まれ、エミコは北を目指す。 ヨーロッパから見たアジアの混沌とした世界観、特に通産省とは名ばかりの、日本のヤクザをベースにしたと思われるネチネチした陰湿な組織形態、得体のしれない敵国としての日本など、そういう風景が見えるようになってくると、理解が深まっていくだろう。 でもまあ、まだ序盤である。ようやく話が始まろうというところなので、後半に期待。 余談。 吾妻ひでおの『不条理日記』に出てくる「ミルクちゃん」の元ネタかと思って読み始めたのだが、2009年の作なのね。不条理日記って1979年頃よね。続きを読む
投稿日:2021.08.25
llamas
世界観が好き。カタストロフィも。アンダースン、エミコ、ギブソン、マイ、ジェイミー、カニヤ。みんなキャラが良いね。
投稿日:2020.09.20
mich
ずーーっと気になってた作品。 印象的な装丁と期待高まる表題(これは春樹の「ねじまき鳥クロニクル」が好きだからでもあるが)で、一体どんな作品なんだろうと思いつつ、以前読んだ著者の短編がそこまでヒットしな…かったので長らく見送っていた作品でした。 古本屋で上下巻が売られていたという不純な動機で読み始めた本書ですが、これがなかなか面白い。 舞台は未来のタイ・バンコク。この時点でワクワクさせられるのですが、本書はもっと刺激的。環境破壊で海面が上昇し、ニューヨークなど世界各地の沿岸都市は水没。石油が枯渇し、伝染病が蔓延し、遺伝子組み換え作物しか栽培されない世界。バンコクでは伝染病の広がりを防ぐ環境省配下の白シャツ隊が権力を振るう一方、海外との貿易により富を稼ぐ通産省が躍進を遂げ、両省は一触即発の状況にあった。そこに日本国製造の「ねじまき少女」エミコが思わぬ形で関与し、タイは未曾有の事態に陥ってしまう… 発展途上国の政権争いが物語のメインストリームですが、結果的に誰も得しないブルーな結末にションボリ。しかし、登場人物のそれぞれが苦境の中でなんとか幸運を掴もうと足掻く様はなんだか今の自分にはないハングリーさを感じられて、ちょっと思うところがありました。 それにしても、おもしろいSF作品の特徴は確たる世界観を構築していることですよね。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、キャンベル記念賞と名だたる賞を総なめにした本書もまたその例に漏れません。続きを読む
投稿日:2019.12.08
丹
上巻読み終わり。この世界がようやく分かり始めて、楽しくなってきた。 本当は嫌いなキャラであるはずのホク・センを応援してしまうのはなぜ?
投稿日:2019.06.11
うろたんけらむの
石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。 遺伝子組換動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物【ンガウ】を手に…する。 ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。 彼とねじまき少女エミコの出会いは、世界の運命を大きく変えて行った。 (あらすじより) このタイプのSF小説にありがちな事として、物語の前半を使って世界観や独自の文化を説明する手法がある。 最初は物語に入り込めず忍耐が必要だが、ここをしっかり読まないとその後の話にもついていけなくなるので、重要なパートでもある。 上巻はまさにその典型的なパターンだったように感じた。 洪水のような情報量。 イメージの奔流に圧倒される。 世界観、文化、人間関係、政治情勢、登場人物達の思惑が描かれ、上巻の最後のほうでようやく物語が動き出した感じだ。 下巻で一気に爆発するんだろうか。続きを読む
投稿日:2018.12.08
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