【感想】増補版 松田聖子論

小倉千加子 / 朝日文庫
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
1
2
1
0
0
  • 欲望の対象としてのアイドルは、時代を読み解く鍵になる

    88年の最初の著作『セックス神話解体新書』が話題のデビュー作となった心理学者でフェミニストの小倉千加子。

    その小倉の二冊目の著作が、当時アイドルの象徴であった松田聖子について論じた本書。昭和最後の10年(バブル絶頂の10年)を、松田聖子という当時の女性像を牽引した女性をキーに読み解いたこの本は、あとがきで著者も言うように“フェミニズムの本なので”あり、“フェミニズムのパロディ本”でもある。

    前半の半分で、“性器の備わった清純”として現れ、自立した女の様相を見せつつも結局は“日本の娘”に帰着した山口百恵を詳らかにし、そこからのカウンターとしての松田聖子を語り始める。キツネ顔の貴族的な山口百恵から、タヌキ顔で健康的な松田聖子へ。

    土着的な日本の男女のあり方から、アイドルというシステムの中で役割を演じ、飛び立った松田聖子。娘を産み、離婚、結婚を繰り返してもなお彼女はアイドルであり続けている。

    アイドルとは“実社会の無意識が投影されるスクリーンである芸能界という特殊な空間の中で、きわめて短い時間にモデルとしての人生を完成させる恍惚と不安を手に入れた女の子のこと”。

    松田聖子の殆どの曲の作詞を手がけた松本隆論としても優れた批評になっている。
    続きを読む

    投稿日:2013.11.29

  • 山口百恵を対称軸に松田聖子を考える

     1970年代の山口百恵をベンチマークにして80年代の松田聖子を論じたジェンダー論の本です。
     日本的、農村的、土俗的な山口百恵に対して、松田聖子は、無国籍、都市的、色彩豊かです。
     百恵は、「秋桜」で、明日嫁ぐ私に縁側で話しかける母を歌いましたが、松田聖子が「ボン・ボヤージュ」で歌うのは、ママに嘘をついてボーイフレンドと旅行に出かける少女です。
     聖子が歌うのは、「醒めた演技者」としての少女であり、そこには「ママのようなつまらない生き方はしない」という聖子の決断があります。
     
     私は、松田聖子と同年代です。松田聖子のデビューから、同時代的に年を重ねてきました。この本が書かれたのは、1995年で今から20年近く前です。百恵は、結婚・引退して、日本的な女房になりましたが、聖子は、50代ですが現役のアイドルを続けています。私は、これからも聖子を聴き続けたいと思います。
    続きを読む

    投稿日:2014.01.03

ブクログレビュー

"powered by"

  • hito-koto

    hito-koto

    小倉千加子 著「増補版 松田聖子論」、2012.9発行です。70年代の象徴・山口百恵と80年代に登場した松田聖子を比較分析した本で、4つの章で構成されています。二人のわがままな主婦、青い果実の熟成(山口百恵の軌跡)、翼の生えたブーツ(松田聖子の正体)、あなたに逢いたくて。私は、山口百恵の章を読みたくて借りました。松田聖子の正体とか二人の歌手の比較は、私の興味の対象外です。「秋桜」「いい日旅立ち」などを最後に、1980年に引退した山口百恵が当時21歳だったとは、驚きです。普通の人は大学在学中ですね。続きを読む

    投稿日:2017.11.05

  • H.Sato

    H.Sato

    誰にしてももう一人の秘められた自分がある。つまり、私とは別のもうひとつの顔をした自分を持っているのだと思う。
    自分を無化することができる、得意な子はあっという間に果実になれる。
    聖子はAKBと違って周囲の大人に大切に育てられてきた。孤独を感じるようなことはなかった。続きを読む

    投稿日:2013.12.11

  • kecokeco

    kecokeco

    前半は山口百恵論である。松田聖子を語るには、まず山口百恵なのである。でも単純なアイドル比較論じゃないところが小倉先生。そこはやっぱりフェミニズムの本なので、注意が必要です。歌詞と本人は別だろという突っ込みはナンセンス。パロディなのだと先生もおっしゃっている。ゲラゲラ笑いながら、「貴女の生き方について」語る言葉を持てと挑まれている。続きを読む

    投稿日:2012.10.19

  • yottari

    yottari

    タイトルは「松田聖子論」ですが、彼女のデビューと入れ替わるように芸能界を去った「山口百恵」を論じることで、「松田聖子」を浮かび上がらせてます。
    短い芸能生活の中で、少女から女へ、そして愛する人のもとへ旅立った「リアル」な足跡を残した山口百恵と、ひたすら虚構の中の「女の子」を歌い続ける松田聖子。
    読み続けるにつれて、「松田聖子」を論じているはずなのに、山口百恵の「(「山口百恵」が作り出される)生々しさ」が引き立ってくるんですよね。
    昭和の終わり、テレビや音楽、芸能界そのものが眩い光を放っていた「思い出話」の一部として楽しむには……面白いと思います。
    もともと1989年に出版されたものに、現在(2012年)の松田聖子と芸能界(AKB48に触れている)について書き加えられているのですが、これは、必要なかったかも。あの頃と今では、「エンタメ」の量や質に違いがありすぎて、比較できるものではないような。
    続きを読む

    投稿日:2012.10.05

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。