【感想】新装版 一絃の琴

宮尾登美子 / 講談社文庫
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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4
3
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  • 骨太の文学に飢えている人にお勧めです

     一絃琴の伝承にまつわる大河小説であります。そして、幕末、明治、大正、昭和という時の流れの中における女性達の葛藤をも描き出します。
     お茶やお花、そしてスポーツさえも「道」という精神修養の場にしてしまうのも日本人の特性なのでしょう。これ以上シンプルな弦楽器はありえない一絃琴も同様なんですね。
     タイトルから音楽が前面に出ている様に思われるかもしれません。たしかに、現在も脈々と受け継がれている楽器にまつわる歴史小説ではありますが、あまり、音楽、とくに和楽に興味がなくとも心配ご無用です。どちらかというと、楽器、楽曲そのものよりも、それに魅せられてしまった人々の生き様が主眼になっています。書籍説明に記載されている蘭子と苗の確執は、物語後半のクライマックスですが、前半部分の苗の半生も色々と考えさせられます。この時代は、今よりもはるかに女性だけで生きていくことは難しかった時代ですものね。また驚愕するのは、何十年も楽器に触れていなくとも、琴の前に座れば体が覚えているというところです。私も幼き頃習っていたエレクトーンを就職してから再開して、それでも30年になりますが、1日でも鍵盤に触れていないと、感覚を忘れてしまいます。テープもしっかりした楽譜もなく、耳だけで修練していた彼女達とは自ずから志が異なるのかもしれません。
     それにしても、蘭子はなぜ自分が後継者に選ばれなかったのか、最後まで真に理解は出来ていなかったんでしょう。それはそれで幸せだったのかなぁ。私としては、それはね、と教えてあげたかった気がします。本来、音楽というものは聞かせるモノではなく、奏でるモノで、それをどこかの誰かが、そっと聞き耳をたてて鑑賞しているというスタイルが一番いい様な気がします。
     それはさておき、この作品は、これまでも舞台やテレビドラマ化された名作であり、直木賞受賞作です。長編大衆文芸作品であることは間違いはありませんが、本格的な文学作品であります。読むにはそれなりの覚悟が必要です。なんといっても使われている漢字が難しい。春に咲き誇るあの花を「躑躅」と書くとは私は知りませんでしたし、繰り返し使われる「沁々」という表現はすっかり覚えてしまいました。じっくり腰を据えて読書する方にオススメいたします。
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    投稿日:2015.05.14

ブクログレビュー

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  • きなこのおはぎ

    きなこのおはぎ

    さすが宮尾登美子さんらしい素晴らしい本。宮尾さんの本を読むと、自分自身も人生にしっかり向き合って生きたいと思えます。

    投稿日:2023.04.15

  • そば

    そば

    作者の作品は
    女性の一代記が多い気がするが
    これは二人の女性が描かれている

    恵まれてばかりではない主人公の成長物語のような
    ワンパターンなものなのだけれど
    いつも夢中になって読みふけってしまう

    くありたい続きを読む

    投稿日:2023.03.03

  • kewpie00

    kewpie00

    宮尾登美子!高知を舞台に、武家出身の女性たちの生き様を鮮やかに描いた作品。慎み深くも、芯があり強い登場人物たち、古典芸能である一絃琴や明治の娘たちの生活と、五感に豊かに訴えてきて、明治を主な舞台にしていながらも昔話ではなく心に迫る。続きを読む

    投稿日:2015.03.24

  • ta_echo

    ta_echo

    圧倒された。少し古さを感じる文体も、これはこれで流麗で、噛みごたえのある文章だった。
    後半に入ると、蘭子にあまり共感できず、雅美と苗の味方ばかりしたくなってしまった。苗の娘稲子のモデルになった、島田寿子さん演奏の漁火がオンラインにあったため聞いてみた。先入観あって聴いたせいもあるかもしれないけれど、冒頭の弾き出しから鳥肌がたった。
    Kindleで読んだことを後悔する。これは紙媒体で手元においておくべきだと思った。
    続きを読む

    投稿日:2015.01.12

  • はっち

    はっち

    一弦琴というものを初めて知りました。
    登場する女性、いずれも意志が強い。明治大正昭和と時代は巡り、今の平成にこういう女性って少ないのかも。

    投稿日:2014.01.24

  • ほけきょううぐ

    ほけきょううぐ

     NHKの篤姫からひかれて読んだ本です。 ちゃんとされた直木賞のいい本です。何度かうまく行かなくて宮尾さんが書き直しされているそうです。
     初さんやお手伝いのおばあさんが印象に残ります。
     パワーを感じる必読の本。
     いいほんです。
    続きを読む

    投稿日:2012.06.20

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