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阿川弘之 / 文春文庫 (1件のレビュー)
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総合評価:
竃猫
1
評価はパス。雑感のみ
【書きかけ】 キスカの無血撤退作戦の短編と、著者がアッツ島を訪問したときの旅行記、それに海軍出身者としてのエッセイ数編です。欲を言えば、キスカだけで長編を書いて欲しかったですね。ちなみに、現在、3提督…物は山本五十六だけだが、残り2者も早く電子化して欲しいですね。特に井上美成は個人的に”縁”があるので期待しています(「ヘッド・イズ・バッド」のラジオ台本を所蔵しているので)。 表題作の中で秀逸な挿話が収められている。警戒任務の徴用船が、報告の打電をすると敵に発見され攻撃されるので、本来業務のカニ漁に精を出し、帰港して怒られそうになったらカニをお土産として差し出したとか(笑)。こういう話は大好きです。カニは偉大だなぁ(余談ですが、徴用船の話は宮崎駿の『雑想ノート』「第11話 最貧前線」も面白くてお勧めです)。 阿川”大尉”のように、戦争体験を話す古老は、海軍出身者が多いような気がする。現代の企業は陸軍的な印象を感じることが多いのは気のせいだろうか。 私が幼少の頃は、元傷痍軍人のホームレスも多く、渋谷駅など子供心に恐くて通れなかったものだ。そんな古老も少なくなってきた。内田百閒のように「敗戦を終戦などとバカを言い」と言ったそうだが、本作や押井守は正しい表現を守っているのは希少。 それにしても、キスカは色々な意味で、光明なのだと思う。 無血で全員撤収したという点のほか、木村提督のように組織から低く評価されている人物の成功、それも淡々とした従前と人となりを変えることなく、また成功しても奢らない、そんな人物の成功であるという点。さらには、木村提督を支える幕僚、気象将校らの緻密で根気のいる準備を成し遂げたという点。幸運にも助けられたのは確かだが、「凡将弱兵の能くするところに非ず」と思う。幸運すらも「神は自ら助くる者を助く」と思えてくる。彼は決して、ヤン・ウェンリーではなかったし、キスカはイゼルローン要塞ではないのだ。 さて、無粋だが、その成功の要因を私は「理性」と理解した。宮崎駿は『泥まみれの虎』で、テイガー戦車兵であったオットー・カリウス少尉を「正気と勇気を持って彼は狂気の時代を生きぬいた」と称した。キスカの木村艦隊も、古き良き海軍のスマートさを失わなかったのではないだろうか?先の大戦で理性を保ち得た事例は、沖縄戦のふじ学徒隊とこのキスカ以外、私は寡聞にして知らない。私はそのような状況でも理性を保ち得るだろうか? 過日、アッツ島で師範学校の同級生が玉砕したと話す老人に出合った、陸軍の小出少尉と聞こえた。 奇しくも、今日のニュースでは武蔵が発見されたとか・・・。併せて、英霊達の冥福を祈る。 続きを読む
投稿日:2015.03.03
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