【感想】恋の華・白蓮事件

永畑道子 / 文春文庫
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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  • 心を映す鏡としての「白蓮事件」

    駆け落ち事件というのは、人の興味をひきつけるもの。
    しかもそれの当事者がすごい。女は天皇の従妹、夫は成金の石炭王、駆け落ち相手は社会主義者。
    彼らの社会的地位・状況だけが一人歩きして物語が勝手につくられてもおかしくないような人々だ。

    本書は、小説ではなく、ドキュメンタリーである。
    もちろん、当事者たちの足跡を追いながら、この事件に
    人々がどのように心を動かされたかをも追っていく。
    これが、面白い。

    夫を捨てて男との愛に生きる女に対してどう思うか。
    男尊女卑の社会ゆえ、彼女の行動を勇気あるものと思う人もいれば、
    いくら何でも勝手ではないかと思う人もいるだろう。

    著者はどの感じ方が正しい、間違っている、という方向には誘導しない。

    まず始めに事件がマスコミで報じられたときの反応を紹介することから始まっている。
    そして、著者が当事者たちの生い立ちについて調べ上げていくところに入っていくのだが、
    著者自身、取材していく中で当初のイメージと違ったところ、思い直したところを
    率直に書いている。

    柳原白蓮の駆け落ちは、非常に特殊な状況のように見えるが、
    この事件に対して何を思うか、というのは、自分の性別や年齢、置かれた状況によって異なるだろう。
    白蓮事件というのはある意味自分の心を映し出す鏡のようなものではないかと思う。

    私も初めてこの事件を知ったときと、その後、もっと大人になってから受けた印象は全然違った。
    本書を読んでいると、著者もそのように白蓮事件を通して変化し、成長する自分を感じているようだ。

    白蓮事件についてのドキュメンタリーとしても誠実で詳細。
    だが、もう一歩踏み込んだ情感があるのは、著者自身が事件に心を動かされ、
    また、事件に心を動かされた他の人々に対しても共感を持って描いているからではないかと思う。
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    投稿日:2014.12.05

ブクログレビュー

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  • raizox

    raizox

    文春文庫、24年ぶりに再版です。朝ドラはこちらが主人公でも良かったのではないかと思うぐらいのドラマたっぷりの生涯で、朝ドラの進行と平行して読了。石炭王伊藤伝右衛門についても詳しく書かれています。ていねいな調査のもとに書かれていて、評伝として好感がもてました。続きを読む

    投稿日:2018.10.09

  • nonbriyasan

    nonbriyasan

    フィクションではなく、白蓮さんの事がもっと知りたいと思い手にした本です。
    新聞記者だった作者はあくまでも資料をもとに、真実だけを伝えていますが
    私には文章が難しく、すぐ眠くなってしまい中々読み進まなかったですσ(^_^;)
    朝の連ドラの影響で手にしたのですが、腹心の友花子さんの事は一行も無かったのが不思議な感じでした。
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    投稿日:2014.11.02

  • cronista

    cronista

     花子とアンで仲間由紀恵が演じている白蓮、朝ドラはフィクションの部分も多いので、実際の”蓮さま”はどんな女性だったのか、知りたくて読んだ。 
     ドラマでは、蓮子と夫の龍一が知らぬところで、龍一の友人が絶縁状を新聞社に売ったことになっているが、実際は両人とも積極的に絡んでいる。そりゃそうだろうと納得。
     一途な恋に生きているような描き方のドラマと違い実際の蓮さまは結構打算的。読んでいる限りでは恋多き女性で、自分の美貌を十分理解して、いろんな男にモーションをかけている。才色兼備だから振り向く男がほとんどだが、はじめて龍一が蓮子にあったとき、龍一が何の反応を示さなかったので、蓮子は興味をもったらしい。


     絶縁状で恥をかかされた伝助は、反論を別の新聞で発表したが、これは記者が代筆したもの(というよりは創作に近い) 様々な理由で、数回で反論はやめてしまうが、ドラマでは触れられていない原因のひとつに蓮子は大正天皇のいとこだったということが大きく関連している(蓮子の父の妹が大正天皇の生母)


     伝助が姦通罪で訴えれば間違いなく蓮子も龍一も有罪判決を受けるはずだったが、皇室関係者を獄に繋ぐわけにはいかない、という判断が働いたようだ。
     
     すげえなぁ、と思ったのは蓮子の仲介で伝助に妾を囲わせたこと。しかも実家で。すでに夫婦の交わりが絶えていたので、ある意味蓮子の身代わりとして妾を”提供”した。蓮子の寝ているすぐ横で伝助と妾が男女の交わりをしていたというから、びっくりだ。
     そういうところを見ると、蓮子の夫婦観が当時の皇室の考え方と同じだったことがわかる(天皇が側室をおかなくなったのは昭和天皇のときから) 


     そんなことをするかと思えば後年、吉原を自由廃業した元遊女を支援したりする。よくわからないけど、蓮子のなかでは筋が通っていたのだろう。
     
     蓮子の兄が伝助から借金をしていたという事実もない。伝助も一文たりとも渡したことはない、と言っている。金目当てで兄が嫁がせたというのは完全なフィクション。もともと奥さんの実家が金持ちなので、伝助に頼むわけがないそうである。


     ドラマのように単純な話ではないようだ。


     蓮子の生い立ちや晩年のことなど、ドラマでは描かれていないことも多く書かれているので、面白かった。
     ちなみに蓮子の姑も結構すごい人で、日本滞在中の孫文の世話を夫とともにしていた時期があるらしい。


     全部ドラマの役名でレポを書いたが、もちろん本書では全部本名で書かれいている。


     
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    投稿日:2014.09.05

  • yasuacky

    yasuacky

    朝ドラ「花子とアン」の重要人物である白蓮についてのノンフィクションです。村岡花子にとって白蓮は腹心の友という扱いであるのに対して、白蓮のストーリーには村岡花子が登場しないという点が不思議な感じでした。

    あまりにも数奇な運命を辿っているので白蓮のドラマの方に興味がありますが、決して朝ドラ向けの内容ではありませんね。

    不倫が罪に問われる大正時代にこれだけの事件を起こした人がいたとは驚きですが、女性が虐げられていたことの証かもしれません。

    白蓮達の行動が戦後の女性解放運動へと結びついたことを考えると、歴史を動かした人物の一人と言えるでしょう。
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    投稿日:2014.07.26

  • shinko1001

    shinko1001

    大正三美人の一人、柳原白蓮(時々見る程度だけれど「花子とアン」で仲間由紀恵が演じている蓮子の”モデル”)について元新聞記者の女性が追った本。白蓮という人は華族の出で、10代のうちに家庭の都合で結婚し離婚。その後女学校に入ったりした後(ここでのちの村岡花子と出会ったそう)、伊藤という福岡の炭鉱王と結婚したのだけど10年後に宮崎という7歳年下の弁護士と駆落ち。その際「女からの絶縁状」を新聞に公開して、これがいわゆる白蓮事件というそうです。(華族を除籍されたり白蓮の兄弟が国会議員を辞職せざるを得なくなったり。)
    「花子とアン」では、蓮子が伊藤に「だったらどうしてあたくしと結婚したんですか」と聞いて伊藤が「お前のその身分と、顔じゃ!」と答えていて、「顔」も入っていたのが印象的で興味をもった。
    絶縁状が朝日に載ることになったのは朝日がスクープしようとしたのを「このタイミングで載るとせっかく段取りした駆け落ちが失敗するからやめてくれ」と宮崎の友人が頼んでそれを朝日がokしたからだとか、毎日の、白蓮と仲良いと思ってた記者は全然知らずに朝日に抜かれて巻き返しのために伊藤の言い分を連載することにしたとか、最初から相談受けていて知っていた熊本日日新聞の記者、その上司は話せば長くなる記者としての気概から記事にはせず記者をやめることになるとか。
    夫側だけ妾が公認みたいな家制度や家同士の結婚って考え方がこういう誰が悪いのかよくわかんない話を生んだんだなと。白蓮さんも言い分通そうと強いけど相当我慢もしていたようだし伊藤さんは伊藤さんで頑張ってたというようなことを生い立ちからいろんなエピソードで浮き彫りにしていました。
    いろんな関係者やその親戚がでてきて且つ幼名だったりしてわかりにくいところも(逆にこういうのを分かりやすく書くのは大変なんだなと思った)。
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    投稿日:2014.07.24

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