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平野啓一郎 / 新潮文庫 (71件のレビュー)
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総合評価:
naotan
1
決壊したものは、二度と元の姿には戻らない?
事件の容疑者として報道された主人公の悪名は、瞬く間にインターネットを駆け巡る。顔を持たない者からの誹謗中傷はもとより、信頼していた友人や家族さえをも信じられなくなった彼に安息な日々は訪れるのか? 終わ…りが近づくにつれて肥大する胸騒ぎと、読後に精神力のすべてを持って行かれるようなラスト。読み応えがあり過ぎて、しばらく放心状態でした。続きを読む
投稿日:2013.09.24
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タカス
負のパワー
物語の「決壊」後は一気に読まされた。自分の軸がしっかりしたときに読まないと、ふらつかせられてしまうパワーを持ってる。
投稿日:2013.09.26
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鈴華書記
一犯罪を取り巻く人々の悲哀がよく書かれている作品。崇を待ち受ける運命はただひたすら暗鬱であるが,それだけに共感をする人も多いのだろう。 ただ各出来事がダイジェスト的にまとめられており,もっとやってく…れれば面白いところなのに……という場面が多かった。オチは無難にまとめられているが,そこで問題提起が終わってしまうのはもったいなく思う。 著者の哲学講義は確かに魅力的ではあるが,華麗な修辞による重厚感の演出かもしれず,神学などの学問から注意深く批判する必要がある。続きを読む
投稿日:2024.04.01
につ
このレビューはネタバレを含みます
感想 非常に内面的に切り込んだ作品。言い回しや文学的な表現が多いため、分からない部分もあるが、この作品を通して色々考えさせられることは間違いない。最後に何かどんでん返しがあるかと思ったが、救いようのないまま終わった。 残された家族の苦しみなど色々考えてしまう。被害者家族も加害者家族も生きていくのが辛い。 サイコパスはどうしても発生してしまうので一概に社会や家族のせいのするのは違うような気がする。 マスコミの過剰な煽りや一部の騒ぎ立てる人に社会が合わせていくと社会が成り立たなくなるし、みんなウンザリする。昨今の社会はそのような気配を多分に感じる。 あらすじ バラバラ事件以降、模倣犯による犯行が相次ぎ、世の中は混乱を極める。そんな中、警察は兄の崇が怪しいとして逮捕勾留するが、自供を引き出せない。 そうこうする間に北崎が、同級生の女の子を殺害したとして、警察に自首し、京都での良介の殺害への関与も仄めかす。崇は勾留期間が過ぎたことで釈放となる。 事件は、お台場での中継中に再び起こる。北崎と共犯と思われる男が生放送中に自爆テロを起こして多大な被害をもたらす。 主犯は篠崎と北崎だったが、兄の崇への疑いは晴れない。父親が鬱で自殺し、母親も精神を壊していた。最後は兄の崇までも精神を病み、電車に飛び込んで自殺する。
投稿日:2024.03.04
Takuma
感想を書くのが難しい、多面的な視点と展開。途中の緊張感は圧巻で、そのあとには緩和があり、そこそこの精神的負担があるが、読み進めないわけにはいかなかった、といった読了直後の感想。
投稿日:2024.01.27
頼む
重いわ。 すごい筆力だけど、なにしろ重い読後感。 「決壊」というワードは、ダムを連想させる。 思えば、崇のダムははじめから満水だった。 それでも、なんとか騙し騙し、運用上の工夫で決壊せずに踏ん張っ…てきた。 そこへ、既に決壊してしまった者の濁流が、周囲のダムの決壊を誘発し、流量を増した急流となって流れ込んできた。 崇のダムはそれでも持ち堪えた。そして、流域の住民を避難させ、安全を確認した後、決壊した。ダムに残っていた水は、もう、無かった。 僕らはダムを決壊させてはならないルールの中で社会性を保っている。そのルールに縛られているからこそ、決壊への、破壊への欲望が頭をかすめることがある。それにどう立ち向かうか。 「国民の知る権利」「説明責任」というマジックワードを無思慮に振りかざして知性の代わりに暴力を手にしたマスメディアの挙動。 何かといえば「抜本的な改革」と言って歴史を無視した思考の浅い政策を繰り返す政府。 およそ大人の振る舞いとは思えない挙動を通じて、子供たちはどのような知的成熟を得られるというのか。 悪魔の語る言葉と、崇たちエリート同士の会話は、どちらも読者にとって意味不明で支離滅裂に映る。京大出身の作者は、頭脳の優劣や精神疾患の有無によって、語られる言葉の是非に差はないと言っているように思う。 では、何を信じれば良いのか。 その迷いを決壊させてはいけない。 安易な答えに飛び付かず、迷い続ける覚悟を持て。 それをかつて、先達は「節度」と呼んだのではないか。続きを読む
投稿日:2023.12.19
にこ
⚫︎受け取ったメッセージ 信じることの難しさ ⚫︎あらすじ(本概要より転載) 戦慄のバラバラ殺人──汚れた言葉とともに全国で発見される沢野良介の四肢に、生きる者たちはあらゆる感情を奪われ立ちすくむ。悲劇はネットとマスコミ経由で人々に拡散し、一転兄の崇を被疑者にする。追い詰められる崇。そして、同時多発テロの爆音が東京を覆うなか、「悪魔」がその姿を現した! 2000年代日本の罪と赦しを問う、平野文学の集大成。芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。 ⚫︎感想(ネタバレ) 一度疑い始めると、とめどなく押し寄せる不信感。 宗の完璧さは高知能は、平均的な平凡を生きるには、解像度が高すぎて難しいのだろう。それゆえに宗は誰も信じられないのだろうか、、、人を信じることの難しさと折り合いの付け方について考える一冊。
投稿日:2023.11.19
Tohru
言葉を重ねると悪魔はどんどん人間臭くなっていったなという印象。結局、最後までどのキャラクターも好きにはなれなかったし、物語の終わり方もモヤッとするものだった。それでも、「あー、こういう正義を振りかざす…奴いるよな」とか「こういう境遇なら、こうなっちゃうかもな」とか、感じることは多かった。特に、「なぜ人を殺してはダメなのか」という討論会の内容は興味深かった。ある程度、共通の価値観(認識)を持たなければ、『なぜ?』に回答を示すことは難しい。悪魔の紡ぐ言葉がどうしても自己満足にしか聞こえないのは、私と悪魔の間の価値観(認識)が乖離しすぎているからだと思う。だから、悪魔が発する言葉は自己を満たすだけの、人間臭いものに聞こえてしまう。続きを読む
投稿日:2023.04.30
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