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阿刀田高 / 講談社文庫 (12件のレビュー)
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総合評価:
future4227
1
映画『トロイ』を上回る面白さです!
映画『トロイ』をイメージして読んだけれど、それ以上の壮大なスケールと面白さだった。 映画で描かれた戦争までの経緯、トロイヤ滅亡後から再建までの冒険談がアイネイアスを主人公として描かれている。 半ば神話…化された話を出来る限り歴史上の史実として再構築した阿刀田さんの筆力も凄い。 あり得ない話や不可能なことは阿刀田解釈によって修正されているので、いわゆるトロイの木馬作戦は多少アレンジされているが、やはりアキレウスVSヘクトルの一騎討ちは見ものだ。 地名や島が沢山出てくるので、地図がないと位置関係がわかりづらいのが難点。続きを読む
投稿日:2016.08.22
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ハイジ
阿刀田氏の「知っていますか」シリーズ以外を読むのは初めて 「トロイア」 なんとなくのあらすじは知っているというトホホな知識量 さらにかなりぼんやりしてきているのでここでしっかりおさらいしようと読むこ…とに 登場人物は多めながらもさすが阿刀田さん! いちいち特徴的な部分をニックネームにしてくださり覚えやすい 例)鷲鼻の〇〇、赤髭の××、背高の△△… またしばらくしてから登場する人物は必ずどこのどなたさんか親切に説明が入る 物語形式ではあるものの、要所要所に現在の場所や歴史的史実がナレーション形式で入ってくる さらにギリシア神話のご説明もあり大変親切だ (阿刀田氏の親切さは相変わらずこの上ない!) 主人公はトロイア国の王家の血をひく若者の、アイネイアス ギリシア神話およびローマ神話に登場する半神の英雄…ということになっている 彼はなかなかの純朴で真っ直ぐな好青年である 出生はアフロディーテの息子とされているが、本書ではおそらく乳母カイエタという父の雇い女… が母親では?という設定 カイエタというのがこれまた魅力的な女性 恐らく異国のそれなりの身分だった女性が 戦争で敗れたため、今の立場になったと思われる人物 若く美しく知識も拾い 何より愛情深くアイネイアスの心の中でいつも生き続け、常に寄り添っているかのようだ さてアイネイアスであるが、トロイア滅亡後、イタリア半島に逃れて後のローマ建国の祖となったといわれる 古代ローマでは敬虔な人物とされ、彼を主人公とした作品に詩人ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』がある このアイネイアスの子孫が、ロムルスとレムスという双子で、この双子がローマの建国者(よくオオカミと双子の人間の像があるアレ) つまりアイネイアスこそ、ローマ建国の礎となった人物である そして本書はトロイア戦争までとトロイア戦争後と分量的にも半々くらいあるため、アイネイアス物語といっても過言ではない(と思っているワタクシ) 前半はトロイア戦争が中心だ ヘクトル、パリスの華々しい兄弟の活躍 有名なアキレスの奮闘と慈悲深い心 トロイアの滅亡… ここでアイネイアスは多くを学ぶ 後半は、戦争で敗れたアイネイアスら一行はトロイアの再建のため、炎上するトロイアを脱出 7年近く流浪の旅を続けたあと、イタリアのテベル川河口に到着して、そこに新しいトロイアを建国 これがローマ帝国の基となるのだ この最後の地でアイネイアスらはトロイアでの戦争で学んだことを存分に生かす… 本書の魅力は多くあるが、武器を持たない女の戦いも見どころのひとつだ 戦争で勝利することを切に願う理由は 負けてしまえば残された女たちは凌辱され奴隷のような身分になるのだ それゆえ、戦にむかう男たちの勝利を切に願う また武器を持たない彼女たちは生きるために知恵を駆使し戦うのである 現代とは違う 決して浅ましいドロドロ劇なわけではない 生き残るための術なのだ 理不尽な死も多く、グッとくるほどせつなくなる場面も 彼らの建国への志と、生きるという懸命な姿に何度も感動する あとトロイア戦争は大変長い戦争、かつ神話も交えたストーリーのため、多く文献が存在する ここでのトロイアは阿刀田氏のトロイアとすべきだろう あとがきによると… ホメロスのイリアス、オデュッセイア ヴェルギリウスのアイネイアス この3つの叙事詩 阿刀田氏はこれらの伝説的な事象が現代人の常識に適うものかどうかの吟味から始まったという その上で阿刀田氏の解釈・考え方に基づき、本書は作られている そしてどのあたりが創作なのかを説明してくださるのだがこれがまたなかなか面白い 木馬の計略も例の派手な策略はないものの地味ながら阿刀田氏のお考えを知った上で読むと実に興味深いのである 最後まで読んで驚いたのだが、巻末に主な登場人物の一覧が4ページもあるではないか! 地図もある〜(涙) 読み終わってから気づいたためなかなかショックであった これがあったらもっと便利だっただろうに 逆に言えばこれがなくても読み切れるところが阿刀田氏の凄さだ 今回人物メモを一切取らず最後まできちんと読めたのだから(でもやっぱり知りたかった〜最後にあるなんて!) 700ページ近い分量ながら、全くその長さを感じさせることのない面白い作品であった またいつかイリアスやオデッセウスも読んでみたいなぁ… いろいろな角度からトロイア戦争を見てみたい続きを読む
投稿日:2021.12.10
ktakeuchi
このあたりのことを全然知らなかったので、名前を知っている人が目新しいことをしていて、大いに驚いた。 ローマのこととかギリシャのこととかエジプトや聖書の世界とか、全然知らないなあ。
投稿日:2018.02.01
courbet
トロイア戦争を生き延び、国の再興を誓ってローマ帝国の礎を築いたアイネイアスの物語です。 見てきたような嘘は講釈師だけではなく小説家もつけるようです。現代の日本人の感覚では理解しにくいところも多々ある叙…事詩が、著者の肉付けによって実際にそうだったのだろうと思えるくらい説得力のある物語に。読んでいる間、登場人物たちの思惑や後の出来事に繋がる行動も含め、「木馬ってそういう使われ方をしたのか」「だからアイネイアスは西を目指したのか」と本気で信じてました。勇将たちの戦いの場面には興奮し、次々と戦死していく勇者たちや名もなき兵士たちを哀しみ、船旅の間の出来事にはアイネイアスが詩人の話を興味深く聞いたのと同じように夢中になり、二つの優しさ=二つの愛について思い悩む。これぞ胸躍る冒険譚。2000年も前の伝承が語り継がれる所以なのでしょう。 夕日に始まり、夕日に終わる。なお西へ向かうアイネイアス。その足跡を辿ってみたい。(まぁ現実には難しいのでテレビのドキュメンタリーなんかで取り上げてくれないかな。)続きを読む
投稿日:2014.03.08
だらだら
このレビューはネタバレを含みます
読みやすい神話だが、作者が主人公を優遇しすぎでなんか。チートは嫌いじゃないけれど。 あと、vsアキレウスのときの味方はそんな行動していない。本当はアキレウスにびびって逃げたんだよ。
投稿日:2013.07.09
市駿
「トロイの木馬」の逸話で有名なギリシア神話に出てくる城塞都市・トロイア(英語名:トロイ)に生まれた一人の少年が父親と共に神託を授かるところから物語は始まります。 神話を舞台にした物語なので、ギリシア神…話で有名なゼウスやアポロン、アフロディーテなど神々の名前が随所に出てきます。 歴史小説、というよりは、古代から伝わる叙事詩環を元に、日本人に合うように作られた時代小説です。著者が自分で「あとがき」で言明してます(^^ゞ 著書の主人公はアイネイアス。 女神アフロディーテの御子と言われ、トロイア戦争を生き延びた数少ない武将の一人で、トロイア脱出後、数年の流浪の旅の末にイタリア半島に流れ着き、後のローマ建国の祖となったと言われる人物です。 本編は、彼・アイネイアスの少年時代から青年期、そしてトロイア戦争、流浪の日々、イタリアでの最後の戦いの後にトロイア再興として国を継ぐまでの、結構長い物語でした。 最初はトロイア戦争のことを描いた作品と思って読んでいたんですが、トロイア戦争は本の半分くらいで決着して、あれ? と思う間に流浪の旅が描かれて、そこで初めてアイネイアスがトロイア再興を果たすまでの物語だと判りました。 歴史は好きですが、神話にまで遡るとどうかな? と思っていたんですが、予想外に楽しめました。 古代ローマの祖、ってところも大きく作用していたかもしれませんが、自分でも驚くほど読むスピードが早かったので、私に合っていた本だと思います。 ギリシアの連合国も出てきますが、都市国家(ポリス)としてのアテネやスパルタは出てきません。 都市国家(ポリス)としてアテネやスパルタはもっと後なんだそうです。 色々な神話を基にした逸話が盛り込まれていたり、逆に「トロイの木馬」の逸話は違う形に変えられたりしてます。 そういうのも含めて楽しめた作品でした。続きを読む
投稿日:2012.06.12
hogefuga
これはすごい小説だと思う。何がすごいかというと、まず量が(笑)。 しかし面白さのあまり一気に読んでしまった。 金のりんごが云々といった神がかり的な部分は最小限に抑えて、現実的な解釈をもってホメロス(だ…っけ?)の原著を再構成している。 最後に著者の阿刀田高氏も述べられているが必ずしも原書に忠実ではない。しかしそのことによって現代人のわれわれにとって理解されやすい読み物となっている。 ギリシャ側から見たトロイア物語は呼んだことがあったが、トロイア側からの物語は始めて読んだ。どちらの陣営も魅力的な人物が描かれており、その言動からどのような外見をしているかが自然と想像された。 好きな登場人物はアイネイアスのお母さんです。 なかなかよくできた人物のようで。彼女がいたからアイネイアスという傑人も生まれたのであろう。 それにしても当時は 美男=強い=家柄 といった感じだったのだろうか。 家柄がよければ小さい頃からの訓練も充実していたろうし 強ければ美人の嫁さんをもらえるので、その家系はどんどん美しくなる。 今でもそうかもしれないが。続きを読む
投稿日:2011.12.12
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