平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像
倉本一宏(著)
/NHK出版新書
作品情報
「驕れる道長」は虚像?
歴史の主役としては光の当たらない平安貴族。
だが、武士が台頭し不安定化する世情にあって、彼らは国のために周到に立ち回り、腐心しながら朝廷を支えていた。
NHK大河ドラマ「光る君へ」の時代考証も務める著者が、知られざる平安貴族の実像を、
藤原道長『御堂関白記』、藤原行成『権記』、藤原実資『小右記』という三つの古記録から複合的に明らかにする。
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商品情報
- シリーズ
- 平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像
- 著者
- 倉本一宏
- 出版社
- NHK出版
- 掲載誌・レーベル
- NHK出版新書
- 書籍発売日
- 2023.10.10
- Reader Store発売日
- 2023.10.18
- ファイルサイズ
- 27.5MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (9件のレビュー)
-
あんまり難しかったら…と迷ったけど、結果読んで良かったです。
とっかかり、平安時代を説明するに、日記から紐解くことで親近感も持てたし、ちゃんと重なっていくのが楽しかったです。
摂関政治と習った藤原…一族の同行や、その職責がどんなかなどそうだったのかと腑に落ちます。
この時代も、一族のために婚姻が利用される、女性はその道具だったことがありありとわかる。
それと、男性は「waoh!」というピンク色の夢を見ると言うが、この時代にもその夢があった(ある意味当然?)それが書き付けてあるというのも驚いた。
ただ、その夢は旅立ってしまう妻との夢で、このときに不謹慎なと自分を責める気持ち、そしてやはり旅立ってしまう妻を想う気持ちが切なかった。
この本の語り口で一気に平安時代が身近になったけど、これは著者倉本一宏さんだからかなと思う。
この面白さ是非体験して欲しい。続きを読む投稿日:2024.02.11
著者は大河ドラマの時代考証担当。
そのためか、今年はこの人の本もたくさん店頭に並んでいる。
本書はまったくの新しいものではなく、かつてカルチャーセンターで行ったレクチャーを文字起こししたもの。
その…意味では、とても親しみやすい。
藤原道長の日常生活 (講談社現代新書 2196)とか、藤原氏―権力中枢の一族 (中公新書)を読んでいるが、これらより、格段に読みやすく、何より興味が持てる。
本書では道長の『御堂関白記』、行成『権記』、実資『小右記』を紹介していく。
例えば、三人の書き方(紙面をどのように書くか、誤字や誤記をどうするかなど)や、写本がどんなふうに伝わったかという話もある。
ともすれば専門的すぎる話題で、実際同じ著者の本でも時に興味が持続できないことがあった。
本書ではそれぞれのキャラクターについての倉本さんの推測も交えて説いていくので、面白い。
また、三人の日記を通して、一条朝の有名な出来事の状況もわかってくる。
一帝二后を成立させるまでのあれこれ。
行成の一条天皇への説得工作は、道長の直接的命令というよりかなりの忖度が働いていたようで、もはや彼の暗躍とでも言いたくなった。
一条の崩御の際には、道長が指図して、穢れに触れさせないため、帝に伺候する側近貴族たちを振り分け、建物から退去させたという話も、なかなか衝撃的だった。
にも拘わらず、なかなか一条の傍を離れようとしない貴族たちが多かった、と聞いて、これまた一条の人柄を想像させられた。
記述としては、やはり御堂関白記を扱うところが分厚い。
道長はわりと記憶に頼って記述し、細部が間違っていたり、抜け落ちたりすることもあるそうだ。
引き出物の記述がかなり多く、これは彼が人心掌握に注力していたことの証でもあるという。
逆に実資は、兄や子どもたち、従兄弟の公任から聞いたり、メモをもらったりして書く、几帳面派。
学究肌とも言われるこの人が、道綱を「能無しのくせに自分を差し置いて出世した」と怒っているのが面白い。
追い越されたら、抜き返すことができないというシステムだったことは、本書の解説で初めて知った。
小ネタ(と言っては失礼かも)でも面白かったことがたくさんある。
御霊を恐れた彼らが護身用の刀を庭で振り回すのは、自分も大鏡などで読んだことがある。
危ない話だな、と思っていたのだが、実際落雷して死んだ人が何人もいると本書にあって、やっぱりか、と思った。
欲を言えばどの本で確認できるか知りたかった。
さて、本書のコンセプトは、「政治に邁進する平安貴族の実像」を知らしめることだとのことだった。
これはまた、大河ドラマでも同じような姿勢が見られ、道長が理想を持った政治家として描かれようとしている(2024年6月末)ことにもつながっていると思う。
けれど、まだどうしても納得がいかない。
ここでいう「政治」というのは、やはり宮中の権力掌握による政権安定までの射程しかないように見える。
たとえば、税制は、外交は、公共的な施策は?
そういった広い意味での政治が見えてこないのは、残念ながらドラマも本書も同じ。
といいながら、現在でも政治は政党と派閥争い。
日本では政治というのは、平安からそういうありかたしかしないものだ、と観念するべきなのかも?続きを読む投稿日:2024.07.07
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