言語はこうして生まれる―「即興する脳」とジェスチャーゲーム―
モーテン・H・クリスチャンセン(著)
,ニック・チェイター(著)
,塩原通緒(著)
/新潮社
作品情報
相手に何かを伝えるため、人間は即興で言葉を生みだす。それは互いにヒントを与えあうジェスチャーゲーム(言葉当て遊び)のようなものだ。ゲームが繰り返されるたびに、言葉は単純化され、様式化され、やがて言語の体系が生まれる。神経科学や認知心理学などの知見と30年におよぶ共同研究から導きだされた最新の言語論。
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商品情報
- 著者
- モーテン・H・クリスチャンセン, ニック・チェイター, 塩原通緒
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 新潮社
- 書籍発売日
- 2022.11.24
- Reader Store発売日
- 2022.11.24
- ファイルサイズ
- 7.7MB
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この作品のレビュー
平均 4.3 (10件のレビュー)
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無数の即興のやりとりと文化的な蓄積の産物
会話はジェスチャーゲームだ。
音声だけでなく、仕草や身振り・手振りなど、両者の創造性の工夫に支えられている。
互いの共同作業のもとに、即興に即興を重ねて共通の理解を構築していく。
「コミュニ…ケーションは、会話の参加者全員の創造性を協調させながら、全員が共有している知識と直観と過去のゲームの記憶を総動員することで成り立つ」
ベースにあるのは共感で、相手の視点でものを見なければならない。
同調するためには、相手の考えを読み合い、理解の程度を知らねばならない。
瓶詰めされたメッセージの伝達ではないし、単なるメッセージの送受信でもない。
意味は、単語と不可分で自明なのではなく、お互いに注視され解釈されて初めて固まる。
メッセージ・イン・ア・ボトルのように、途中で横取りされたとしたら、文字どおり伝わらなくなってしまうものなのだ。
言語の体系的なパターンも、無数の即興のやりとりの産物で、集合的に、まったくの偶然によって出来上がる。
なんで言語を有しているのは人間だけなのか?
何らかの特殊な神経機構を進化させない限り、言語能力なんて持てるはずがない。
きっと進化の過程で人間は、言語に特化した生物学的な適応を得たのだ、遺伝的な言語能力が進化したんだ、と。
これまではこのような考えが定説だった。
例えば、人間の脳が言語に適応して普遍文法をもたらしたとする、チョムスキーの普遍文法説。
世界中で7000もある言語も差異は些末で、元は1つの言語パターン、普遍文法から生じていて、その知識は遺伝子に組み込まれている、と。
それに対して著者は、言語に特化した遺伝子や脳領域はなかったし、言語にルビコン川はない、つまり決定的な変化の一線などなかったと反論する。
あるいは、単一集団によって局所的に生物学的な適応として始まったという、ピンカーらの言語適応説も以下のように否定する。
それならなぜ言語はこれほど多種多様なのか、同じ言語をしゃべっていてもおかしくないはずじゃないか、と。
そもそも言語が変化するペースの方が、生物学的な適応のペースよりずっと速いため、遺伝子レベルでは到底追いつけないのだ。
発想の転換が必要だ。
人間はどうやって言語を獲得したのかではなく、言語はどうやって人間に適応したのかを問うべきだ。
問題の主体を人間から言語に変え、言語それ自体を進化する体系だと捉える。
言ってみれば、人間の進化ではなく、言語がどうやって進化したかに問題を掏り替えている。
つまり、生物学的な進化がなくても、言語の進化はありうるのだと主張する。
言語をジェスチャーゲームと捉えると、最初から完成形でポンと生まれるのではなく、自然発生的に相互絡み合いながら自生し秩序だっていくものなのだ。
言語能力は、必要に迫られて、すでに進化していた既存の脳のメカニズム、学習や記憶や社会的コミュニケーションのための機序に便乗して進化した。
言語も生物と同じもの、宿主である人間と共生的な関係を築いている。
人間と腸内にいる微生物との関係のように、言語とも相利共生関係にあるのだ。
なぜ子供は、複雑で入り組んだ言語パターンを、たった数年でゼロから身につけることができるのか?
しかも、周りの大人たちが口にしているのは、不明瞭で不完全で、総じてまとまりのない話ばかりだというのに。
耳学だけで、乱雑きわまりない日常語から、整然とした文法規則がどうやって頭の中に入っていくのか?
同時に歩き方を覚え、数え方を覚え、箸の使い方まで覚えなくちゃならないのに。
チョムスキーなら、子供は普遍文法を持って生まれてくるから習得が早いのだと説明していたが、すでにその説は否定している。
鍵は言語のパッチワークにある。
その前に、言語のボトルネックを説明せねばならない。
そもそも注意力や記憶力の限界から、言語の澱みない流れは停滞しやすい。
とんでもなく狭いボトルネックに言語を通そうと思ったら、その場その場で処理していかないと忘れてしまう。
数個以上の単語の猛襲や、マシンガントークに対して、なぜ人間はついていけてるのか、そっちの方がよっぽど不思議なのだ。
耳に届いた音も、5つ以上の順位付けとなると、短期記憶の限界を超えてしまう。
それでよく長い文章を把握できるよなと思ってしまうが、子供の言葉の覚え方を見ていくと、なるほどと感心させられる。
ママやパパに意図したメッセージを効果的に伝えるために、子供は手元にある言語資源を総動員する。
正確さなど関係ない。要は伝われば十分。
特定の単語をパッチワークのように組み合わせて構文をつくり、それを徹底的に使いまわす。続きを読む投稿日:2023.06.09
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このレビューはネタバレを含みます
言語をジェスチャーゲーム、つまりその場その場の約束事の積み重ねとして捉える視点は大層面白く、説得力も十分あった。「正しい言葉」を求めてやまなかった人々の話も身につまされる。
レビューの続きを読む
また3.0のころではあるが…、ChatGPTが引き合いに出され、AIが言語の背景をまるで理解していないことが示されるくだりはなるほどを膝を打った。続きを読む投稿日:2023.12.18
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